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トロピカル地方の現状

長い間馬車に揺られトロピカル地方に到着したが、

トロピカル地方は戦場になっているにしては大分静かだった。

兵士の雄叫びなんて聞えないし、剣と剣が打ち合う音も聞えない。

もしかして、まだ敵兵が来ていないのか? 良くは分からないが

警戒をしながら俺達はフレイ達が守っているトロピカル地方の小さな城に向った。


「メア姫様!? り、リオ様、アルル様、どういうつもりですか!?」


城の門番をやっている兵士がメア姫を見るなり激しく動揺し、俺達に説明を求めた。

まぁ、普通は驚くだろうな、戦場になるかも知れない場所に姫君を連れてきてるわけだし。


「あーっと、実はメア姫様がどうしても来たいと言うからな、それに国王様の許可も得ているらしい」

「さ、左様ですか…いえ、しかし、ここは最前線ですよ?」

「それでも構いませんわ、私はお姉様の助けにならなくてはなりませんの」


一緒にこの地方を管理している間に随分とまぁ姉に懐いちゃって。

向こうにいた時はリサ姫に対して結構辛辣に当たったいたのに

今じゃ、自分の命を危険に晒してでも姉の為に働きたいって言ってるんだからよ。


「まぁ、そう言う事だ、止めても聞かなかったから」

「左様ですか…では、城の警備を更に強くしなければなりませんね」

「あぁ、頼むぞ」

「お任せください」


しかし、何でトロピカル地方の兵士は俺に対してこんなに丁寧なんだか。

何というか、もうここの指揮官は俺みたいになってるし。

何かと兵士が相談を持ちかけてくるしさ。


「あーっと、それで今敵兵はどこら辺だ? 近い割には静かだが」

「はい、現状はトロピカル地方の南部前哨基地で戦闘となっております

 先ほどあった伝令によれば、今の所戦況は我々に有利だと

 推測では敵兵士達も今回の戦いは様子見だと思われます」


まぁ、最初に全力で来るわけ無いか、向こうも様子を見てこちらの情報を探りたいだろうし。

ま、それなら俺としても情報収集はやりやすいから良いんだがな。

向こうが様子見なら結構気楽に色々と話しているだろうし。


「よし、じゃあ俺達は前線の方に行って情報を集めてくる

 お前はメア姫様をリサ姫様が休んでいる部屋に案内した後

 フレイ達にこの場を守っていてくれと伝えてくれ」

「え? 戦場に向うのは危険では?」

「情報を集めないといけない、その役は俺が適任だ

 それに前線に出るわけじゃ無いから問題ない」

「はぁ、分かりました…ですが、その、無理はなさらぬよう

 もし、リオ様に何かあれば、我々は」

「安心してください、リオさんの御身はこのリオ様専属の騎士! アルルがお守りします!」

「…少し不安ですが、お願いしますね、アルル様」


まさかこの兵士にも少し不安に思われているとは、と言うかこんな意見がアルルに対する総評かもな。


「ま、一応頼りにしとく」

「お任せください! この命を賭してリオさんをお守りします!

