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エピローグ


「ヴァル……久しぶりだな」


「はい、お久しぶりです……父上」


 タリバーディンとの戦いで傷ついた身体をララに癒してもらっていると、父上がこちらへやってきた。


 立ち上がり迎えようとすると、スッと手でそのままでいいと告げられる。

 治療をされながら見た父上の姿は、以前と比べてなんだか少し老けたように見えた。


「聞こえてきたんだが……お前は雷帝、なのか?」


「はい、レベルを上げたら雷帝のスキルに目覚めました」


「そう、か…………」


 気落ちした様子で城壁を見上げる父上は、何も言わずジッとその場に留まっていた。

 どんな言葉をかけていいものか、一瞬言葉に迷う。


 フレイム家における序列は、魔眼の力の多寡によって決められる。

 魔法よりはるかに威力や射程に優れる魔眼の力こそが、フレイム家をフレイム家たらしめてきたからだ。


 過去のフレイム伯爵家に、俺のように劣等眼を宿しながら戦闘の才を発揮するような人物はいなかった。


 以前の傍若無人な振る舞いや魔法の才を考えれば、廃嫡されたあの地点から現状の俺に至る道筋を推測するのは至難の技だっただろう。


「父上が気に病むことはありませんよ。全ては身から出た錆です」


「ヴァル……」


「兄上ええええええええっっ!!」


 父上が言葉に詰まっていると、城壁から下りてきたルクスがものすごい勢いでこちらまで駆けてくる。

 その目は以前と何一つ変わらず真っ直ぐで、キラキラと輝いていた。


「兄上は雷帝だったのですね!?」


「あ、ああ……」


「でしたらやっぱり兄上が、フレイム伯爵領を継ぐべきです! 先ほどの戦いを見て確信しました。やはり僕よりも兄上の方が、伯爵の座に相応しいと思います!」


「たしかに、雷帝の名が与える影響は大きい……どうだ、ヴァル。お前さえ良ければ廃嫡を取り消しても構わないが……」


「――待ってください、父上」


 妙な話の流れになりそうだったので、急ぎ会話の流れを切った。

 たしかに廃嫡された時に受けたショックはとてつもなく大きかった。

 その衝撃のあまり前世の記憶を取り戻してしまうほどに。


 領都を去る時に、何も思わなかったと言えば嘘になる。

 けれど今は――嫡男で居ることに、驚くほどに執着していない自分がいた。


「俺は一度廃嫡された人間です。そんな人間が再度嫡男になる未来はないし、そんなことをしたフレイム家にも未来はないです」


「そう、か……」


「ですが俺も、フレイム家の人間です。これからは遠慮なく、頼らせてもらうとしますよ」


 そう、今の俺の居場所はここ領都ではなく、北のダート大森林にある。

 そこには俺を待ってくれている人達がいる、俺のことを領主と慕ってくれている者達がいる。


 だから俺は俺の力を、彼らのために使うと、そう決めたのだ。


「ふっ、そうか。お前も……立派な王国貴族になったのだな」


「ええ、というわけでまずは海から作れるようになった塩についてなのですが……」


「し、塩だと!?」


「兄上は相変わらずですね……」






♢♢♢







「おめでとう」


「おめでとうございます、兄上!」


 二人が笑顔でこちらに近づいてくるに対応をする。

 そして気付かれぬように、そっと魔眼を使った。

 ここを去る前は怖くて使えなかった忠義の魔眼も、今なら躊躇なく使うことができる。




マガツ 忠誠度 85


ルクス 忠誠度 95




 ああ、やっぱり俺は――果報者だ。

 二人の数値を見れば、それがすぐにわかる。


「では俺達は……戻ります」


「ああ、次はすぐ、こちらに来るのだろう?」


「――ええ、やらなければいけないことがまだまだ沢山ありますからね!」


 教会の外を出れば、そこには俺達についてきてくれていた獣人やアマゾネス達の姿が見える。

 皆に祝福されてから、軽く祝宴をし、そのまま夜が暮れないうちに俺達はこの領都を後にする。


 やらなければならないことはまだまだ多い。

 領地運営はまだまだ手探りなことも多いし、それに……。


(タリバーディンが侵攻を三年も前倒しにしたことで、既に魔王軍の幹部の一人がやられてしまった。これでこの世界の歴史は『スペル・シンフォニア』のそれから大きく変わるのは間違いない)


 防衛に成功したおかげで、今後のことを考えてゲーム知識を使って色々と動くだけの余裕が出てきた。


 今のうちに才能がある人間達に唾を付けたり、下手に主要キャラがやられたりしてしまわないように、今以上にしっかりと周囲に気をつける必要がある。


「兄上――どうか、ご壮健で!」


「ああ、ルクスも達者でな!」


 やらなければいけないことは多く、守らなければならないものは前よりもかえって増えた。


 だが不思議とそれが嫌ではない自分がいる。


 俺にはこの新しく増えた縁は、しがらみではなく絆だ。

 何かを守るということは重荷を背負うことばかりではない。大切な人がいるという実感や守らなければいけない人の存在は、本来以上の力を発揮させてくれる何よりの活力になってくれる。


「よし……行くか!」


「「「「――はいっ!!」」」」


 俺の言葉に、ララ達が元気に答えを返してくれる。

 こうして俺達は無事結婚式を終え、ダート大森林へと戻ってゆく。

 俺達の領地運営は、まだまだ始まったばかり――。

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