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トロルキング


 トロルの移動速度は、同レベル帯の魔物と比べればかなり遅い方だ。

 そのため俺がカーミラに引き連れられ迎撃用の拠点にやってきた時には、未だトロル達の姿は見えていなかった。


「だとするとやはり……」


「ああ、妾は巣穴の奥にトロルの上位個体……トロルキングがいると考えておる」


 道中話を聞いたところ、どうやら俺の予想は当たっていたらしい。

 トロルは知能が低く、そのために身体能力や再生能力の高さに比べると討伐の難易度が低くなっている。


 戦闘用スキルや魔法を複数持っている人間が30台後半までレベルを上げれば、単独で討伐が可能とされているな。


 だがそれにはある例外が生じる。

 それがトロルキングと呼ばれる、トロルの上位個体によって率いられている場合だ。

 王に率いられたトロルは、その凶悪さが一段階も二段階も上がることになる。


「上位個体というのは、シルバーウルフにおけるゴールデンウルフのようなものと考えていいのでしょうか?」


「ああ、概ねその認識で大丈夫だ」


 『スペル・シンフォニア』において、魔物は進化することはない。


 ゴブリンはどれだけレベルを上げてもホブゴブリンやオーガになることはないし、シルバーウルフはどれだけ強くなっても毛並みが金に変わってゴールデンウルフになったりすることはない。


 この世界における上位個体とは、通常個体を率いることができる魔物のことを指す。


 つまり今回トロルの群れを率いていると思われるトロルキングは、ゴールデンウルフがシルバーウルフを従えることができるように、トロル達に言うことを聞かせることができるということだ。


「そしてトロルキングには統率系のスキルが付く。そのせいで配下のトロル達の統制が取れるようになり、討伐難易度が一気に跳ね上がるんだ」


「ほう、そうなのかぇ?」


 ぴくりと眉を動かしたカーミラの言葉に、こくりと頷いておく。

 今から戦いという段階で、情報を出し惜しみする必要もない。


「だから少数精鋭でトロルキングを倒すのが一番手っ取り早い。統率の取れていないただのトロルであれば、アマゾネスの戦士達でも問題なく処理できるだろ?」


「ふむ、それが事実ならたしかにその通りじゃな」


「討伐は俺とララとベルトでやろう。無駄に戦士達を犠牲を出す必要もない」


「……ずいぶんと自信があるんじゃな、妾の同行も必要ないと?」


「カーミラは皆を取り纏めて防衛戦に徹していてくれ。貴重な美人達を、こんなつまらないことで失いたくないからな」


 既に秘境に追い込まれているという事情もあり、魔人の数はかなり少ない。

 アマゾネスは単体でも十分に強力な戦力になる。

 今後俺が吸収するのなら、戦力は万全な状態で手に入れたい。


「むっ……邪な気配を感じます!」


 となぜか機嫌の悪いララをなだめながら、カーミラの返答を待つ。


「おや、妾達のことを、いやらしい目で見ているのかぇ?」


 こちらをからかうような様子のカーミラ。

 明らかにララが怒るのをわかってやっている。


 まともに取り合ってはやり込められてしまいそうなので、こちらも軽口で帰しておくことにした。


「美人がいなくなるのは世界の損失だろう。たとえアマゾネスと言えど女性は女性。この集落にいるアマゾネスは俺がまとめて守ってやる。もちろんお前もだ、カーミラ」


「……そんなことを言われたのは、ずいぶんと久しぶりじゃ」


 少しだけ声を弾ませながらそう告げるカーミラ。

 彼女はこちらに近づくと、ぐりぐりと頭を撫でてきた。


「童に心配されずとも、妾が手ずから鍛え上げたアマゾネスは、少し賢くなったトロル程度にやられるほどやわではないわ」


 俺より背の高いカーミラは、その手のひらも大きかった。


 アイアンクローで頭を掴めるほどに大きな手のひらは、鍛錬によってガチガチに硬くなっている。

 見上げて映るカーミラの表情は、戦いに向かうというのにいやに楽しそうだった。


「妾もヴァル達と共に行くことにしようかの。トロルキングと戦うのなら、前衛が多いに越したことはなかろうて。とりあえずやってくる群れを相手しがてら、連携の確認と行こうかの」


「ああ、精々遅れないようについてくるといい」


「さて、その言葉が自信過剰か否か……トロル達が来るのが、楽しみじゃのう」




◇◇◇




「あ、カーミラ様、どうもです!」


「あれ、どうしてここに男の子が……もしかして、私達のための支援物資ですか!?」


「後ろの子もなかなかどうして悪くない……ねぇそこのあなた、女の子同士とかって興味ない?」


「私、実は獣も前から興味あったのよね……」


「ええいっ、わちゃわちゃ寄って来るでないわ! こやつらは妾の客人じゃ、手出し厳禁じゃからな!」


「あ、あはは……」


 迎撃拠点にやってきた俺達は、アマゾネス達から大歓迎を受けていた。

 戦いの前で滾っているからか、カーミラから聞いていたのにも増して話題がピンク色だ。

 しかし、まさかベルトまでそういう目で見られるとは……前世の日本のHENTAIっぷりを思い出して、なんだかちょっと懐かしくなってきてしまう自分が嫌だ。


「色ボケしとる場合じゃないぞ、準備は既に終えておるのか?」


「もちろんです! 木々を切り倒して通路を確保した上で大量に罠を仕掛けております。即席柵の準備の方も終えております」


「ふむ、まあそれならええか」


 ええんかいと内心で突っ込みつつ、彼女達が急ごしらえで仕上げたという迎撃拠点の様子を見る。

 既にアマゾネス達は戦うための準備を終えているようだ。

 ある程度離れたところには糸を使った罠などが見え、持ち運びが可能な木杭が何本か打ち込んであるのが見える。


 そしてアマゾネス達の前にはじゃらじゃらとした重りのついている木製の柵が見えている。

 なるほど、重りを後ろに引っ張れば即座にある程度の上背の柵が立ち上がるようになってるのか。


 遠距離攻撃の手段は投げ槍のようで、魔物の骨を使って作ったとおぼしき穂先が筒の先から大量に覗いている。


 ただやはりメインは近接戦闘らしく、ガチガチに防御施設を作るというより足場をしっかりと均しておくことに比重が寄っているように思う。


 投げ槍で敵を徹底的に遠距離で叩くというより、ある程度近づくまでに数を削っておこうといった運用をするのだろう。


「お、来おったぞ。おぬしらも、まずは妾達の戦いぶりを見ておるとよい。――総員、迎撃準備!」


「「「はいっ!!」」」

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