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次のステップ

かなりの長期戦になった今回の戦い、その戦いに終止符が打たれてしばらくの時間が経った。

結構な重症になっていた俺の怪我は治り、そろそろ動くことが出来るほどになった。


「ふぅ」


俺は怪我をしていた自分の場所を軽く見て、状態を確認した。

傷口は殆ど治り、骨も治っている、動かすことも容易だった。

よしよし、これなら問題なく動くことが出来るだろう。


「リオさん、退院おめでとうございます」

「あぁ、結構長い間何も出来なかったからな、これで動き回ることも出来るだろう」

「そうですね! これで、リオさんを抱きしめてほくほく出来ますね!」


あの変態女が俺の方に向って全力疾走してきた。


「ウザったいんだよ!」

「あふぁ!」


俺はイラッときて突進してきたアルルの足を思いっきり蹴った。

するとバランスを崩したアルルが顔面から地面に着地した。

ついでにアルルの背中の上に座り、ウィンチェスターを構えた。


「少しは自重しような?」

「あぁ、この感じ久し振りですね」

「・・・・相変わらず自重しないな、この馬鹿」

「その方が私らしいのです」


はぁ、もう良いか、とりあえずこいつの上に乗るのを止めるか。

何か下手したら拘束されそうだし。


「で、今日は何の用だ?」

「いやぁ、退院祝いですよ」

「それだけか? そんな風には見えないけどな」

「流石堪が鋭い、実は伝えないと行けないことがありましてね」


伝えたいことか、まぁ悪い事じゃ無さそうだよな。

もしそんなんなら、こんなに楽しそうに笑っちゃいないだろうし

あんな変態行動もしないだろう、こいつは真剣な時は真剣だからな。

・・・・場合によっては真剣な時だろうが暴走するが。


「実はですね、このオーム国が私達ミストラル王国の統治下になりました」

「そうなのか? 国民とかが反発しそうだが」

「大丈夫ですよ、ハルさん達が全面協力してくれています

 前までは敵対していたけど、これからは友好関係を築きたいそうです」


友好関係か、と言っても普通はミストラル国の方が反発しそうだがな。

仮にもあの国をあそこまで追い込んだのはオーム国だからな。


「俺が心配しているのはミストラル国の国民だ、俺達の国を追い込んだのはオーム国だし

 交戦数も多い、オーム国との戦闘でも死傷者は多数だぞ」

「はい、そこが心配なところです、オーム国の兵士と国民達は問題ないのですが

 ミストラル国の兵士や国民達からは反発があります

 交友関係なんてくだらない、滅ぼせと言う声があるのも事実なのですよ」


はぁ、優しい国が聞いて呆れる、粉微塵も優しくは無いじゃないか。

だが、ごもっともな反応なのは確かだ、オーム国が攻めてこなければ

ミストラル国の強制徴兵の話しもなかっただろう。

その話が出たせいで何人もの未来ある子供が死んだ。


「・・・・お前はどうなんだ? アルル」

「勿論、私はオーム国との友好関係を築くことに賛成ですよ」

「どうして? 俺達の国を追い込んだのはそいつらだ、そいつらがいなければ

 俺達はもっと裕福な生活が出来た筈だ・・・・兵士になんかになることも無かっただろう

 お前も好きな彼氏とかが出来て普通の女として生きていけたかも知れない、だが奴らがそれを壊した」

「確かにそうですね、でも、くだらない事ですよ、そんなの」

「どうして?」

「私達が生きてるのは今です、変えることが出来るのは未来だけ

 それに、ここで復讐何かしてもオーム国が私達を恨むだけ

 くだらないじゃ無いですか、ここは戦争が多い世界です

 この世界で国が生き残る最善の手は敵を複数作らないで味方を増やすことですよ

 だったら、敵も作らず、味方を作れる友好関係を築くのが間違いありません」


・・・・そうか、こいつはたまにこんな風に理に叶ったことを言うんだったな。

