15話 繋がっていたい
積荷を一杯に乗せたトラックが脇をすり抜けていく。
前を走る白いクーペのバックライトの灯りに、目がちかちかする。
慎重にスピードを落とし、メータに視線を泳がす。
「あなたの娘さんに会ったらどう?ってアドバイスしたのは私なの。」
思いもがけない言葉だった。隆博自身の考えだと思っていたからだ。
「それから2年ほど経って、いつも手紙をくれる可愛い彼女が、あなたの娘さんだということがわかって、彼はかなり悩んでいたわ。」
「あなたには何でも?」
「そうね。常に私たちはオープンにいろんな事を話し合っていたわ。だけど、その時が初めてよ。あなたのことを聞いたのも。娘さんのことも。」
少し間をおいてつぶやいた。
「それに、昔のこともね。」
最初はびっくりしたし、ああ、隆博のことで私が知らないこともあるんだって、ちょっとショックだったわ。だけどね。変な話、もうその頃、離婚の話が出ていた時なの。
「水木さんが心配していることは何となくわかるわ。間違ってたらごめんなさいね。だけど、心配しないで。私と隆博が別れたのは、あなたたちのことは関係ないのよ。」
レナさんは続けた。
たぶん同志みたいなものだったのね。
知り合ってすぐ結婚して、和可が産まれて。和可を育てるという共通の目的の基に集っていた仲間みたいなものだったのかもしれない。和可が亡くなって、ふたりともぽつんと糸が切れた風船みたいになってしまった。見ている先が一緒だったのに、これからはどこを一緒に見ていったらいいのかわからなくなっちゃったのね。
ふたりは同じ先を見ていた。
横に歩くお互いを見て行こうとは、考えなかったのだろうか。
隆博はどうなんだろう?
隆博の胸中まではわからないが。
お互いをあんまり干渉しない者同士だったから、何をしに行くのか聞いたことはなかったけど、良二さんの所へ隆博が行っていたことを知っていた。私と和可との生活を大事にしてくれている一方で、どこかであなたと繋がっていたかったのね。
それを思ったから、だから隆博の居場所をあなたに教えるのよ。
お互い自由になりたかった。どちらかが負を負ったとか、負わされたとかそういう関係で終わりたくなかったのだと、そう最後に彼女は言った。
東京から良二さんの住むY市までは、高速で7時間のロングドライブ。
新幹線を使わなかったのは、今すぐ行かなければ、またどこかであいつを見失ってしまう。
朝まで待って新幹線に乗り込むことは全く頭になかった。
真夜中の高速。あの時と同じレーン。あの時と同じ道行き。
今はひとり。
帰りは?
またひとりだろうか?それとも。
いろんな人の気持ちを考えた。あいつのこと、レナさんのこと。絵梨香のこと。
自分取り巻くすべてのひとの気持ちを。
いろんな考えが浮かび、頭の中を埋め尽くす。
フロントガラスに映る灯りが反射して、瞬きする間もなく後方へ飛び去る。
考えも同じようにして自分の中からすり抜けて消えていく。
ただ、ひとつだけの思いがあった。
〝会いたい。間に合うだろうか?〟




