第3章-第32話 おやつたいむ
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攻略は順調に進んだ。
地下6階まで半日がかりだったのに地下10階のボス部屋にたどり着いたのは、再開してから2時間程過ぎたあとだった。
「念のために聞くがここで休憩を取るか?」
いままでよりもかなりのハイペースが疲れが出ていないか確認する意味でも問いかけてみる。
「このまま行きましょう。」
皆の表情も明るい。やる気は十分のようだ。だが、こういうときこそ危ない。達成感から自分自身を過信してしまうことがあるからだ。
「まずは、10分間休憩だ。」
「えー、大丈夫ですよ。」
「その言葉は10分後に聞かせてくれ。」
俺は疲労回復のため、自空間からメッツバーガーのデザート類とドリンクを取り出し、皆に振舞う。
「あっまーい。」
ご多聞に漏れず、この世界でも砂糖を消費するのはごく一部の貴族だけだ。皆素材の甘さだけのものしか食べたことはないようだ。
「うーん、生き返るぅ。」
メッツバーガーのデザート類は手づかみで食べられるものが多い。皆、地べたに座り込んで初めて食べる甘いものに舌鼓を打っているようだ。
「さあ、出られるか?」
10分後、俺が問いかけてみると案の定、周囲からは、もう少し休みたいという声が大勢を占めた。
「わかった!合計1時間の休憩とする。ゆっくりと休憩を取ってくれ。」
俺と渚佑子は、吹き溜まりになっている部屋を出て、周囲を警戒する役目を担う。
普段、指示するばかりだと、身体が凝り固まる。たまには、身体を動かす必要があるのだ。
今は周囲に渚佑子しか居ない。しかも渚佑子は後方支援担当だから、久しぶりに自空間からレイピアを取り出す。
十分に準備運動をして、剣を構えるとそれに呼応するかのようにモンスターが現れる。
「気をつけて。」
「解かっている。」
俺は間合いを計りながら詰めていく。こちらのギリギリの間合いから、一気に横に振りぬく。
ガッ。
まるで豆腐を切るようにモンスターの身体に剣が吸い込まれていく。
モンスターは一瞬にして光になって消えていく。
だが、勢い余って、剣が横の壁にぶつかってしまった。
ん。切れている。
超古代文明の文献では、どんなに良く切れる剣をもってしても、ダンジョンの壁を傷つけることが出来ないと載っていたのだが、異世界最高の金属であるオリハルコンを日本の最高の技術力で作りあげたこのレイピアには、当てはまらなかったようだ。
俺は、そのまま剣でダンジョンの壁を抉り取り、自空間に仕舞う。このダンジョンの壁は生き物扱いのようでそのままでは、自空間に仕舞えなかったんだが・・・切り取ってしまえば、別らしい。
うーん、もしかして、これを使えばダンジョンの魔法陣を使った複雑怪奇な迷路を完全に無視して、一直線に階下に下る階段やボス部屋に向かえるのじゃないかな。
いや、止めておこう。それでは、皆のダンジョン攻略が上達しないうちに階下に降りてしまうことになる。危険だ。
まあ、奥の手として取っておけばいいか。
・・・・・・・
しばらく、モンスター相手の運動をしたあとで、10階のボス部屋に挑むことになった。
10階のボスも攻略が完了し、情報を聞いているので攻略自体は簡単だ。
ここのボスは、麻痺の魔法陣を操ることができるらしい。複数の魔法陣自体が攻略者の足元に移動してくるから、悪辣だ。
初めてここに到達した調査隊は、全員麻痺させられて、なぶり殺しにされたらしい。5階のボスは魔法が役に立たず、10階のボスは魔法が必要という意地が悪い構成になっているらしいのだ。
そこは、『フライ』が使える俺たちだから、問題なく攻略できる。だが、ここのボスは、切りつけた攻略者ごとにドロップ品を落とすらしい。
ここを攻略した調査隊の中の身軽な人間の一部が切りつけたあと、強力な火力でトドメを差した魔術師じゃなく、切りつけた人間の前だけにドロップ品が落としたらしいのだ。
うちのチームは全員、渚佑子の肉体強化の支援魔法を受けているから、それなりに身軽だがさらに跳躍の支援魔法も重ね掛けしてもらう。
持続時間は短いが跳躍力は、段違いに跳ね上がる。
ボス部屋に入る前に試してみて、天井に頭をぶつけない程度に慣れてもらったあとでボス部屋に入る。
「皆、切りつけたか?」
「「「「「はーい。」」」」」
鈍くさいことに意気揚々と最初に入ったクリスティが麻痺にやられた。それ以外の全員がモンスターに切りつけることを成功している。
「まだでーす。」
鈍くさいやつが何かを喚いているが、無視して『フライ』で浮いている俺がモンスターにレイピアで切りつけるとその首が千切れ飛ぶ。
前情報通り、各人の前にドロップ品が落ちてくる。そこかしこで嬉しそうな声があがる。
「あっ、宝箱がある!」
クリスティが麻痺した下半身を引き摺るように暫く宝箱のほうに向かい、宝箱の手前でこちらに振り返っている。
「カモーン!」
どうやら、ミミックと勘違いしているみたいだ。俺がクリスティに飛びつくと思い受け止める準備をしているようだ。
俺はそのまま、宝箱に近づき自空間に仕舞いこむ。わざわざ危険な場所に無力な鍵開け職人を連れてくるつもりはない。後で開けてもらえば済むだけの話だからだ。
「さあ、行くぞ!」
「待ってくださーい。」
間の抜けた間延びした答えが返って来る。
流石に此処に置いていくことはできなかったので、俺が抱えあげ支えるとクリスティは遠慮なく抱きついてくる。視界が完全に塞がれて歩けないんだが・・・。




