第1章-第1話 少女D
お読み頂きましてありがとうございます。
第3節の第1話が間に合ったので出しておきます。
「召喚魔法がウザイ ~召喚をされカケル少女~」
http://book1.adouzi.eu.org/n8946co/
の主人公の社長サイドの話となります。
上記小説はこの第3節の後の話ですのでこの節を読む前に読まなくても問題はありません。
その少女との出合いは貴金属買取ショップで例の若頭が現れるようになった頃だ。いつものように若頭が現れたので俺は席を外す。店の女の子は、マニュアル通り大量持込や刻印が不鮮明なものを買い取り処理できないから、大丈夫なはずだ。
まあ、1本や2本なら損をしても仕方が無いだろう。そこは覚悟している。この店は、あくまで俺の持ち込む貴金属を不審に思われないための隠れ蓑に過ぎない。月に1千万円以上の利益をたたき出しているのだから・・・。
俺は店に来ている若頭を伺うように100円ショップに潜んでいる。さっさと帰って欲しいものだ。若頭は2・3、店の女の子と言葉を交わし苦笑しているという風に装って店を出て行った。まあ、腹の中では煮えくり返っているだろうが・・・。
その俺の目の前を1人の少女が通っていく。今は指輪を『鑑』にしているのでいろんな情報が飛び込んでくるのだが、目の前の少女からは全く異質な情報が飛び込んできたのだ。
『勇者』
チバラギ国の禁書専門の書庫にある勇者に関する書物の解説では、日本から異世界に召喚されたり、送り込んだりした場合に日本側の神様が与える称号の1つだ。
その他にも異世界で暮らすのに便利な『翻訳』『鑑定』『状態』『箱』といった能力やずば抜けた1つの能力が与えられると記載されていた。
なのに目の前の少女には、『翻訳』『鑑定』『状態』『箱』の他2つの能力が表示されていた。そして彼女は、俺の貴金属買取ショップに行った。彼女がしたいことは容易に想像が付く。異世界の金貨や貴金属を換金したいのだろう。
俺は、慌てて指輪を『装』に変更して店に向かう。この指輪の能力は自分のステータスを一般人と同じように装うことができる。彼女は魔術師の最大レベルであるので鑑定魔法を使えるはずだ。これでもし俺に鑑定魔法を使われても、誤魔化されてくれるはずなのだ。
・・・・・・・
俺は、ゆっくりと店に向かい、カウンター内に入り込む。
「いらっしゃいませ。」
俺は少女に最大限の笑顔で挨拶をする。彼女は口篭り、真っ赤になって下を向いてしまった。さっきまでバイトと苛烈な口論をしていたとは思えない純情さだ。
「どうした?」
カウンター内に居たバイトに何があったか聞く。まあ大体予想は付くが・・・。
「このお客さまは紹介でいらっしゃったようで・・・。」
やはり、他店で断られこの店に回されてきた客のようだ。買取を拒否された詐欺師や他店の説明では納得しない客が回されてくるのだ。本当は本部の担当者がやる仕事なのだが、人手不足で此処には比重計もあることから、トラブル専門のようになっている。
碌に客にならない仕事なのでそれらの客数に応じて本部から手数料を貰おうと交渉中だ。
「解かった。後は俺に任せてくれ。」
カウンターの席を替わる。
「お待たせ致しました。早速、品物を見せて頂けますでしょうか?」
彼女は、何処からとも無く取り出した金貨をカウンターに載せる。おいおい、メチャクチャ怪しいぞ。俺も魔法の袋から物を取り出す時に気を付けないとな。
「申し訳ありません。金貨やインゴットは、投資の一部として利益に税金が掛かってきますので購入証明が無いと買取金額から税金を引いたものをお渡しすることになりますが、よろしかったでしょうか?」
まあ建前上は、こんなものかな。
「さらにこちらの金貨は今流通しているものとは違うため、どのようなお値段が付くか解かりません。もしかするとプレミアが付いているかもしれませんよ。どうしても買取を希望するお客さまには潰した場合の買取額とさせて頂きますがどう致しましょうか?」
こんな少女が貴金属買取ショップを利用するのだ。親には言えないのか、親が居ないのか、とにかく早急にお金が必要なのだと思われる。しかも、相手は『勇者』是非とも味方にしたいので精一杯譲歩してみる。
「はい。潰して。」
「少々お待ちください。金の含有量を簡易検査します。」
俺はそう言って、カウンターに置かれた金貨を丁寧に布張りの箱に載せて、後方の比重計が置いてある部屋に持ち込む。手順どおり、比重計を起動する。金の含有は15金相当のようだ。
念のため、指輪を『鑑』にして確認する。お、混ぜ物の半分にプラチナが含まれている。現在のプラチナ価格から考えると20金相当と考えればいいようだ。
指輪を『装』に戻し、席に戻る。
さあどうしようか。はっきり言って、これは貴金属買取ショップでは買い取れない。こんな金貨が存在すること自体、問題だからだ。
どこかの専門家の手に渡ってしまえば、新発見と報じられてしまうだろう。そして詳しく調査され、どこの国の系統の金貨にも属さないとなれば、滅びた国の金貨しかない。そうなると金貨の新しさが不審に思われるのだ。
だれかが勝手に造幣したものと思われることになる。もうそうなると犯罪だ。関与した俺の店も詳しく調べられるだろうし、目の前の少女のことも話す必要が出てくるのだ。
俺のポケットマネーから出すしかない。本当なら金の含有量の15金で買い取りたいが目の前の少女の信用も勝ち取りたいので正直に言うしかない。
「金は15金相当でした。」
「はい。」
「ですが、プラチナが含まれているようですので買い取り金額は、このようになります。」
そう言って彼女の前に電卓を置き、金額を提示する。
「あれっ。ああ、本当だ。ありがと。ああ・・・、その装置って、凄いんですね・・・。」
目の前の金貨を鑑定し直したのだろう。また不審なことを言い出す彼女の言動はスルーする。
手順通り、住所・氏名・年齢・職業を書いてもらう。職業欄で躊躇していたが「無職」と記載された。学生でも無いらしい。年齢からすると高校生なのだが・・・。
「身分証明と親御さんの承諾書を見せていただけますか?」
「あのう、それって絶対必要ですか?こんなものしか無いんですが・・・。」
そこに出されたのは、おそらく親の死亡証明のコピーと住民票だった。
やはり、そういうことか。
「あれっ。渚佑子ちゃんじゃない?」
さて目の前に現れた人物は?




