転移に驚くレリアーノ
「っ! ルクア! 無事か!?」
眩い光が消えたと同時に周囲の警戒もそこそこに、レリアーノがルクアの安否を確認する。
そして、いつもと変わらない姿を見つけ安堵のため息を吐いた。
「安心しなさい。あなたのルクアは傷一つ付いてないし、すぐ近くにいるわよ。それよりも周囲の警戒をしなさい。どこに魔物が居るか分からないのよ」
あまりにも慌てているレリアーノの姿に、ルクアは軽口を叩きながら警戒をしており、冒険者としてあるまじき行動だとレリアーノも周囲を見渡す。
「特になにも居ないようだな」
「そうね。転移先に魔物なんていたら最悪詰んでたでしょうけど、ここはそうじゃなかったようね」
周囲を眺めると転移する前の部屋と同じ大きさであり、色を失った魔法陣以外にはなにもなかった。
それから二人は魔法陣を調査したり壁を確認したりしたが、扉がある以外は何も変わったところはなかった。
「一方通行の魔法陣のようね。向こうからは誰も来ないだろうし、扉に魔法で施錠してから休憩しましょう」
「そうだな。村長さんからもらった果物でも出すよ」
魔法で扉が開かないようにし、強制的にセーフティーゾーンを作りだしたルクアが提案すると、レリアーノも袋から果物を取り出し、座る場所を確保すると休憩を始めた。
村長からもらった果物は乾燥している物や、蜂蜜でコーティングされている物など、多くの種類が入っていた。
「色々と入れてくれていたのね。戻ったらお礼を言わないとね」
「そうだな。飲み物も果実水だぞ」
思った以上に緊張していたらしく、果物を味わうように噛みしめ、果実水をゆっくりと飲んでいるとリラックスしていくのをレリアーノは感じていた。
「魔力も回復してきたな。特殊な効果がある果物なのか?」
「甘い物を食べると魔力が回復しやすくなるのよ。理由は分かってないけどねー」
「根拠ないのかよ!」
身体の奥から魔力が染み出してくる感じにレリアーノが果物を見つめていたが、ルクアが笑いながら理由を解説してくれたが根拠はないようであった。
しばらく喋りながら休憩をしていたレリアーノだったが、急に立ち上がると魔力を杖に集めだした。
「どうしたのよ唐突に?」
「いや、さっきの転移の時に魔力を散らしてしまったからな。もう一度集めなおさないと、この後に敵がいたら困るだろ? 俺はまだスムーズに魔力の移動が出来ないからな」
魔力を杖の魔石に集めているレリアーノを頼もしそうに眺めているルクアの姿を、レリアーノは気付いていなかった。
◇□◇□◇□
「よし! これで準備万端だ。ルクアは大丈夫か?」
「もちろん。私はいつでもいけるわよ」
ルクアの言葉にレリアーノが頷くと扉に手を掛けると、それに合わせてルクアが施錠していた魔力を開放する。
「さあ、いいわよ」
ルクアの言葉に、ゆっくりと扉を開けたレリアーノが周囲を警戒しながら進んで行くと前方に人影を見かけ小さな声で呟く。
「ルクア」
「分かっているわ。レリアーノは前衛として戦いなさい。私がサポートするから」
レリアーノの声にルクアが応えると精霊魔法を唱え始める。
「『彼の敵の前に現れて』さあ行きなさい!」
ルクアが歌う様に指示を出すと、目の前に光の玉が集まり敵であろう相手に向かって進んで行く。
突然、現れた光の玉に攻撃を始める相手を見ながらレリアーノが疾走しながら肉薄すると身体強化を発動させながら杖を横なぎに払う。
「はぁぁぁぁ! せいっ!」
杖の一撃を受け吹っ飛ばされるのを確認しながら、相手が分かったレリアーノが叫ぶ。
「木のタイプのゴーレム。数は5!」
「2体は引き受けるわ。レリアーノは残りをお願い」
ルクアの言葉に頷くと、レリアーノは目の前に迫って来ている木のゴーレムの攻撃を受け止める。
枝を鞭のようにしならせ攻撃してくる木のゴーレムだが、攻撃自体は単調であり、ユリアーヌやベルトルトから訓練を受けたレリアーノにとって簡単にさばける攻撃であった。
「そんな攻撃が当たると思うなよ!」
2体同時攻撃すらものともせず、かわし続けるレリアーノが隙を見つけては攻撃を連続で叩きこむ。
攻撃を続けていると、吹っ飛ばされた1体が体勢を整え、こっちに向かってくるのが見えた。
レリアーノは大きく飛びのくと詠唱を始めた。
「『ここに火の矢を放たん』いっけぇぇぇ」
拡張収縮スキルを発動させながら、杖に貯めこんでいた魔力を使いファイヤーアローを拡張させるレリアーノ。
従来なら一本発動するファイヤーアローが複数現れ、目の前にいる3体に向かって放たれる。
ゴーレムのため断末魔をあげる事はなかった。
だが、致命傷となる一撃であり、木のゴーレムは燃えながらもレリアーノに攻撃を続けようとしたが、数歩進むと崩れるように倒れた。
「よし! 全部倒した。後は……」
「やるじゃないレリアーノ。スキルも魔法もいい感じで使いこなせているわね。次は魔法無しで身体強化だけで戦ってみましょうか」
3体が動かないのを確認し、救援に行こうとしたレリアーノだったが、すでにルクアは2体とも木のゴーレムを倒しており、観戦モードになっているようであった。
「……。サポートするって言わなかった?」
「別に倒してしまっても問題ないでしょ? レリアーノが3体を倒したから、別に良いかなーって思っただけよ」
レリアーノのジト目にルクアは軽く笑いながら追加で召喚していた精霊に優しく微笑んだ。




