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1人で勝てないのなら

指先が痛い、指は殆ど動かない、更に状況は最悪。

戦闘が出来るのは実質アルルとシルバーのみ。

無理をすればメルも戦えるかも知れないが、もうあいつは限界だ。

さっき魔道兵を召喚したときに、魔力はスッカラカンになっている筈だろう。

そんな状態で新しく魔道兵を出せば・・・・こいつは死ぬ可能性もある。


「死ね! 死ね! 死ね!」

「冗談きついですわ! 何でこんなに素早いのですか!?」

「・・・・お姉ちゃん、すごい」

「ふふふ、ふふふ!」

「なんでよそ見しながらなのに私と互角なんですかね、ウィングさんも大概ヤバいですよ」


2人は結構追い込まれている、場数は圧倒的にアルル達の方が上だとしても

それだけで魔法が使えるかどうかの有無を覆せる訳がない。

ウィングは攻撃に一切の隙がない、攻撃、武器変化、攻撃を素早く的確に行なっている。

フランは不自然な身体強化に何故か相手の攻撃を先読みしているかのような動きだ。

それはウィングも同じだ。

更には連係プレーも2人よりも圧倒的に上手い

まるで右手と左手のような的確な連携、それにウィングがよそ見しながらも正面を見ているときと

同じ様な動きで予想をしている、この事から分かるのはフランはウィングを

完璧に操っていると言うこと、なら実質2人と戦っているのはフラン1人と言う事になる。

それならこっちが有利なはずなのだが、フランの異常な先読みがある

この能力と合わされば確実にフラン側が有利だろう。


「これは・・・・満足に時間を稼ぐことも出来そうにありませんわね」

「そうですね、でもやらないと行けません・・・・勝つためには!」


だが、2人の必死の抵抗も殆ど意味をなさない。

ゆっくりと確実に2人は息切れを始めているし、怪我も酷くなってきている。

このままだとあいつらは負ける・・・・あいつらの頼みの綱である俺もまだ回復していない。

何とか出血が少し落ち着いてきているだけだが、止まってはいない。

こんな状況で銃を構えたとしても、満足に狙いを定めることも出来ないだろう。

最悪の状況はゆっくりと確実に悪くなっている・・・・このままだと待っているのは絶望だけ。


「・・・・・・」


俺が焦りながら周りを見渡してみると、マルの様子がおかしいのに気が付いた。

酷い汗で、動くことをしていない・・・・呼吸も荒いし。


「マル、どうしたんだ?」

「・・・・・・敵が」


その言葉を聞いて、俺も急いで周りを確認した・・・・マルの魔法の効果で位置が分かるのだが

確かにこっちに凄い速度で向ってきているポインターがある。

この速度・・・・どう考えても・・・・あいつだ。


「・・・・この状況で・・・・フレイが来るの!?」

「畜生、不味い!」


このまま時間を掛けるわけにはいかない! 俺が出来るのはフレイを倒すことだけ!

指がどうなろうと知ったこっちゃない! 当たらなければその時だ!

俺は震える手を無理矢理押さえつけ、その場にウィンチェスターを召喚した。

だが、痛みのせいで照準はぶれている。


「どうする」


俺の狙撃は1度フランに回避されている、あいつの先読みだとここで撃っても外すかも知れない

だったら、ウィングを狙うべきか? いや、ウィングを狙っても避けられる可能性が高い

そもそも、ここでウィングを倒しきったとしても、フレイが来ているんだ、結局勝てない。


「・・・・・・・」


冷静になろうとしているのだが、俺は焦りを隠すことが出来ない。

当てることが出来れば勝てる、だが、外せば死ぬ・・・・そもそも相手は動きを予想する化け物だ

完全に照準を合わせて引き金を引いたとしても・・・・避けられてしまうんじゃないか?

そもそも、こんなにブレているのに撃ち抜くことが出来るのか?


「リオ!」

「は!」


俺が焦っていると、トラの声で目が覚めた。

そして、正面にはフランが接近しているのが分かる。

俺が動揺していることを察したとでも言うのか!? 顔には出していないつもりだったのに!


「やっぱりあなたから倒さないと、ねぇ、リオ?」

「く!」

「狙撃なんてさせない」


・・・・は? 何でこいつは俺の攻撃が狙撃だと分かった?

そもそも、こいつが狙撃なんて単語をどうして知っているんだ?

