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第五十八話 新しい訓練

「ああ、新しい朝を迎えられた……」

「お兄ちゃん、何泣いているの?」

「俺も泣きたい時があるんだよ」

「? よくわからないや」


 地獄の採寸の後、俺はよく寝ることが出来たよ。

 もうあれは勘弁です。思い出したくもないや。


 そのまま着替えて朝の訓練に向かう。

 今日から新しい訓練だというが、どんな訓練だろう?


「主の刀の柄を魔法剣の柄に変えるぞ。オリガとガルフが出来るから、刀と魔法剣の柄を出すんだぞ」

「分かった、オリガさん、ガルフさん、宜しくお願いします」

「サトー様、お預かりしますね。あの、目の下のクマが凄いですが、大丈夫ですか?」

「ダイジョウブダイジョウブ」

「明らかに大丈夫ではなさそうですが」


 シルから魔法剣の柄に刀をつけると言われたので、一式をガルフさんに渡したけど、流石に目の下のクマは隠せてなかった。

 ガルフさんもオリガさんから色々聞いているのか、気を使ってくれた。


「サトーさん、その、昨日はお母様がすみませんでした」

「いえいえ、何とか生きております」

「……本当に申し訳ありません」


 リンさんが謝ってくれるけど、こればかりはもうどうしようもない。

 後は平穏な日々が続くことを願う。


「女性に囲まれて、喜んでいたのではないかえ?」

「ですよねー」


 ビアンカ殿下にマリリさん、うるさいですよ。

 他の女性陣も、思わず苦笑しているよ。


「はいはーい、そろそろ練習はじめるよー。サトーのハーレムは置いておくよー」


 おいリーフ、さらりとハーレムにするな!


「サトーの抗議は放置だよー。これからは新しい訓練だよー。前衛陣は魔法障壁の訓練、後衛は魔法の並行稼働の訓練だよー」


 成程、前衛も魔法障壁使えたら防御力アップだ。オリガさんとガルフさんのタンク組は、特に守備力が上がりそうだ。

 それに魔法使い組も並行稼働出来たら、同時に別の魔法が使用可能かもしれない。

 例えば攻撃しながら回復とか。


「今いない従魔には、ホワイトとかタコヤキが色々教えてねー」


 普段頼られることが少ないホワイトは、他の従魔に教えるのが嬉しいのか、小さな手で握りこぶしを作っていた。

 俺から見てもとっても可愛いし、特にエステル殿下はホワイトの仕草にメロメロだ。


「そして前衛陣が作った魔法障壁に、後衛陣が魔法放つのー。耐久力ないと意味ないからねー」


 やっぱりそんなもんだと思ったよ。みんなも予想していて、特に不満の声は無かった。

 特に魔法障壁は、実戦で使えないと意味ないし。


「後は主に特別訓練だぞ。空間断裂剣をマスターするんだぞ」

「シル、何だその必殺技みたいなのは」

「文字通り必殺技だぞ。空間魔法で直接空間を切るから、マスターすれば魔法も何でも切れるんだぞ」


 何それ、とても恐ろしい必殺技になりそう。

 物理や魔法関係なしに切れるのは、とても凄い技だ。


「お兄ちゃんだけ必殺技覚えるのはずるいよ。ミケも必殺技覚えたい!」

「ミケは先ずは格闘術を使えるようになってからだぞ。そのうちに爆炎拳とか教えるのだぞ」

「おお、カッコいい必殺技! ミケ頑張って格闘術覚えるよ!」


 シルよ、ミケに覚えさせるのは程々の必殺技にしなさい。

 ミケもガッツポーズしているから、この先不安だ。


 さて、新しい練習を開始するが、魔法障壁という新しい魔法をおぼえるので、そう簡単にはうまく行かない。


「おー、出来た! 必殺ネコネコバリア!」

「ミケはやっぱり魔力操作が上手ねー。強度も問題ないねー。魔法障壁を丸くしたり、自分を囲んでみたりと、色々練習してねー」

「おー! ミケ、ネコネコバリアを極めるよ」


 他の人は苦戦しているから、きっと俺も大丈夫と信じよう。

 自分を丸く包み込む様に……おや、もしや出来ている?


