第5章-第52話 たかぴいおんな
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そこへ、ウィルソンが走りこんでくる。
「やあ。伯爵。」
「トム?やっぱり、トムだ。シオリの付き添いの王族の知人って・・・。娘が失礼したようだ。」
「アレって、本当の娘なのか?」
「ああ、情けないことにな。息子のウォルターは、軍に入らない。娘のグレイスは、軍人の婿を取ろうとしない。僕の代で軍閥としてのアルドバラン家も終りかもしれない。」
「あら、別に軍人が嫌だとは、言ってないわよ。昨夜、お父様が仰ったテロリストを撃退するような勇敢な殿方が、良いだけですわ。お父様も嘆いていたじゃないですか、近くに現役の軍人や予備役の方がいらっしゃったのに誰も立ち向かわなかったって。」
まあ、そうだろうな。よほどのバカでないかぎり、銃を持った相手には、立ち向かわないわな。
「その通りだ。ウィルソン。その者を知っているのだろう。公爵家に入ってもらえるよう打診はしたのか?」
今度は誰だ。扉から現れたのは、ご老体だったが眼光鋭い白髪の男性だ。
「父上。既に婚約者がいらっしゃったので・・・。それに今回の件は、極秘扱いとなっていますので漏らせば軍法会議モノですので、たとえ、身内であろうとも言うわけには、いきません。」
公爵だろうか。貴族は、不名誉なことを嫌うからな。次期公爵が退役直前で軍法会議で処分を受けるとかありえないだろう。
「まあいい。わしも元将軍としてのルートで探ってみるとしようかのう。それで、そちらはどなたかな。」
「はい。陛下の推薦で我が軍の装備増強をして頂いております山田トム殿です。僕の知人でもあります。」
「山田取無と申します。よろしくお願いします。」
異世界で習った貴族に対する礼儀作法で挨拶を行う。
「アルドバランだ。しかし、陛下がか。それも日本人のか。珍しいこともあったものだ。それで、そちらが例のお嬢さんか。」
俺は、隣の湯村さんに合図を送る。
「湯村詩織と申します。よろしくお願いします。」
彼女にも軽く挨拶の仕方を教えてあったのだが、元々舞妓ということもあり、外国人に対する礼儀作法が仕込まれていたらしく華麗な仕草だ。付け焼刃の俺よりもしっかりと身についている。
「よろしい。滞在を許可する。」
「お爺様!よろしいのですか。」
「今時、貴族の使用人でもないかぎりここまで礼儀ができているのは、珍しいのだ。」
そう言って目の前の公爵が部屋を出て行った。
「ウォルター、詩織さんを案内してあげなさい。」
「はい。」
そう言って2人が連れ立って、部屋を出て行った。
「トム。まだ時間は、よかったかな。グレイス、ほら謝りなさい。」
「なんで私が!」
「いいのか。彼は、今、王子の一番近しいご友人だぞ。」
まあ、一番は賢次さんだけどな。王子自身がそう公言しているせいなのだ。よほど、賢次さんのアパートの存在は、隠しておきたいらしい。
彼女も次期公爵家令嬢として、王子を狙っている一人なのだろう。
「・・・・・・・・。」
結局、何も言わずに部屋を出て行く。プライドを選んだらしい。
「すまんな。トム。」
「別にかまわん。だが、例の件は内緒でお願いする。あんなのに纏わりつかれたのでは、かなわん。いや、失礼、ご令嬢に・・・。」
「ああ、父にも言っておく。」
「まあ、どうでも良いがね。それよりも、湯村さんは、俺の大事な従業員だ。彼女がどういう選択をしても彼女を傷つけないようにお願いする。」
俺は、軽く頭を下げる。
「そう言うところを見ると息子に分が無いということかな。」
「さあな。ただ、小姑があれじゃあ、良い印象はないだろう。大変だな、ウィルソンも。ただ、彼女も俺のところで重要なポストを占める予定だ。家に縛り付けようなどと思わないほうがいいだろう。」
彼女が結婚するとしても、ニューヨークやロンドンに活動の場がないわけではない。さすがにうなぎ料理店は無理でも、彼女ならどこでもやっていけるだろうし、彼女にもそう伝えているのだ。
「肝に銘じておこう。・・・昼食は、我が家で食べていってくれるだろう?そのほうが、シオリも安心するだろうし。」
さすがにそこまで言われては、このまま帰るわけには、行かないようだ。湯村さんも大人だし、舞妓としての経験からか場慣れした対応もできるようだし、ウィルソンも居ることだし、特に心配はしていないのだが。
しかし、彼女を過少評価をしていたかもしれないな。あれは、さらに上を目指せる人材だ。これからは、宇宙エレベーター事業で各国対応などが必要となる。どこから人材を引っ張ってこようと思っていたが、彼女を海外拠点のリーダーにするのも、いいのかもしれない。
「そうだな。特に急ぎの仕事は、無い。大丈夫だ。」
「では、我が家を案内しよう。」
執務室に向かうとそこには、公爵の若かりし頃の姿なのだろう。軍服姿に沢山の勲章を胸に付けた姿の等身大の絵画が飾ってあった。
「父は、自分の屋敷に帰ったようだ。」
よかったと言うべきだろう。あの公爵と面をつき合わせて昼食となると気疲れが凄いだろうしな。俺のことを探っても、軍閥という家柄からするとそう外に漏出することもないだろう。
「そう心配するな。父も軍人だ。国の方針に逆らうようなことは、しないはずだ。」
俺の顔に心配だと出ていたのだろうか。そのようにウィルソンが言ってくる。
しかし、伯爵家の邸宅は、広い。庭園も維持するだけで大変そうだ。領地を持つイギリスの貴族は、なにもかも桁が違う。きっと、領地の屋敷は、もっと凄いに違いない。
そうして、昼食が終わり、お暇してきた。湯村さんも大丈夫そうだったのでウィルソンに任せて戻ってきたのだ。
その後、約束通り、ケント王子をお送りして、さつきを連れ、異世界でいつものように開拓に精を出し、王宮に戻ってきたときにその情報が飛び込んできたのだ。
少々手間取りましたがなんとか更新できました。
さあ、その情報とは何か、そして何かが動き出す。




