表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闇属性の方向性  作者: 稲垣コウ
2人でダンジョンチャレンジ!
51/52

51.絶対美味いって前世の僕が言っている

「タコ食べる地域もあるって聞くけど」

「タコって……ああ、クラーケンの小さいやつか」


 ネニトスはこの街で育っているから、海にはあまり詳しくないようだ。

 ルビウスは海が遠いから海産物はほとんど流通していない。タコよりもクラーケンの方が有名なくらいだ。というか、もしかしてタコもモンスターの括りなのだろうか。


「でも、ブレインイーターは人喰いだぞ」


 ネニトスはまだ信じられないような顔をしている。田舎ではカエルやヘビを普通に食べていたから、それほどのゲテモノ食いとも思わないのだが。

 そう言えば、ルビウスに来てから食用でカエルやヘビは見たことないな。もしかして、都会の人はカエルやヘビも食べないのか?


「クローラビットだって人喰いだけど、肉美味いだろ」

「まあ、そうだけど……これを? 食べるのか?」


 僕だって、陸に生息しているタコのようなモンスターが食べられるのかは知らないけど、ブレインイーターに毒はないそうだし、食べることはできるはずだ。


 いやできる。絶対美味いって前世の僕が言っている。


 まあ、今はどうせキッチンもない寮暮らしだから調理はできない。いずれ一人暮らしを始めたら調理してみよう。


 とりあえず、二階層で初めての狩り成功だ。片手がちょっと生臭くなっただけで怪我もなく、幸先の良いスタートじゃないか。

 またネニトスが前で先導し、僕は後ろで上を警戒する。


「ヨナハンはクラーケン食べたことあるのか?」

 ネニトスはまだブレインイーターを食べるのが引っかかっているらしい。僕は別にゲテモノ食いじゃない。食べたいのはモンスターではなく、タコだ。


「いいや、僕の故郷は内陸だから海のものはなかった、この街に来て商人とかの話しを聞いたんだ」

 ということにしておく。実は今世でまだタコはお目にかかったことはないけど、中心街にある乾物屋にイカの干物らしきものがあったから、きっとタコもあるはずだ。


「でもタコって海の蜘蛛だろ、蜘蛛は食べないだろ」

「海の蜘蛛?」


 確かに、僕も蜘蛛は食べたことがない。虫の幼虫なら食べてたけどね。って、あれ? 今世の僕、意外とゲテモノ食いかもしれない。


 田舎ではみんな食べてたから特に抵抗はなかったけど、前世の僕だったら、餓死寸前でも虫食べるのは躊躇したと思う。百歩譲ってカエルやヘビは食べられたかもしれないけど、それも好んで食べたいとは思わなかった。


 これはちょっと、ネニトスに引かれるのも仕方ないかもしれない。でも今はそれよりも、海の蜘蛛とは何ぞや?


「タコも足が八本ある、足が八本あるのは蜘蛛だろう」

 そういう考え方なのか。初めて聞いた。


 確かに生き物を足の数で分類することはある。エルフは森の民と呼ばれるから、森にいる生き物を基準にして種類を考える方が馴染みがあるのかもしれない。


「じゃあブレインイーターも蜘蛛のモンスター?」

「そうだろう? このダンジョンには蜘蛛型モンスターも出る、深層にはカウスパイダーの住処があるそうだ」


 カウスパイダーは頭は牛で身体は蜘蛛のモンスターだ。大きさも牛ぐらい大きい。前世の日本なら牛鬼と呼ばれているだろう。


「じゃあ、クラーケンも蜘蛛のモンスターなのか?」

「クラーケンはクラーケンだろう」


 クラーケンはクラーケンなのか。これはエルフ的な分類ではなく、ネニトスの感覚で言ってるな。

 でも、当たり前のように言っているから、海に詳しくないやつ全般が考えているテキトウな認識なのかもしれない。


「だったら、ブレインイーターは蜘蛛よりもクラーケンに似てる、クラーケンは食べるから、ブレインイーターも食べられるはずだ」


 完璧な理論に僕は胸を張った。本当に完璧かどうかは、ブレインイーターを食べてみないことにはわからない。


「そ、そうかなぁ……」

 僕の完璧な理論に、ネニトスは首を傾げつつ論破された。なんとなくわかってきたけど、ネニトスはあんまり頭良くなさそうだ。僕も人のこと言える頭脳じゃないけど。


 アホな会話をしていると思うけど、こうやってお喋りしながら探索できるのも、仲間がいるからこそだ。一人でダンジョンに潜っていると独り言が多くなっていけない。


「あ、なんか光ってる」

 ネニトスがまた前方に何か見つけた。


 僕も覗いてみたら、少し先の壁面がぼんやり光っている。ピンクや緑色のネオンみたいな光り方だ。

 動いている様子はないから、僕らはそれほど警戒せずに近付いた。


「ヒカリダケか、珍しい色でもないな」

「へえ、これが」

 僕はまたもや初めて見る。その名の通り光るキノコだ。


 光には様々な色があって、ピンクや緑は食べることもできる。珍しい色なら毒があったり薬効があったりもする。このまま観賞用としても売れるけど、ピンクや緑は珍しくないから大した値段にはならない。


「とりあえず採取しとくか」

 ネニトスは根元からヒカリダケをもぎ取る。もぎってもヒカリダケの光は消えない。三日は光り続けるそうだ。


「ヒカリダケの周りには何もないのか?」

 僕は近くの壁や地面を見回すけど、何も見つからない。


 同じようにダンジョン内で光るものでも、ヒカリソウは希少鉱物に根を張るし、ヒカリゴケは宝石の近くに生えると聞いたことがある。


「ないな、ヒカリダケはどこにでも生える、七色に光るやつの傍では、必ずアイテムが現れるとは聞いたことあるけど」

 ネニトスも遭遇したことはないという。僕は七色に光ると聞くと、前世の配管工が大活躍するゲームを連想してしまう。


 採集したヒカリダケはネニトスの魔法バックに入れる。僕のリュックでは光が漏れるから、目の良いモンスターに居場所を知らせてしまう危険性がある。


 それからまた先に進もうとした時、僕は頭上を見て悲鳴を上げそうになった。

ダンジョン内では光る生き物は結構いますが、群生地でもない限り真っ暗なのでライトは必需品です。


少しでも面白いと思ったら是非ブックマークお願いします。

リアクションや★付けていただけると嬉しいです。

感想やレビューも待ってます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