俺なんかは感情的にしか考えてなかった、俺としても友好関係を築くのは正しいと思ってる。

理由は単純だ、俺はオーム国の人間を知っているから、ただそれだけだ。


「そうか、お前はたまにそう言う真剣なことを言うよな」

「そうですよ、それにリオさん達と会えたのもオーム国のお陰です」

「その代わり、何人もの人が死んだ」

「戦争が全ての世界で犠牲が出ないわけがありませんよ

 いや、仮に戦争が無い世界だろうとそれは変りません

 そもそも、そんな風に犠牲を嘆き続けてたら私達は一生笑えません」


止めて欲しいな、そう言う事を言うのは・・・・こいつらしくも無い。

それに、完全なる正論だから反論することも出来ない。


「私は私の周りの幸福に笑い、周りの不幸に泣きます、そうやって来ましたから」

「そうかい」

「まぁ、こんな暗い話は後です、今はオーム国とミストラル国を繋げるために頑張りましょう」

「だな、そうしないと駄目か」


それから、3ヶ月ほどの時間が経った、今回のオーム国とミストラル国の交友関係の話は

レギンス軍団長を筆頭に必死の説得で反発する国民の数は大きく減った。

その結果オーム国とミストラル国は永劫の友好関係を宣言。

オーム国の領地はミストラル国の領地となった。

その地区の管理はハルさん達レジスタンスの主要メンバーが行なう事となる。


「決議されましたね、交友関係」

「そうだな、これで一安心だ」


俺はその交友関係を繋ぐために結構な書状を集める事に中々苦労した。

まぁ、その苦労が報われたようで良かったと思っている。

努力が報われないのが1番辛いからな、でも、報われたときの達成感は凄い物がある

その苦労をする理由が盛大であればあるほどにな。


「ただ、細かい調整などを完全に行なうまでは時間が掛るそうです」

「2つの国を左右する程の規模だしな、仕方ないだろう」


これは結構な時間が掛ることだろう、最終決定が遅れるのはよくあることだ。


「さて、後の心配はメルとフランだな」


メルとフランは未だに昏睡状態だった。

3ヶ月も時間が経ったというのにな、それだけ魔力枯渇は深刻だったのだろう。

とりあえず俺達は2人の様子を確認するために入院している病院に移動した。


「それにしても、フランの身体強化が自己暗示だって分かったときは驚いたな」


俺はフランのボロボロになっている腕を見てつい口に出た。


「そうですね、自己暗示で極限を超えての身体強化、よく体と魔力が持ったと思いますよ」


普通なら体はもっと早く壊れていただろうが、限界が来たのは俺の一撃を食らったときだ。

いや、そもそも体の痛みで動けなくなりそうだよな。

だが、並々ならぬ執着や目的意識でそれを押さえつけていたと推測できる。

異常な程の執念、やっぱり暴走する人間は怖い物だ。


「そうだな、あいつの根性がもう少し別の方向に向っていればこんな事にならなかっただろうに」

「そうですね、確かにあの執念があれは大概の事が出来たはずですよね」


まぁ、回復してくれれば良いがな、色々と知りたいしな。


「とにかく2人が目覚めれば良いですね」」

「だな」

「それじゃあ、リオさんもしばらく休みましょうね」

「いや、俺は別に訓練しても」

「無理はよくありませんよ? 今まで書状集めで大変だったんですからね」

「はぁ、分かったよ」


とりあえず俺はアルルに言われるがままに今日は休む事にした。


「それじゃあ、こっちに来て下さい、リオさん用の部屋がありますから案内します」

「は? 俺の部屋があるのか?」

「はい、長期間の滞在になりそうだからって部屋があります」


長期間の滞在になるのか。


「はぁ、長期間の滞在ねぇ、前戻ったときにそのままでいれば良かったな」

「どちらにせよここに呼ばれてたでしょうけどね」

「何でだ?」

「ここは今からミストラル王国の最前線になるでしょうからね」

「は!?」


え? 何? 戦いって終わったんじゃ無いのか? 


