制圧完了
何とか指揮官も制圧して、ようやく楽になった、俺達は指揮官を頑丈に拘束し
指揮官を制圧したと言う事を敵兵達に良い、降伏を促した。
俺の予想通り、その行動で殆どの兵士達が降伏してくれた。
しかし、一部の兵士は大人しく降伏せずに抗ってきたが
所詮は大した数では無い為、あっさりと制圧が出来た。
「よし、じゃあ、残りは残党の確認と国民達への勧告だな」
俺達は国を周り、国民達全体に今回の戦争が終わったと言う事
今回よりこの国が俺達ミストラル王国の物になると言うことを告げるために歩く。
本来は俺達がやる仕事ではないが、兵士達の被害もそれなりに出ているのと
俺達を歩かせることにより、新しい国民達に幹部の顔を覚えて貰うためらしい。
それに残党が居た場合、その残党を被害も無く処理したいらしい
そう言う意味でも俺達は結構な適役だ、だからこうなった。
それに1番疲労してないのも俺達だからな、真っ向からの戦闘してないし。
「て言うかさ、人員は俺達だけか?」
「いいえ、別方向からも兵士達が勧告に向ってるらしいです」
「被害が出たらどうするんだ?」
「可能性はありますが、流石に私達だけで回るのは困難だと分かったんでしょうね」
「最初に気が付けよ」
「メア姫ですから、まだリオさんと同じ7才ですし」
まぁ、そうだよな、一応そう言うミスくらいは受入れてやろう。
他の判断は結構あってるし、俺達の被害ゼロ、残党の奇襲に強い
一応指揮官だから顔を覚えて貰えば便利だしな。
「あ、あなたはあの時の」
回っている最中に基地への奇襲の時に出会った家族に再び出会った。
この人達には報告してなかったっけ、でも、なんでまた家から出て来てるんだか。
「あぁ、どうもこんにちは」
「あ、はい…えっと、どうしてここに?」
「説明しますね」
俺はその家族にこの国がどうなったかと言う事を話した。
その家族の母親はこの話を聞いてショックを受けるどころかかなり喜んでいる。
それはまぁ、他の家もそうだった、殆どの家は俺達の報告を受けると
無いて喜ぶくらいに騒いだり、俺達に感謝の言葉を贈ってきたりしていた。
何処まで厳しい政治をすれば国民にここまで嫌われるのか分からんが
まぁ、今回の国王がかなりの屑だって事は分かったな。
そうじゃなけりゃ、俺達がここまで感謝されることは無いだろう。
「ありがとうございます! やっと、やっとあの地獄から解放されるんですね!」
「一体どんなことがあったのか分かりませんが、そう言う事です
一応俺達の国は悪い政治はしないので安心してください」
「はい、それはあなた達の対応を見れば分かるのですが
1つ気になることがあります
どうしてそんな国があなた達の様な小さな子供を戦場へ?」
…あぁ、当たり前すぎて少し忘れていた、そうだよな、普通じゃあり得ないか。
「それはですね、俺達の国は一時期非常に追い込まれていた時期があったんです
その時、国は苦肉の策で魔法の適性がある子供を半ば強制的に兵士にしました
そこまでしなければ滅ぶという状況だったのです」
「そんな時期が」
家族の母親は少し衝撃を受けた様で、1歩後ずさりした
理由としてはこの国の兵士達を倒せる程の国が
追い込まれていた時期があったのが驚いたのだろう。
「ですが現在は紆余曲折あり
その状況を打破して強く大きな国になったのですが
その追い込まれていた時期に兵士になっていた
俺達みたい子供は未だに兵士のままです
理由としては俺達はそれしか出来ないからです
まぁ、俺達は戻れる立場だった
その年に兵士になり、いつでも兵を止めることが出来る状況だったのですが
ですが、自分達が守りたい物を守る為に兵士のままでいます」
「守りたい物ですか? それは一体」
「俺達にとっての故郷みたいな場所ですよ
ま、そこを守る為に兵士のままでいます、な」
「うん」
「私はリオちゃんが兵士のままが良いって言うから同じ様にしただけだよ?」
「わ、私は皆が兵士が良いって言うから」
…ここは空気を読んで賛同して欲しかった、やっぱりフレイ達には難しかったか。
でも、トラは賛同してくれたな、何か一人で浮いた状況にならなくて良かった。
「ふふ、そうですか、それにあの会話で再び分かりました
あなた達は素晴らしい人だと
あなた達みたいな人が仕える国なら
きっと、とても素晴らしい国に違いありませんね」
何か、ハッキリ褒められると恥ずかしいな、でも、嬉しくもある。
