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第1-29話 崩れた日常


「起きなさい、バルデス」


「んあ……、ってライか。どうしたこんな朝っぱらから」


 森で眠っていたバルデスを起こしたのは先日約束したライであった。眠け眼を擦りながら身体を起こす彼を待たずにライは言葉を紡ぐ。


「お待たせましたね。今日がその約束の日です」


「何!? てことは」


「貴方の復讐がなされる日ですよ」


 ライの言葉にバルデスのテンションが一段階上がる。


「あいつは町にいるのか?」


「今はいません。ですが十中八九すぐに戻ってくるでしょう」


 ライの言葉にバルデスは一縷の違和感を覚えたが、気にせず耳を傾け続ける。


「先に私どもの計画を始めます。すると町の人間どもがパニックを起こします。あとはその隙にあなたはやりたいようにやっていただければいい」


「よっしゃ任せておけ! 今日という日を待ち望んだぜ!」


 立ち上がって己の得物を豪快に振り回した彼は俊敏な動きで立ち上がる。既に起き抜け特有の重さはない。重厚な雰囲気を放ちながら獰猛な笑みを浮かべていた。


「ところでヒナの奴はどこか知らねえか? 姿が見えねえみたいだが……」


 バルデスはいつもそばで休んでいるはずの女の姿を探す。すると、ライからすぐに答えが返ってくる。


「彼女は率先して偵察に行きましたよ。今は町の様子を窺ってもらっています」


「なんだそんなことか。全く伝言の一つでも残してから行けっつうんだよ」


 悪態をつきながら立ち上がり、町に向かうはずの方向に歩き始めるバルデス。


「……ん? まあいいか」


 その時、彼は微かに違和感を覚えていた。特に関わりの無いはずのヒナがなぜライの指示で偵察に出ているのか? 二人は以前から交流でもあったのだろうか。


 だが、そんなことはすぐに彼の中でどうでもいいという結論が出た。既に頭の中は復讐で一杯である。すぐに違和感など忘れ、後に頭の中に溢れる幸福感を先取りして驕り高ぶっていたのだった。


 意気揚々と町に向かうバルデス。その後ろ姿を見てライは微笑ましそうに笑みを浮かべていた。その顔はまるで買ってもらったおもちゃを前にする子供を見守る大人のそれであった。


















































 翌日、冒険者組合にてレギアスの到着を待つアルキュス。しかし、一向に彼が姿を見せないことで心配と焦りの混じった感情が浮かび始めていた。


 そんな彼女に手を差し伸べたのが、先に姿を見せたマリアであった。


「あいつ? あいつなら昨日依頼を受けて町を離れたらしいわよ。三日はかかるだろうって受付が行ってたわ」


 何も聞かされないまま、依頼に出ていったことに不機嫌そうにしているマリア。同様にアルキュスは今日から三日ほどは訓練を受けられないことを知ってがっくりと肩を落とす。


 訓練を受けられないなら仕方がないとアルキュスは久しぶりに依頼を受けることにする。訓練ばかりでは実戦での感覚が鈍ってしまいかねない。そういう意味でこのタイミングで実践に戻ることが出来るというのはタイミングとして最適であった。


「マリアさんはどうするんですか?」


「依頼に行ってくるのね。私は冒険者になりはしたけど別にお金に困ってるわけでも強くなりたいわけでもないし、こっちで静かにのんびりやってるわ。気を付けてね」


 彼女の言葉を受けてアルキュスは小さく首を縦に振ると依頼の選定のために掲示板に向かって進歩き始めた。


 その時である。彼女の本能に根付く危機管理の力が警鐘を鳴らし始める。町を包む強固な魔力に何かを感じ取った彼女は掲示板に向かおうとする身体を返し、外に向かって走りだした。


 慌てて外に出たアルキュスは町を丸ごと包み込んでいく障壁を目の当たりにする。


「な、なにこれ……」


 彼女の後に続いて外に出てきたマリアもこの光景に困惑を隠せずにいた。当然町の人間も同じであり、町を囲む障壁に半ばパニックに陥りそうになっている。


「この町にこんな防衛の仕掛けはありません。つまりこれは……」


「敵の攻撃ってこと?」


「十中八九そうだと思います。となると仕掛けてきたのは……」


 二人がこの障壁について相談しているともう顔見知りになりつつある冒険者の男が駆け寄ってくる。


「おい大変だ! 障壁のせいで町から出られなくなってる! おまけに町の外には大量のモンスターで、この町は完全に包囲されちまってる!」


 男の言葉に再度驚愕するアルキュスたち。もはやこの町は人一人逃げられない巨大な檻と化してしまっており、この包囲に穴を開け脱出することが出来なければ、彼らはこの町で飢え死にを迎えるか、こんなことをした下手人に弄ばれるだけである。


「俺は町に残ってる冒険者を集めてくる。お前は親父さんと話して打開策を考えてくれ!」


 そういうと男は彼女らに背を向けて走り出した。彼を見送ったアルキュスは、ゾルダーグに相談してこの状況を打開するための策を考えようと集会場に戻ろうとする。


 その時、町の上空に変化が発生する。

 ここまでお読みいただきありがとうございました!


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