 ですが、死んじゃったら守れないので死ない様に頑張ります」


確かに死んだら守れないからな、誰かを守りたいなら自分が死なない事を考えないとな。


「そうだな、ま、そんな事は良いから、さっさと向うぞ」

「はい!」


俺とアルルは急いで戦闘が行なわれているという前哨基地の方まで移動した。

そこではさっきまでの平穏そうな状況とは違い、激しい雄叫びと剣と剣がぶつかり合う音が響き渡る。


「リオ様! 何故こちらに!」


前哨基地に到着すると、出会う兵士達が全員驚いている。


「どいつもこいつも何だよ、前線に俺がいたら迷惑なのか?」

「いえ、前線にリオ様がおられると兵士達の士気が向上するので喜ばしいのですが

 リオ様にもしもの事があったら、私達は」

「まぁ、心配してくれるのはありがたいが、安心してくれ前線にはでない

 俺は支援系の魔法を使うし、今回の主な目的は情報収集だ」

「そうなのですか、安心しました」


彼は一安心して安堵のため息をついた、何でこんなに安心してるんだか。


「人望ありますね、リオさんは」

「何かしたっけ?」

「あのですね、この辺りの兵士の大半はリオさんが救った国民から出て来た兵士です

 彼らにとって、リオさんは掛け替えのない恩人であり、英雄です

 そりゃあ、人望が出て来ないはずがありませんよ」


あぁ、だからここら辺の兵士達は俺達小さな戦士達に対してあんなに丁寧なのか。

アルルの説明でようやく納得することが出来た。


「なる程な、そう言う事か」

「はい、小さな戦士達は我々の恩人です、更にリオ様は我々を救うために最も活躍したと聞きました

 ですので、リオ様は我々にとって大恩人であり、掛け替えのないお方なのです」

「て、照れるな…でもまぁ、そう言う話は後だ、後、今は敵を押し返すことを優先するぞ

 お前らの故郷を全力で守りきれ、良いな?」

「は! この命を賭け! 全力で守り通します!」

「良い心がけだが命は捨てるなよ? 命が無けりゃ何も出来ないからな」

「はい! 肝に銘じておきます!」


よし、じゃ、俺は情報収集を行なうとするか。

とりあえずこの前哨基地の1番の高台に向うとするか。

周りは森なのが難点だが、木の葉の隙間から敵兵を捉える事は出来るはずだ。


「ここが1番の高台か?」

「はい、それなりの高さはあります」


確かに結構高いな、でも、やっぱ木が多いと隙間を見付けるのも大変だ。

でもまぁ、何とかみつけて、情報収集をしないといけない。

俺は銃を構えて、木々の隙間から敵兵士を見付ける為に探してみた。


「…お、あった」


何とか見付けることが出来たぞ、この隙間からなら敵兵の声が聞える。


「…だな」

「あぁ、予想以上に防御が硬い…兵士達の結束も大したもんだ」


どうやら敵兵達から見ても、あいつらの結束は固いみたいだ。

相手側は結構逃げ腰だし、このままならあいつらがいってたとおり、倒すことは出来るだろう。


「どうする? 撤退するか?」

「それが1番だが…下がれば王に」

「……そうだったな、もはや俺達には死ぬしか選択肢が無いか」


おいおい、撤退したら王に殺されるって、もしかしてこの国も独裁国家なのか?

