第1章-第7話 はくきん
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一人黙々とPCのヨウツブで、く○もんの動画をみるエトランジュ様の姿が・・・。
「エトランジュ様、何をしておいでです。」
俺が声を掛けると、ビクっとして振り向いた。
「あの、その、・・・。」
「そんなに面白いですか?」
「可愛い、このベア・・・。」
「く○もんという、ベアです。」
「く○もん。」
「そうです。身体は大丈夫なんですか?」
「うん、あの薬は良く効きますね。とても元気になりました。」
「もうそろそろ薬が切れるころですので、もう1回お飲みください。そして少しは身体を休めてください。ダメですよ。そんな格好で、ずーっと起きていては・・・。」
俺がそういうと、エトランジュ様は名残惜しげに、PCのほうを見つつ、自分の部屋に帰っていった。
これで俺がヨウツブを見出したら、またやってくるんだろうな。しかたがない、イヤホンで聞くか。俺は、iB○ffaloのBluetooth対応のヘッドセットを取り出し着けた。
・・・・・・・
翌朝、セイヤが王宮に出勤したのを見届けたあと、秘密の抜け穴から抜け出す。
王宮の受付にて、商人資格の件を伝えるともう話が通っていたのかすぐに発行してくれた。貴金属の生産者への紹介状と詳しい地図も貰えた。
王宮の外に出て、袋から原付スクーターを取り出す。道が悪いのでオフロードにしようか迷ったが。重量の関係上スクーターにした。○ンダのヂオだ。商社時代に中古パーツ買い取り専門のショップと外国商社との取引をしていた関係で、原付スクーターについては詳しい。
ショップの方にいろいろ教えてもらいながら、一通り整備できるようになった。このスクーターの部品は中古パーツとしては、かなりの数が市場に出回っており価格も安めだ。もちろん、今でもコネは有効なので、安く流してもらっている。
異世界でも、商売をするには足が必要だと思い、持ってきたのだ。
そうこうしているうちに、目的地に着いた。メットを脱ぎ、座席下のメット入れに仕舞う。盗まれる心配はないだろうが念のため、チェーンキーも掛ける。
「こんにちわ。」
「はい、いらっしゃいませ。どういった、ご用件でしょうか?」
「はい、王宮から紹介頂いたのですが、こちらで貴金属の加工をしていると伺って・・・。」
紹介状と資格証を見せる。
「はい、主に金のネックレスを作成していますが、ご注文でしょうか?」
「ええとですね。金のネックレスの金属の使用割合が知りたいのですが。」
「はい、金12:くず銀2:銀1:銅1となっています。」
おそらく、くず銀というのがプラチナこと白金だな。
「そのくず銀だけで、ネックレスを作ってもらうことはできますか?」
「もちろんできます。しかし、名前で解るとおり、非常に安価な金属ですので貴族には好まれていないのです。直営店でも、なかなか売れない商品なんですけど、よろしかったでしょうか?」
「はい、庶民向けの商品ですので構わないです。だいたいどれくらいの金額でできますか?」
「そうですね。金のネックレスの100分の1と思ってください。1ロット100個単位の注文となりますが、何ロット注文されますか?」
金のネックレスも聞かなくては、18金のネックレスにプラチナが入っているのは珍しいらしい。ということは、そんなものを大量に買取業者に流すのは不審に思われるに違いない。
「金6:銀1:銅1のネックレスを作ってもらうことは可能ですか?」
「はい、可能ですが若干お高くなりますが、よろしかったでしょうか?」
「はい。金のネックレスが100万G分、くず銀のネックレスが30万G分でお願いします。」
「少々、お待ちくださいませ。・・・では、金のネックレスは20ロット、くず銀のネックレスは600ロットとなります。金のネックレスはくず銀が入っているものでしたら、2ロット分は在庫がございます。あいにく、くず銀のネックレスは、見本品の10個のみとなりますが、どうなさいますか?」
「はい。まずはそれだけ頂いてきます。」
「では手付けとして、25万Gお預かりさせて頂けますでしょうか。」
「いえ、この場で全額払いましょう。」
「よろしいのですか?では2割ほど勉強させて頂きますね。・・・103万Gになります。」
俺は103万Gを手渡す。まあ、王宮の顔を潰すような取引はしないだろう。
「出来上がりは、半分を7日後、もう半分が14日後になりますが大丈夫ですか?」
「はい、それでお願いします。」
金のネックレスは、前回買った分のおよそ4倍はありそうだった。これだけあれば、当分持つだろう。全部をFCの貴金属買取ショップ経由で流すのは無理だろうから、前回利用した店舗にも持ち込んでみよう。
・・・・・
店を出ると、スクーターの周りに人だかりができていた。
「それは、お主のか?それはなんだ?見たこともないものだが・・・。」
横に馬を従えた兵士だろう。それなりの身なりをした若者が聞いてくる。
「はい。馬みたいなものですね。」
「ほうほう、では拙者の馬といっしょに走ってみようじゃないか?よろしいかな。」
「ではどちらのほうに向かえばよろしいですか?」
「右軍の駐屯地はわかるかな?」
そこは、セイヤに今度見せるといわれたところだ。たしか、王宮から中央の湖から右手の方角と聞いた覚えがある。
「湖を右方向でしたか。」
「ああ、それであっているよ。では参ろうか。」
路面が悪いのでスピードは抑え目だ。それでも時速30キロは出ている。馬はあっというまに先の方を走っている。暫く走っていると追いついたようだ。さらにそのまま走り続けると追い抜いていく。まあ、こいつは息切れしないからな。
息が上がっている馬の横をすり抜けていく。
・・・・・・・
駐屯地らしき門の前で10分ほど待っていると、ようやく馬が追いついて来た。
「なかなか、早いなその馬は。」
「いえ、そちらの馬ほどではありません。」
TOPスピードは、どうしても負けてしまうだろう。スクーターは速度が出ないようになっているからな。でも、この距離なら、たとえ10往復してもスクーターは息切れしない。
「では、姉貴に会わせてやる。ついてまいれ。」
さて、姉貴とは・・・。