「何故驚いているのですか?」

「いや、もう戦争は終わった物だと」

「はい、オーム国とミストラル王国とディーアス国との戦争は終わりましたよ」

「じゃあ、何でだ?」

「・・・・私達は戦争に勝ち、広い国土を得て今までよりも裕福な生活が出来るでしょう

 ですが皮肉なことに国土が広がったことで他国の標的にされることでしょう」


折角長い戦争が終わったって言うのに、まだこれから戦争に巻込まれるとは。

はぁ、勝利したとしても待っているのは新しい戦争か、嫌な世界だ。


「ですから、国民の裕福な暮らしと平和な暮らしを守るには戦うしか無い

 ですが、しばらくは大丈夫だと思います、向こうも私達の未知数の戦力相手に

 突っ込むような馬鹿では無いでしょうから」

「疲弊したところを叩くだろ、普通は」

「それならもうすでに動いてますよ、3ヶ月もあったんですから」


確かにそうだな、3ヶ月間に攻めてきた国は無い、ならしばらくは大丈夫かも知れないな。


「ですので、しばらくは休めますよ」

「そうか」

「と、言う訳で休みましょう」

「だな・・・・は?」


部屋に戻るという意味だと思ったのだが、何故かアルルは俺を部屋とは違う方向に引っ張った。


「おい、部屋は反対方向だぞ?」

「知ってますよ、でもほらお風呂に入りましょうよ」

「あ!? 何だと!?」

「いやぁ、オーム国には温泉という変った物があるんですよ」

「温泉が変った物なのか?」


そう言えばミストラル王国には温泉なんて無かったような気がする。

まぁ、国王達の風呂場がまるで温泉のような感じだったのは覚えているが

普通に国とかにはそう言う施設はなかった、領土が無い状態だったし当然なのかもしれない。


「いやぁ、楽しみですね! 何でも色んな人と同じお風呂に入る施設らしいですよ!」

「あぁ、そうだな」

「緊張するのも分かります、でも安心して下さい! フレイさん達もいます!」

「は? あいつらもいるのか?」

「勿論ですよ! フレイさん達も甘えん坊ですからね」

「へぇ、何でまた、城の近くの方が楽だろうに」

「馬鹿ですね、リオさんと一緒に居たいからに決まってるじゃないですか

 フレイさん達は甘えん坊ですからね」

「そ、そうか、まぁ、煩わしくなければ良いが」


そうか、少しだけ嬉しいかも知れないな、1人でここにいるってのも飽きそうだし。


「もう、リオさんも顔を赤くしちゃって、可愛いんだから! もう!」

「うっさい!」

「痛た! つねらないで! て言うかそ、のつねり方凄くいたいです!」

「力で勝てないからな、だったら弱い力で痛めつける方法を考えた、それがこれだ」

「酷いなぁ、あ、さてさて、見えてきましたよ! 温泉です!」


アルルが指差したところにはふるさと、という名前の温泉というか、宿っぽい建物があった。

何だろうか、ここだけ妙に和風だ・・・・何か、懐かしい気分だ。


「温泉ですよ! ふふ、裸の付合い、ふふふ」

「・・・・・・」


アルルの妙に興奮した声を聞いて、俺はすぐに寒気がした。

あぁ、これは大丈夫なのか? 大丈夫だよな? ここは立ち去るべきか?

いや、しかし折角の温泉だぞ、し、しし、し、しかも今の俺はお、女の子だぞ

つ、つまり、そう言う事だよな、おし、落ち着け俺、落ち着くんだ

俺は紳士だ、前はあんな事になったが、今回は堪えてみせる!

例えび、美人の女の人が温泉に居ようと! ここで引いたら男が廃る!

だが・・・・後ろから恐ろしい視線を感じる、間違いなく奴の視線だ。

だが、このプレッシャーに勝ち、俺は今度こそ男になる!

俺はその覚悟を決め、ゆっくりと温泉に向って歩き始めた。

ここからが本番だ、戦争とかと同じくらいの勝負、俺は負けない!

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