やっぱりそう言う国の方が多いのか、こんな状況じゃ。


「クソ、なんで前哨部隊の俺達が撤退したら殺されるんだ

 俺達の役目は本来情報を集めるとか、そう言う仕事だろうが」

「王の方針だ、情報は大して意味を成さない…」

「だったら! 小隊じゃ無くて大隊ぶっ込めば良いじゃ無いか!」

「俺に当たるなよ、俺だって理不尽に感じてるんだ!」

「…クソ、兵力を失っても良いってのかよ」

「そうだろうな、あの部隊がいれば俺達なんてカスだろう」

「…クソ! クソ! 何で…あんな部隊が出来ちまったんだよ!」


あんな部隊? どんな部隊かは分からないが、リ・アース国には

切り札になる部隊があるって事か、それもあいつらの口振りから最近出来た部隊。

昔からある部隊なら、なんであんな部隊が出来ちまった何ていわないだろう。


「言うな、皆そう思ってる、だが、その部隊のお陰でリ・アース国が大きくなれたんだ」

「クソ…」

「行くぞ、死にに行く時間だ」

「畜生が」


そんな会話の後、兵士達はこちらに移動したため、射線から姿を消した。

ふーむ、大した情報は手に入らなかったが、今はリ・アース国に切り札となる部隊があると

分かっただけで十分な収獲か、ま、これだけじゃ、何か微妙だし探すか。


「…うーん」

「リオさん、何か良い情報は拾えましたか?」

「まぁ、1つだけだな、後は全員死にに行く様な面のままで何も喋りゃしない」

「勝算が薄いと感じているなら、逃げれば良いと思うんですけど」

「逃げれないみたいだな、リ・アース国の国王はどうやら独裁者らしい

 撤退したら殺すと言ってるようだ」

「じゃあ、何故こんな小部隊で? どんな心情をして居るのでしょうか」

「さぁな、自己中の王様の気持ちなんぞ分かるわけが無い」


そもそも、国王とやらの気持ちすら分からないっていうのに

そこに自己中が追加されてる王の気持ちなんて更に分かりゃしない。


「そうですか、どうやら向こうはかなり危険な国らしいですね」

「だな、潜入捜査が余計やり難くなった」

「所で1つだけ得たという情報は何ですか? 私、気になります」

「あぁ、リ・アース国には切り札となる部隊がいるらしい

 その部隊の詳細な情報は得られなかったが、厄介そうなのがいるのは確かだ

 それに、その部隊の活躍であの国は大きくなってるらしく、優秀なのは間違いない」

「エリート部隊という奴ですか、1つの戦況を変えるほどの…間違いなく強力ですね」

「あぁ、だが、逆を言えばその部隊さえ崩せば敵の戦力をかなり弱体化させることが出来るって事だ」


ま、その部隊が何処にいるか、どんな部隊なのかとか、そう言う情報が揃ってない以上

潰しに行くとか、そんな無謀な選択は出来ないがな。


「そうですね、頑張って倒す方法を考えましょう」

「いや、まずは見付けることだろう、ま、何にせよ、今はこの戦闘を制することだが」

「その心配は無いと思いますよ」


アルルの言うとおり、今回の前哨戦はこちらの圧勝で勝負が着いた。

向こうの部隊は誰1人撤退等せず、ひたすらに攻めてきて

俺が手伝わなくても、制するのはかなり容易に出来た。

被害も少なく、僅か数名の負傷者程度で済んでいる。

普通ならあり得ないだろう、だが、今回は敵の戦意が最初から最後まで無かったこと

こちらの戦意が異常な程に高揚して居たことで、この程度の被害で収まった。


「被害は実質殆どありませんでしたわね、良く頑張ってくれました」

「はは! ありがたき幸せ!」

「では、あなたは前哨基地に戻り、ゆっくりと休みを取ってください」

「は!」


報告をしに来た兵士が部屋から出ていった。


「はぁ、疲れたわ……」


報告を聞き終わったリサ姫は、すぐに隣に立っていた俺に抱きついてきた。


「リサ姫、その、ですね、俺に抱きつかないでくれませんか?」

「良いじゃないの、減るもんじゃないんだから」

「いや、減ります…時間とか、と言うか、メア姫に抱きつけば良いじゃ無いですか、姉妹なんですから」

「だって、リサったら抱きつこうとするとすぐに顔を真っ赤にして逃げちゃうのよ

 何も怒ることないでしょうに…」


それ、怒ってるんじゃなくて恥ずかしがってるだけなんじゃないか?


「それ、多分恥ずかしがってるだけですから、ガンガン行けば多分抱きしめさせてくれますので

 さっさと会いに行きやがってください」

「た、たまに変な丁寧口調よね、リオ…まぁ良いわ、そう言うなら行ってくるわね」


はぁ、ようやく解放された。


「リオさん! 抱きしめさせてください!」

「殺すぞ?」

「お願いします! 1時間! 1時間で良いんで!」

「お前…ふざけてるのか?」

「お願いします! リオさん! 頑張った私に、ご褒美を!」

「何もしてないだろうが」

「…もう、何でですか、ガンガン行けば抱きしめさせてくれると思ったのに」

「どうしてそう思った?」

「リオさんも、私が抱きしめようとすると顔真っ赤にして殴ってくるじゃないですか

 だから、メア姫様みたいに恥ずかしがってるのかなって」

「勘違いも甚だし、恥ずかしがってるなら逃げるが、キレてるなら殴る

 つまりそう言う事だ、ほら、さっさと帰れ、俺は自分の部屋に戻って報告書を書くんだ」

「うぅ…いつか抱きしめます! そして、結婚しましょうと耳元で囁くのです!」

「そしたら死ねとお前の耳元で呟いた後、耳を噛みきる」

「怖いですって!」

「黙れ」


はぁ、どうしてこんな…まぁ、良いか、さっさと部屋に帰って報告書を書かないとな。

敵に切り札となる部隊がいると言う情報は結構重要だし、速く書かないと駄目だし。

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