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上級


 ニーナ達を森の中へ放置し、急ぎ恵みの里へと駆ける。

 ララが対処できないと考えると、相手は間違いなくかなりの強敵だ。

 事前にしておける準備は全てやっておいた。


 そして魔法発動の準備までしっかりと終えて俺が現場にやってきた時、そこには地面に倒れるナナと彼女へ障壁を出しているララの姿があった。

 どうやら本当にギリギリのタイミングだったらしい。


 相手はゴールデンウルフ。

 少なくともダート大森林に出現する魔物じゃない。

 余所からやってきたのは間違いなさそうだ。


「サンダーグラウス」


 上級雷魔法、サンダーグラウス。

 雷によって形作られた雷鳥を放つ魔法だ。

 速度と威力に優れ、生物を模倣する都合上方向転換や追尾などにも細かい修正を利かせることができる。


 俺が放った一撃は、ゴールデンウルフに見事に命中した。

 雷撃を食らいゴールデンウルフが吹っ飛んでいる間に、倒れているナナを拾い上げる。


「う、あ……」


「良くやったな、ナナ」


「あい……ナナ、頑張ったのです……」


 ナナは目を開けたかと思うと、そのままがくりと頭を下げた。

 どうやら意識を失ったらしい。

 彼女をララの下まで預けに行くと、彼女はいつもと変わらぬ様子で俺のことを出迎えてくれた。


「お帰りなさいませ、ヴァル様」


「ああ、ちょっと待っていろ。すぐに片付けてくる」


「ご武運を」


 後ろにいる獣人達は、こちらを見て呆けたような顔をしている。

 その中には昨日俺に突っかかってきたやつらの姿も見えた。

 怪我だらけだな……大方俺なんていなくともと飛び出しでもしたのだろう。


 くるりと振り返ると、ゴールデンウルフの配下らしきシルバーウルフ達は既に俺から距離を取っていた。

 恐らくは野生の勘でこちらの強さを察したのだろう。


「GARUUU……」


 そして攻撃を食らってもなお立っているゴールデンウルフは、警戒も露わにこちらを見てうなり声を上げていた。

 こいつは本来ならソメラニア平原を始めとした、終盤に出てくる魔物だ。

 恐らくレベル帯は今の俺と同じか、やや上。


「相手にとって不足はないか。……サンダーアクセル」


 全身を紫電が包み、視界がわずかに明るくなる。

 中級雷魔法、サンダーアクセル。

 己の肉体に紫電を纏わせ敏捷を底上げしてくれる、俺が自身に対して使える数少ないバフの魔法だ。


 そしてゴールデンウルフが消えたその瞬間、俺も動き出す。

 俺の残像へと噛みついたゴールデンウルフの横っ面に、ミスリルの剣を叩きつけてやった。

「GAUN!?」


「バフをかければ、届かない速さじゃないな」


 敏捷特化のゴールデンウルフ相手に遠距離戦では分が悪い。

 それなら魔法を使いつつ剣で相手をしてやるのがいいだろう。


 剣を突き込めば、既にそこに相手の姿はない。

 そして残像を残していた敵の攻撃がそのまま俺目掛けて放たれるが、それすらも残像。

 互いの攻撃が掠ることもなく、高速の応酬が繰り広げられる。


「ま、まったく見えねぇ……」


「なんつう戦いだよ」


「しかも剣振りながら普通に魔法も使ってるぞ……」


「ふふん、そうです、ヴァル様はすごい方なのです」


 なぜか鼻高々で胸を張りながらドヤ顔をしているララのためにも、なおさら負けるわけにはいかなくなった。


 ゴールデンウルフの攻撃パターンは思っていたよりも多彩だ。

 通常狼型の魔物は突進による体当たりと噛みつきくらいしかバリエーションがないが、こいつの場合土魔法も使ってくるせいでより機動が立体的だ。


「GAAAA!!」


「おっと危ない、躾がなっていないな」


 自分が使った土魔法を足場にして予想外の方向転換をしてきたり、足下にスパイクを生み出してこちらの足を潰そうとしてきたり、本当に魔物かと思うくらいいやらしい戦い方をしてくる。

 多分だが、かなり知能が高い個体なんだろう。


 『スペル・シンフォニア』だとただ魔法と物理で殴り倒して終わりの普通の個体だったが、こうして三次元戦闘をするとまったく別物だ。


 ゴールデンウルフの後ろ蹴りを避けると、裏拳気味にやってきた前足を避ける。

 そこに雷魔法を放ってわずかに動きを止め、下半身側に回り一閃。

 くるりと避けようとする下腹に攻撃が入る……が、浅い。


 あちら側の攻撃もそこまでのダメージは入らないが、こちら側も若干攻め手に欠ける。

 となると……もう少しギアを上げさせてもらうしかないか。


 わずかに距離を取り、精神を集中させる。

 レベルが40を超えるようになったことでようやく使えるようになった俺の切り札の一つを着ることにした。


「エレクトリックソード」


 バチバチバチバチッ!


 魔法名を唱え魔法を発動させれば、飛び出した雷が蛇のようにうねりながら、自身が構えるミスリルソードを這いずっていく。

 みるみるうちに光量が増していった雷は剣の形を取っていき、剣を覆い、一体化していく。

 現れたのは、一回りほど大きくなった輝く雷の剣。


 上級雷魔法、エレクトリックソード。

 刀身を雷で延長し、一定確率で麻痺とスタンの状態異常を与える強力な魔法だ。

 状態異常攻撃はボス相手には利かないが……


「GYAU!?」


 こいつはただ終盤に出てくるだけの、通常の魔物。

 下級の魔法程度であればレジストされてしまうが、こうして上級魔法を使えばしっかりと状態異常攻撃も通る。


 スタンが通ったことで、わずかに相手の動きが鈍くなった。

 対等の速度を出せる相手にその隙は致命傷だな。


「――しいっ!」


 今まではまったく通らなかった一撃が、面白いように決まっていく。

 ここまで来てしまえば、後は生じた隙を的確についていくだけだ。


 今までお互い対等に進んでいたダメージレースが一方的なものに変わっていく。


 いくら魔物の方がタフネスに優れているとはいっても、それでも攻撃を食らい続ければ無事では済まない。

 更に攻撃を続けて相手に麻痺の状態異常がつけば、あとはもう作業だった。


「GU……A……」


 勢いよく地面に倒れたゴールデンウルフの身体に、雷の剣を突き立てる。

 そして相手がぴくりとも反応をしなくなった段階で、ふぅと息を吐く。


 するとなぜか、聞こえていなければおかしいはずの戦闘音がまったく聞こえない。

 見れば少し離れたところにいるシルバーウルフ達が、ジッとこちらを見つめていた。


 そしてぐぐっと前足に力を込めたかと思うと……そのまま一斉に仰向けになった!

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