「それでは、私達は家に帰ります
あ、もしもまた機会があれば、この子達と遊んであげてください
今はまだ怖がって遊べる雰囲気ではありませんが
今度会うときは元気になってると思いますから」
「分かりました、その時が来たら、一緒に遊びましょう」
母親がこちらに笑顔を見せ、小さく会釈して帰ろうと前を向き
子供達の手を引っ張った。
その間、子供達はチラリとこちらを見て
少し躊躇った後、あいてる手を俺達に向けて振ってくれた。
「バイバーイ!」
「また会おうね」
俺達も子供達に向けて手を振る
それを見た子供達は少し笑って再び前を向いて歩き出した。
しかし、感謝されるというのは気分が良いな。
さて、それじゃ、さっさと回って勧告しに行くか。
「よし、まぁ、こんな感じかな」
あの家族と別れた後、俺達は可能な限り速く国全体を周り、勧告を完了させた。
流石に結構疲れてたし、少しでも早く帰りたかったからな。
「いやぁ、頑張ったね!」
「だな、やっぱり一軒一軒回るのは面倒だ、スピーカーでもあれば良いのに」
それさえあれば一発だからな、でも、そんな便利な道具はこの世界には無い。
精々この世界で出来る伝達は大声による伝達か
直接会っての伝達か、手紙による伝達かだろう。
全く不便だよな、手紙だって1枚1枚書かないと行けないしさ。
コピー機能とかがどれだけ優秀だったかよく分かるな。
「すぴーかー? うーん、まぁ、よく分からないけど、まぁいいや
速くお城に戻って休もうよ、少し眠たくなって来ちゃったし」
そう言えばそろそろ日も落ちてくる時間か、じゃ、さっさと帰ろう。
「今日の晩ご飯は何かな? 楽しみだね!」
「制圧した記念とかで豪華な料理が出そうだよな」
「楽しみだね、豪華な料理、でも、殆どフレイが食べるんだろうけど」
「み、皆の分は残すよ、私はそこまで食いしん坊じゃ」
「ご飯を何杯もおかわりするのに?」
「美味しいからね! と言うかさー、ウィンちゃんは少食すぎるよ」
「あれでも頑張って食べてるの」
そんないつも通りの会話、戦争も終わり
一時的だとは言え安息できる時間である筈だった。
しかし、俺達の背後からあり得ないほどの爆音が響いた!
「なん! う、ぐあわぁ!」
「きゃぁー!」
背後から凄まじい爆音が響き渡り
その時の爆風か何かで俺は訳が分からぬうちに吹き飛ばされる
何度も何度も体を打ち付けられ、最後には背後にあった何かに頭を強くぶつける。
「……ぅ」
頭を強く撃った衝撃か、ゆっくりと俺の視界は暗く鳴り始めた。
意識が少しずつ薄れ、視界は暗くなってるはずなのに目の前は妙に明るかった。
だが、その明かりがなんなのかを認識することも出来ず…俺の視界は暗闇に包まれる。
さん…!
さん・・・!
オさん!
「リオさん!」
何度も断続的に聞えてくる聞き慣れた声で
俺の真っ暗になった視界が僅かに光りを取り戻した。
「リオさん! 良かった! い、意識があるんですね!?
死んで無いんですね!?」
「……あ、アルル、お前、
ぼ、ボロボロだぞ…顔が泥まみれで…腕も血まみれ…だぞ」
「私の事は良いんです! あ、シルバーさん!
リオさん何とか意識が戻りました!」
「本当ですの!? 無事で良かったですわ! こっちは意識を戻しませんが
トラさんの状態を確認したところ、命に別状はありませんわ! 危険なのは…」
アルルが俺の目の前から移動したとき、俺は…見たくもない物を見てしまった。
……俺の目の前に映ったのは真っ赤に燃えさかる街だった。
「……」
「熱い…」
そんな小さな声が聞えてくると、炎に包まれた人間が炎の中から姿を現し
地面に転がり火を消すために激しくもがき苦しんだ後に、動かなくなった。
他にも…誰の物か分からない、赤い液体…
その中心にはサッカーボールほどの球体が転がっている。
距離もあり、それが何か認識することは出来ない…でも、それで良い
知りたくない、理解したくない! あそこに何が転がってるのかなんか
知りたく…無い。
「メルトさん! そっちは大丈夫ですか!?」
「大丈夫、フランもマルも何とか生きてる! 傷もまだ浅い!」
「マナさん! そっちは!?」
「フレイさんもメルさんも無事です、傷もあさ、うぐ、う、つ…うぅ」
「あ、足大丈夫ですか!?」
「だ、大丈夫です、これ位ならウィングさんとリオさんの怪我と比べれば」
……何でさ、何でなんだよ! どうしてだよ!
何で! あの人達が何したってんだよ!?
