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領都フレイベル



 フレイム伯爵領、領都フレイベル。

 風光明媚な地方都市は、その美しい街並みに似合わぬほどの喧噪に支配されていた。


「まだだ、まだこらえろ……今だ、斉射ッ!」


 指揮官の号令によって、胸壁から顔を出していた魔導師達が一斉に魔法を発動させる。


 炎は渦となって敵を炙り、水の槍がその胸を刺し貫き、暴風は地面ごと魔物を巻き上げて地面へと叩きつける。

 目の前に居る魔物達の勢いは大きく減じた。

 だが……


「ちいっ、倒しても倒しても湧いて出てきやがる!」


「第一部隊は下がれ、第二部隊発動用意!」


 既に何発も魔法を放ち、息を荒げている青年は後ろ足で下がりながら、忌々しげに眼下の光景を見下ろした。

 そこに広がっているのは、夥しいほどの数の魔物達。


 人型の魔物はゴブリンやオーガだけではなく見上げるほどの巨体を持つサイクロプスまで存在している。


 冒険者ギルドにおいてはCランク相当とされている、レベル20代後半にならなければ倒せないような魔物である。

 そしてその横で地を這っているのは、火を噴くトカゲ型であるファイアリザード。


 それだけではなく蜘蛛型や蛇型の魔物まで、その種類は実に幅広い。


 見上げれば見上げれば空を飛んでいる鳥型や蝙蝠型まで存在しており、その編成はてんでバラバラで、まったくといっていいほどに統一性がなかった。

 ただ一つ共通して言えるのは、その魔物達が皆一様に真っ黒に変色しているということ。


「第二部隊、構え――撃てええっ!」


 再び放たれる魔法が、城壁に取り付こうとする魔物達に着弾する。

 魔物達の多くはダメージを受けその場に頽れるが、後続の魔物達はそれらを踏み潰しながらも前に進み続ける。


 雨あられと降り注ぐ魔法の中をくぐり抜け、城壁辿り着いた魔物達がその鋭利な爪を城壁へと突き立てる。


「投擲隊、斉射!」


 魔法部隊の横でその手に石や煉瓦を持った兵士達が、城壁に取りつき上ろうとする魔物達へと手に持った重量物を投げつける。


 元々城壁まで辿り着いた個体が少なかったこともあり、その全てを地面に叩きつけ絶命させることに成功する。


 わずかに勢いが弱まった魔物達を、再び魔法と投擲で蹴散らしていく。


 城壁に上がられてしまいヒヤヒヤする場面も何度かあったが、騎士達が素早く動くことで致命的な事態をは回避することができていた。


 だがそれでも全ての魔物を殺し尽くすことは叶わない。

 特に厄介なのは、やはり直接的に攻撃を行うことができない飛行可能な魔物達であった。


「GURAAAAAAA!!」


「まずい、ワイバーンだ! バリスタを用意しろ!」


 魔法部隊の魔法の投射と弓兵隊の活躍によって、ある程度までのランクの魔物は仕留めることができる。


 だが高ランクの魔物ともなると距離が離れた状態での遠距離攻撃だけで完全に仕留めきることができない。

 三体の黒色のワイバーンが、徐々に高度を落としながら領都へと迫る。


 本来Bランクであり、黒色になることで強化をされていることを加味すればその中でも同ランク帯の中でも上位に位置する強さを持っているだろう。


 そのうち二体までは仕留めることに成功するが、最後の一体はその身体に傷をつけながらも高度を落としながら城壁へと急降下してくる。


 ワイバーンは口の端からちろちろと火の粉を漏らしながら滑空し、そのまま城壁へ激突せんばかりの勢いで迫っていた。


 距離を近づけられそのまま炎を吹きかけられてしまえば、城壁の上に詰めている兵士や魔導師達はひとたまりもないだろう。


「ちいっ、このままでは! 総員……退」


 先ほどまで戦闘を指揮していた偉丈夫、この防衛戦の指揮官であるケルト子爵が舌打ちを打つ。

 けれど彼が危惧していたような城壁の崩落は起こらなかった。


「――させない」


 ケルト子爵の隣に立つのは、彼からすると二回りほど年の離れた少年だ。

 だが少年を見た彼はそのままごくりと唾を呑みこむ。


 ――ルクス・フォン・フレイム。

 ウェスペリア王国民の特徴である黒の髪と目の覚めるようなスカイブルーの瞳をした彼は、フレイム伯爵家の嫡男であり……。


「魔眼、解放」


 そしてフレイム伯爵家の魔眼の力を受け継いだ、正当後継者である。

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