第2章-第22話 かよわい
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「なぜだ!なぜ守ってくれなかったんだ!」
クリスティが兵士たちに食って掛かるのを押し留めることはできなかった。それほど彼女の感情は凄まじい。
「クリスティ!」
俺は、手を延ばして彼女の顔を叩く。
「何を!」
感情が昂ぶった彼女は、俺の胸倉を掴み軽々と持ち上げる。
俺は、顔じゅう涙だらけの彼女をそのまま、かき抱いた。外からみれば小男がへばりついているようにしか見えないだろうが、そんなことはどうでもいい。
ひたすら彼女の背中や頭を撫で続けた。
「手を上げてしまって申し訳ありません。」
ある程度、落ち着いたのか彼女は、俺を地面に降ろして謝る。
「そんなことは、どうでもいい。大丈夫・・・じゃないよな。」
俺は、振るえている彼女の大きな手を両手でそっと包み込み、彼女の目をみる。
「はい。でも・・・。」
彼女は、俺の目を見ると無理矢理作った、引き攣った笑顔を向ける。
「そんな無理することは無い。馬車の中で休んでいてもいいぞ。」
「はい、いえ、でも・・・。」
「どうしたいんだ。話し合いに参加したいのか、参加したくないのか?どっちだ?」
はいともいいえとも言わない彼女に少しキツメの言葉をかける。
「参加させてください。」
今度はきっぱりと答えてくれる。
「よし、それでこそ討伐隊隊長だ。」
外見は何だが中身は、か弱い女性なんだ。
「そのかわり、キスしてください。それで復活します。」
そう言って彼女はニヤリと笑う。どうもキスは付け足しで完全に復活しているようだったが、しゃがむように手で指示する。
「俺でいいのか?」
俺は後ろを振り向きつつ耳元で囁く。
「!」
俺は驚く彼女を尻目にキスをしてやる。それも濃いやつだ。
俺の後ろからの視線が気になってきたのだろう。長々と続くキスを彼女は無理矢理終わらせる。
「どうした?終わりか?なんなら、ここで押し倒してもかまわないぞ。」
さらにそう彼女の耳元で囁く。突如真っ赤になる彼女。
全く大人をからかうもんじゃないよ。まあ、当て馬くらいなら構わないか。
「・・・け、けっこうです。」
・・・・・・・
大使の説明では、大都市や港を守るのが精一杯で小さな村々まで行き届いてなかったようだ。
また、この村は特殊で全てを放り出して避難するのを嫌がったという。
日本人でも居るよな、何が何でも住み慣れた土地を離れたくないという人間は・・・命よりも大事なものはないっていうのに・・・。
「ここのように避難せず被害をうける村もあれば、避難がまにあわなくて被害をうける村もあるのだ。出来るだけ早く討伐隊を派遣して頂きたい!」
「貴国では討伐隊は組まないのですか?」
ここに来るまでに結構な数の軍人を見かけたのだ。
「お恥ずかしいことに、何度となく派遣しているのですが、そのたびに失敗しておりまして、もう限界なんですよ。これ以上人材を失うと人々を守れなくなってしまうので・・・。」
なにかおかしい気がする。確かに少数の弱者を捨て、多数の人々を守ろうとするのは解る。俺でも選択を迫られれば、大変辛いが弱者を切り捨てざるを得ないだろう。だが最大限努力したうえだ。
本当にギリギリなのだろうか。ギリギリなのに無理をして、ここに来襲したモンスターを倒したというのだろうか?
具体的にどこがおかしいのか解らない。なんとなく腑に落ちないのである。
そこのところは施政者にしか解らないところだ。外からきた、しかも異世界からきた人間には解らないかもしれない。この世界の常識さえもとらえきれていない俺たちが口を出すべき事ではないに違いない。
だが、この国に取ってダンジョン攻略は最優先課題であることには違いないであろう。
・・・・・・・
「駄目だ。何が何でも出るんだ。」
流石にショックが強かったのだろう。この国から歓待を受けるに当たり、部屋で休みたいと言ってきたのだ。
可哀想だが彼女は現場指揮官だ、こちらの現場の責任者と十分意志疎通してもらう必要がある。ようするになにかあったときに向こうの人材をすぐにうごかせられなければ成功するものも失敗してしまうに違いない。
「今日は休ませて上げて貰えませんか。」
「ディーナ。」
何も全て彼女に任せようというわけではない。アポロディーナと二カ国ずつ担当してもらう積もりだったのだ。ただ、ここは、彼女の生まれ育った国ということでより疎通しやすいだろうと思いお願いしていただけだ。
「私が代わりに担当しますから・・・それに私も宰相の孫として、いろんな方々と触れ合うことを苦手だなんていってられませんから・・・。」
アポロディーナが代わりに勤めるというならば問題ないだろう。それにしても、やっぱり、苦手なんだアポロディーナは・・・。俺の前でペラペラとしゃべっているところは見たことがないものな。
今日のところはお手並み拝見といこうか。




