表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/93

転移する理由が見つからない 082

新芽の救出によって窮地を脱した2人。

新芽が繋げた世界は、いったいどのような場所でしょう?


転移する理由が見つからない 082





放物線を描いて落下した先は、幸いなことに水があった。

それが結構な深さがあったことと、一度上に放られたこと。

それらは幸いではあったが、何の気構えも出来ていなかったために呼吸しようとした肺に水が流れ込んだ。

一瞬にして溺れ、パニックを起こした俺の腕からどうやってすり抜けたのか。

立花が襟首をつかんで水面へと引き上げなければ、そのまま死んでいた。

そのまま立花は淵まで泳ぎ、先に水から上がる。


恩を返す筈が、更に恩を負ってしまった。


悔しい思いをしながら立花を見上げると、当たり前の事だが水に濡れていた。

艶やかな黒髪は首筋に張り付いて、滴る水が流れ落ちていく。

落ちる先に目をやると、身体の凹凸がはっきりと分かるほど、張り付いた服に包まれた肢体が見える。

しばらく魅入られていたら、目突きが飛んで来た。


不思議なことに、身体の怪我はすっかり治っていた。

それに気付いたのは目突きのダメージが抜けてからだったが。

俺が痛みでのたうち回ったり溺れかけたりとしていた間に、立花は着ていたサマーセーターを絞り、ある程度は身体の水気も拭い去ってしまったらしい。

先程よりはボディラインが見えにくくなっていたが、それでもつややかさがある。

あまり見ていると睨まれた。

また目突きをされるのは痛いので遠慮しよう。


立花曰く、あの新芽は再び穴を開けてどこかに飛んで行ったらしい。

俺たちの世界へと繋がる穴も、既に修復されたように消えてしまったようだ。


周囲を見ると、枯れ果てて朽ちかけた林。

その中にある池に俺たちは放り出されたらしい。

…助けて貰ったのは事実だが、もう少し助け方が無かったのかと新芽に問い質したくなる。

服を絞り身体を拭う。

湿っぽいどころではない状態だが、少しはマシか。

枯れ葉に覆われた地面は草が生えている様子も無く、周囲にも生き物の気配が無い。

均等に植えられて、かつては丁寧に整えられていたであろう木々。

形が歪んで淵が崩れている池には、半ばで落ちた橋の跡が残っている。

遠くに目を向けると、古びた城のような石造りの建物が見える。


どうやら、古城とでもいうような場所にいるらしい。

吸血鬼とか殺人鬼でも出てきそうな雰囲気だ。

自分の視界が、現実のものでは無くトレード場所と同じものへと戻っている事に気づく。


観察者の色をした【明かり】が二つ。

古城の中、かなり近い位置にいるようだ。


「行くか」


頷いた立花と共に、薄暗い空の下、足を向ける。

…立花、もうガン見しないから視界から逃げないでくれ。




立花が大慈の視界から逃げているのは、恥ずかしいのと、反射的に目突きをして申し訳ないのと、またやらないように自重しているためです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