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第1章-第9話 ふぉろー

お読み頂きましてありがとうございます。

「わしも、く○もんを見る機械がほしいのう。」


 とりあえず、無視するか・・・・。


「では、送還をお願いします。」


・・・・・・・


 今日は貴金属買取ショップの開店を明日に控え、本部からやってきた担当者による研修である。研修といっても、PCの専用ソフトウェアの説明と買取手順などだ。基本的にはマニュアル通りにすればOKで、1度聞いたらOKな程度のものである。


 問題は次の貴金属の真贋の見分け方である。18金、24金、プラチナ950、プラチナ1000などさまざまな刻印があり、それを覚える必要がある。だがそれは後々、写真を見ながら少しずつ覚えていけは良いのだが、刻印部分だけは本物で他は贋物というものさえあるという。


 アルバイトの2人には、まだそこまで求めていない。当分の間は俺が鑑定する。だが、どうやら担当者の出題する問題に正解しないと出店できないらしい。仕方がないので俺は、秘かに指輪を『鑑』に変える。


 指輪を『鑑』にすると、人間なら名前と職業が、無機物ならその成分が読み取れる。俺が担当者の出題する問題にどんどん正解を出すのをみて、アルバイトの2人は尊敬の目を向けてくるようになった。きっと、今まではただのオッサンと思われていたのかもしれない。


 アルバイトも正答率90%を超えるようになったので、研修が完了になった。


「比重計も買われたのですね。でも比重計をあまり過信しないでください。中を空洞にすることで比重を合わせてくる贋物も、若干存在しますので・・・。」


「すみませんが、担当違いかもしれませんが、これの鑑定もお願いできませんか?大変珍しいと思うのですが、18金の金以外の金属に一部プラチナが使われているみたいなんですよ。」


 ついでに異世界から持ち込んだ、くず銀が混じった金のネックレスを講師に手渡す。


「ほう、それは、めずらしいですね。わかりました。潰して成分の確認をしておきます。」


「よろしく、お願いします。今、独自のルートで入ってきているのがそれなのです。18金であるのは確実だとは、思うのですが・・・。やはり専門家のご意見を御伺いしたい。」


 きっと、専門家と言えどその場では何もいえないのだろう。そのまま、受け取り鞄に仕舞う。


「はい、お預かりします。」


・・・・・・・・


 午後の時間が空いたので、以前買取をお願いした老舗のショップに行く。18金は2ロット200本であるが、前回と同量の50本、以前と同じならば1000万円くらいで買い取って貰えるはず。さらにプラチナも鑑定してもらい次回の買取につなげる目算もある。


「こんにちは。」


「山田様、いらっしゃいませ。」


 いいな。名前を覚えて貰えるのは気持ちいい。うちの買取ショップでも実践できると良いな。


「また同じようなネックレスがあったので、買い取りをお願いします。これなのですが。」


「はい、お預かりします。1本だけ銀のものも含まれているようですが・・・。こちらも買取でよろしかったでしょうか?」


「あのう・・・それもあと何十本かあるみたいなんですけど。償却が終わっているのを確認できたのが、それ1本だけなのでとりあえず持ってきました。銀ですか?」


 担当者がネックレスを見聞していると少し声をあげる。


「あっ。・・・まさか・・・。少々お待ちください。」


 どうやら、比重計を使いにいったようだ。


「お待たせ致しました。こちらはプラチナのようです。」


「えーーーーー!プラチナですか?それじゃ、銀の何倍もするということですか?」


 とりあえず、驚いてみせる。プラチナは銀の何倍どころではない。細かい相場はわからないが数十倍になるはずだ。


「ええ、70倍ほどになります。」


 担当者がスラスラと買い取り金額を並べてくれる。


「はあ・・・そうなんですね。それでは、買い取りをお願いします。」


「前回と同様、お預かり証をお渡しして約3日お時間を頂きます。よろしいですか?」


「はい、よろしくお願いします。」


 俺は預かり証を受け取り店を出た。今日は別の市の老舗買取ショップに行って、同じように金のネックレス50本とプラチナのネックレス5本を置いてきた。分散したほうが怪しまれる可能性は少ないに違いない。念には念をいれておく必要があるだろう。


・・・・・・・・


「あっオーナー。どちらへ?」


「トイレだ。お客さんが来たら断っておいて。」


 ここ数日、1日に数回席をはずしている。ほとんど営業できない。指輪は常時『鑑』にしているとあきらかに、こっちに向かってきている男の職業欄に、XX組若頭とか○○組補佐などを確認できるのである。これは逃げるしかない。


 最近はアチラの職業の方と言っても、見かけはサラリーマンと見分けがつかない。アルバイトには悪いが、明らかに詐欺とわかっているのに受けたくない。できるだけ穏便に帰って頂きたい。買い取れないと答えて、凄まれて警察沙汰は避けたいのだ。