ただ必死に生きようとしただけじゃ無いか!
幸せを噛みしめようとしただけじゃ無いか!
あの家族だってそうだ! まだ子供も! なのに何で!? 何でなんだよ!
「リオさん? 泣いて…」
「なんで…何でなんだよ…俺が悪いのか?
俺が、あそこを制圧しようって言ったから…だから!」
もう何がどうなっているか分からず、俺はもう自分を責めるしか無かった。
俺のせいでこんな事になった
俺が変な事をしたからこんな事になった! こんな! こんな!
「リオさん!」
「!」
俺が少し自棄になっていると、不意に俺はアルルに抱きしめられた。
不意の事で思考も追い付かず、俺は完全に固まってしまう。
「違います、リオさんのせいじゃありません、私達のせいじゃありません…」
「でも、でも!」
「落ち着いてください、自分を責めないで…あなたは何一つ悪くない…」
俺の肩に不意に生暖かい液体が当たった…これはきっと涙だ。
アルルは俺を抱きしめながら泣いてる…こんな、こんな不意打ちを食らったら
もう…何も言えないじゃ無いか…クソ! どうして、こんな事になったんだ!?
何が原因なんだ!? 何か、何か原因があったはずだ!
何も無かったのに大爆発が起るわけが無い! 絶対に何かある!
「そ、そうだ! アルル! あいつらは!? あいつらはどうなった!?
無事なのか!? 生きてるのか!? おい!」
「…はい、フレイさん、トラさん、マルさん、メルさん、フランさんは大丈夫です
少し酷い怪我ですが、命に別状はありません」
「シルバー達は?」
「マナさんが足を少々でも、大丈夫です」
「そうか、じゃあ…その…うぃ、ウィングは? 何でさっき何も」
アルルが無言のままで指を指した場所には足から
大量の血を流してるウィングの姿があった!
「ウィング! あぐぁ!」
な、何だ? か、体を動かそうとしたら、は、腹に激痛が…
「リオさん! う、動かないでください!」
「なん…う、つ、つぅ」
恐る恐る自分の腹に目をやって
俺は初めて自分がどういう状況に置かれているか理解した。
俺の腹には先が折れた木の枝の根元が刺り、ダラダラと血が流れている。
それだけでもかなりヤバいが、それだけじゃ無い、左足も切ったようで
ここからも沢山の血が流れている…
「なん…あ、んな」
動揺し、傷に触れようとしたが、何故か左腕が動かない…
どうして、う、動かない…?
「何…だよ、これ…どうして」
「だ、大丈夫です! まだ、絶対に助かりますから!
ま、待っててくださいね、今すぐ手当をします!」
アルルがいそいそと医療道具を袋から取りだそうとしていると
アルルの後ろに黒い影がたっている。
「…死ね」
ざ、残党!? まさか、森に潜んで…ヤバい! 誰もこいつに気が付いてない!
声を出そうにも激痛で大声は出せない! 当然、同じ理由で魔法も使えない!
このままじゃ…俺達2人は…殺される!
「あん!」
「く!」
俺達2人に向けて剣が振り下ろされるギリギリのタイミングで
小さな子犬が残党に飛びついた。
不意に飛びつかれたからなのか、その残党は動揺し
更にバランスを崩して剣を空振りした。
「この犬っころ!」
「きゃぅん!」
バランスを取り戻した残党は飛びついてきた犬を引き剥がし、俺の方に投げ捨てた。
子犬はその時の衝撃で怪我をしたようで、グッタリしてる!
「死ね!」
「り、リオさん!」
残党に気が付いたアルルが俺を庇うために俺の前で両手を広げて立った。
「アルル…!」
「はぁ!」
「か…は…」
残党が剣を振り上げ、斬りかかろうとしてすぐに森から人影が現われ
その残党を斬り付け、残党は血を吹き出しながらその場に倒れた。
「大丈夫!?」
「……は、ハルさん?」
「って! な、何よこの状況!? あなた達どうしてそんな! それに街が!
あ! ま、マル! マル! 生きてるの!?」
「マルさんは大丈夫です、怪我はしてますが、命に別状はありません」
「そ、そう、じゃあ、今はリオね、酷い怪我よ
急いで手当てしないの死ぬわ! リンダ!」
「はい! 医療道具は持ってます! でも、この傷は!」
「何でも良いから急いで手当してください!
その後すぐに城の方まで! って、り、リオさん!?」
……あぁ、クソ…ヤバい、また意識が…クソ、なんでこんな…
「くぅ…ん」
ゆっくりと薄れていく意識の中、俺の近くで倒れている子犬が僅かに動いた。
それを見て、俺は恐怖してか…はたまた安心してか…
俺の視界は再び真っ暗らにり、意識を失った。