「お、サトーも出来ているよー。今日は出来ないと思ったから意外だよー」


 リーフさんや、出来たとき位褒めても罰はあたらないよ。

 周りを見渡すと、前衛陣はみんな出来ていた。

 良かった……また一人落第を逃れて。


「じゃあ、魔法を受け止める訓練ねー、集中力と魔力を切らさないようにねー」


 リーフの声に従って、前衛陣は一列に並ぶ。

 十メートル位離れて後衛陣とホワイトとスラタロウとタコヤキが並ぶ。


「じゃあ始めるよー!」


 リーフの声を合図に、魔法が一斉に放たれた。

 うお、すごい衝撃。魔力循環と集中力を切らしたら、一瞬で蜂の巣になる。これも結構エゲツない訓練だぞ。


「はい、終わりー。お疲れ様だよー」

「はあはあ」

「これは結構キツイのう」

「こんな訓練、近衛でもないよー」


 みんなヘロヘロになっているよ。

 なんか、訓練初日思い出すなあ。


「もう終わりなの? ミケつまんなーい」


 ミケさんは相変わらずですね。


「おお、主もいい訓練出来たようだぞ」

「そういえば、シルはどこ行っていたのだ?」

「タラとかフランソワのところだぞ。特に怪しい動きはなかったのだぞ」


 シルさんありがとうございます。

 採寸の件もあって、すっかり記憶から消え去っていた。


「因みに明日の訓練から、前衛陣に馬も参加するぞ」

「わーい、お馬さんと頑張るよ!」


 何故に馬も参加?

 しかも馬が前衛陣って、なんでやねん。

 もう決定済みっぽいので、何も言いません。


 朝食を取って、冒険者ギルドで手続きを終えて、ブルーノ侯爵領に向かう街道に。

 わお、今日も森からいっぱい視線を感じる。

 今日はリンさん達が森の中に入って、俺達が馬車の周囲につく予定だ。

 因みにリーフはタラちゃんとかの対応でお屋敷でお留守番。


「主も森の中に入って戦闘だぞ」

「え? シル何で?」

「魔法剣の練習も兼ねてだぞ」


 嗚呼、今日は馬車側でゆっくり出来ると思ったのに……

 因みにマルクさんが馬車側につく模様。


「主よ、常に刀に一定の魔力を流して戦うんだぞ」

「それ、かなり難しくない?」

「出来れば無意識で出来るまでやるんだぞ」


 魔法剣なんて、まだ練習して日が浅いのにうまく出来るかな?

 実戦で試してみよう。


「リンさん、準備は良いですか?」

「はい、いつでも大丈夫です」

「それじゃ行きますか。ルキアさん、ビアンカ殿下、エステル殿下、後はお願いします」

「サトー様も怪我しないで下さいね」


 リンさんと一緒に森の中に入る。

 早速オオカミの群れがお出迎えだ。


「早速来ましたね、これから暫く忙しくなりますよ」

「うーん、あのオオカミはブルーノ侯爵領の森にいるはず。やはり生態系がおかしい」

「マリリさん、本当ですの?」

「間違いない、向こうに見える熊もそう。ブルーノ侯爵領からこちらに流れてきている可能性が高いかも」


 成程、マリリさんの予測はブルーノ侯爵領の魔物がここまで流れてきて来ていると。

 じゃあ、この森にいた魔物や動物はどこに行ったのか?


「サトーさん、取り敢えず目の前の魔物に集中しましょう」

「そうだね。考えるのは後でも出来るし」


 俺たちは向かってくるオオカミと交錯した。


 一方、街道にいる方も戦闘が始まっていた。


「ふう。昨日も思ったのだが、数が多いのう」

「だね、ビアンカちゃん。さっきも熊さんの集団だったし」

「あ、今度はオオカミの群れがくるよ」

「昨日もいましたが、この辺のオオカミではないですね」

「ルキアちゃんが言うからには間違いないんでしょうね」

「恐らくブルーノ侯爵領かランドルフ伯爵領から流れているかと」

「今は目の前の魔物を倒すのが先決じゃ」


 街道に出てくる魔物を倒しながら、サトー達と同じ考えに至っていた。


 討伐を始めてから二時間ほど、一旦馬車の方に合流して昼食にする。

 料理長のスラタロウが、昨日購入した味噌を使って何かを作るらしい。

 さっきからとても良い匂いがしてくる。

 

「うむ、サトーの所も同じ考えじゃったか」

「はい、元の魔物がどこに行ったか分かりませんでした」

「その辺も含めて調査継続じゃな」


 ビアンカ殿下と意見をすり合わせて、魔物討伐に生態系の調査を平行で行うことに。

 でも、何で元いた魔物に遭遇しないのだろうか。


「お兄ちゃん、スラタロウが料理出来たって」

「今行くよ」


 先ずは腹ごしらえだ。

 今日の料理は、オーク肉を薄切りにして味噌をぬり、それを焼いたのをパンで挟んだもの。

 野菜も入っていて、栄養価は抜群だ。


「これ美味しい!」

「いやー、本当にスラタロウは凄いね。近衛師団にも欲しい逸材だよ」

「お兄様も同じ事を言っておったぞ。魔法もそうだが、この料理が素晴らしい」


 今日もスラタロウの料理は絶品だった。

 こういう手軽な料理も美味しいとは恐れ入ったよ。 


 カサカサカサ。


「あれ、あそこの繁みが揺れてますね。臭いにつられた魔物かな?」

「主よ、悪い臭いはしないぞ」

「何だろう、魔物じゃない? いずれにせよ、みんな警戒してくれ」


 カサカサカサ。

 茂みから現れたのは、小さなオオカミだった。

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