 アルバイトの視線で判断すると、俺の株は下がったようだ。俺の苦労も理解しろと言いたい。


・・・・・・・・


 俺が席に戻ると、どこに隠れていたのか。XX組若頭が目の前に現れた。どうも、捕まったようだ。


「ありがとう、連絡してくれて!」


 どうやら、アルバイトが勝手に連絡したようだ。なんてことだ。一度痛い目に遭わないと解からないらしい。俺は覚悟を決めて応対することにした。小額ですめば損をしてもかまわないつもりだ。


 しかし、小額とならないようだ。15本の自称18金ネックレスを持ち込んできたのだ。グラム換算で130万円くらいだ。刻印もあるがどことなくいびつな気がする。さらに、比重計で確認しても、一応18金と表示される。


 もちろん、指輪で確認してみると金は殆ど入っていない。


 手順どおり、身分証の提示を求めると、こちらも、贋物の免許証のようだ。目の前の人と名前が違う。しかたがない、警察に連絡するか。


「申し訳ありません。免許証の照会をさせて頂きますので、コピーしても構わないですか?」


「ああ、かまわないよ。」


 若頭は、気さくな感じを装っている。


 俺は免許証をコピーし、免許証を目の前の男に返す。


「それでは、少々おまちください。」


 そう言って、スーパーの警備員室に駆け込む。ここの警備員に元警察の人間がいる。よく飲みに行く友達だ。


「すみません。安田さんはいらっしゃいますか?」


「ああ、今、見回りに行っているよ。」


 よし好都合だ。


「今、店舗に不審な男性がいるので確認してもらえませんか?」


「わかりました。連絡します。」


 警備員は無線機を持っているので、すぐに連絡がついたようだ。10分待っても20分待っても、パトカーは現れない。そうしているうちに、安田さんが戻ってきた。


「ありぁ、XX組若頭だな。穏便にお帰り頂いたよ。俺の居るスーパーなんか来たくもないってさ。よかったよな。詐欺未遂だけど、パトカーなんか入ってきた日にゃ、スーパーの評判も悪くなるからな。」


「これ、証拠物件の免許証のコピーです。」


「ああ、確かに奴の名前と違う。贋物だなこりゃ。一応あずかっとくわ。お前のところのアルバイト、怯えとったで。はよう、行ったんな。」


「すみません。ありがとうございました。また、いっしょに飲みに行きましょう。」


「ああ、おまえさんのおごりでな。」


「もちろんですよ。」


 やっさんのおごりで済めば安いもんだ。


・・・・・・・・


 店舗に戻るとアルバイトの従業員が青い顔をして震えている。どんなやり取りがあったのかは解からないが、安田さんに追い出された若頭が本性を出したのだろう。


「もういいよ。今日は店じまいだ。100円ショップのバックヤードに行くぞ。」


 休業の札を出し、閉店処理をする。本部に連絡することも忘れない。


「ああ、それでいい。よくやった。閉店か、かまわんよ。アルバイトも仕事にならんだろうしな。しっかりフォローしてやれ。」


 本部の人間も褒めてくれる。こういった修羅場は何度も踏んでいるのだろう。あの対応で良かったようだ。


 俺は100円ショップのバックヤードにある椅子に彼女たちアルバイトを座らせる。店から缶コーヒーをちょろまかして2人に渡すと震えた指でプルトップを引き起こして飲み始める。


 こんなことでアルバイトを辞められたらたまらない。


「念のために行っておくが、君たちを責めるつもりは全く無い。偶々今日は運が悪かっただけだ。奴もこのスーパーに安田さんが居るので、この店には近寄らないだろうから、安心していい。わかった?」


 二人は顔を見合わせると静かに頷く。


「なあ、聞いていいか?あいつに連絡したのは、どっちだ?」


 右側の娘が手をあげる。声を出して答える余裕もないようだ。


「個人の携帯から連絡したのか?」


「・・・はい。」


「俺の電話番号とかは教えていないよな?」


「はい、教えていません。」


「あいつとは何を喋ったか?」


「世間話くらいで、別になにも?」


「あなた、食事に誘われていたじゃない?」


「それだけか?」


「ええ、それだけです。別に何か貰ったわけでもないです。」


「じゃあ、行こうか。」


「えっ、何処へ?」


「携帯電話会社だよ。電話番号変えるだろ?俺も悪かったよ。会社名義の携帯も借りよう、今度からはその携帯を使えばいいから。電話番号を変える費用は、経費で落とすよ。落とせなきゃ、俺のポケットマネーだ。」


「えっそんな。そこまでして頂いては・・・。」


「お前たちは、俺の大事な従業員なんだよ。俺はそれくらいしかしてやれない。あっ、そうだ。反省会をしよう。何処か飲み屋がいいか。それとも、ホテルのバイキングでもいいな。」


「私は飲み屋のほうが・・・。」「私も・・・。」


 その後、携帯電話会社に行き携帯番号を変える手続きをした。会社名義の携帯は彼女たちの意見でiPh○neになった。


 飲み屋に行き、さらに2次会で前々から行きたいと言っていたショー形式のバーに連れて行ったころには、笑顔も見えるようになった。これで明日、出勤してくれればいいが・・・。


これだけ、フォローしたが・・・どうなるのでしょうか?


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【新作】「ガチャを途中で放棄したら異世界転生できませんでした」
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