この世界には弓矢があっても、銃火器なんてないぞ?

何で、なんでこいつはどうして!?


「それは、秘密」

「-!」


口に出してない! 読まれた? そうか、そうだったのか!

こいつの異常な先読みの理由・・・・こいつ、俺達の心を読んでたのか!?

そうだった、確かあの時も声が聞えた・・・・つまり、声が聞えていた地点で俺達はこいつの術中に!


「頭が良いね、だからあなたは邪魔なの」

「うわぁぁぁぁ!」

「は?」


俺の後ろから、大きな腕が伸びてきた・・・・その腕は機械だった。

つまり・・・・この攻撃をしてきたのは、メル!


「メル・・・・」


心を読んでいるはずのフランに不意打ちが出来るなんて、どういうことだ?

こいつなら、メルの攻撃を感知して回避することが出来た筈だ。

でも、思いっきり食らった・・・・いや、それは後だ!


「メル! お前! その状態で魔法を使ったら!」

「理解してる、私の体だから分かる、危険だって事くらい!

 でも・・・・フランは私の友達だから! 私が何とかしないと行けないんだ!」

「メル・・・・何であなたまで・・・・ワタシヲ」

「フランちゃん・・・・私はあなたを助ける、例えそれであなたを傷付けたとしても!」


フランはメルに思いっきり殴られた勢いで、奥の壁にまで吹き飛ばされた。


「・・・・・・」

「はぁ、はぁ・・・・あ」

「メルちゃん!」

「凄い熱! 魔法を使いすぎたんだ! 急いで何とかしないと!」

「・・・・許さない、ワタシヲウラギッタ、そうだよ、皆同じなんだ

 大人とか、子供とか関係ないんだ・・・・そうだよ、そうなんだよ

 でも、大丈夫だよ、小さい子をゼンブ私の物にすれば良いんだ

 そうすれば私は1人じゃ無いんだよ、裏切らない可愛い可愛いお人形

 私が欲しいのは・・・・それだけ・・・・人間はイラナイ、人形がホシイ」


・・・・そうか、メルはフランに攻撃をしたとき手加減したんだな。

そうじゃないとあそこまで思いっきり食らっているのに無事なわけが無い。


「私の楽園に必要なのはワタシダケ」


そんな恐ろしい小さな声が聞えた後、彼女の状態が大きく変化した。

腕が今まで以上に太くなった、筋肉の塊か?

それに、腕からは血が出て来ている、あれは限界を突破しすぎてる!


「馬鹿! お前、それ以上戦ったら死ぬぞ!」

「私はシナナイ、私は楽園を手に入れる!」


どうして歳が弍桁行ってなさそうな女の子があそこまで狂うんだ?

あり得ないだろう・・・・どうしたらこんなに自分を追い込めるんだ?

どうして、こんな酷い事に


「うわぁぁぁぁぁ!!」

「来ます!」

「時間くらい稼ぐことが出来れば!」

「時間は、私が稼ぐ!」


フランの動きに反応したトラがメルが召喚した腕の部品を操りフランに飛ばした。


「邪魔だ!」


しかし、フランの一撃は魔道兵の腕を粉砕、そのまま殆ど減速も無い。

あり得ない、これが催眠術の魔法だと? 人間が出来る芸当じゃ無い。

クソ! このままだと、何も出来ないまま全滅に!


「うりゃぁぁぁ!」

「邪魔なんだよ! 邪魔なんだよ!」


最悪の状態が起る直前だった、後方から凄い速度で突進してきた小さな影が

異常な速さで近寄ってきていたフランを止めた。


「うぐぐぐぐ! 何でこんなに強いの!?」

「フレイ、なんでお前が」


良くは分からないのだが、フレイがフランを止めたようだった。

だが、フレイの身体強化でもフランを完全に止めることは出来ない。

稼げるのは数分が限度かも知れない、でも、この状況なら!


「ぶち抜け!」


俺は激痛が走る腕を無理矢理押え、強引に彼女に照準を合わせ引き金を引いた。


「大人しく私の物になれ!」


しかし彼女は地面を蹴り、高く飛び上がり俺の攻撃を回避した

こんな状況だって言うのに! まだ心を読むことが出来るのか!?


「トラちゃん!」

「え?」


その直後、ウィングが目を覚ましたのか大きな声と共に2本の刀が飛んできた。

その射線上にいるのはトラ、完全に不意を突かれて投げてきた2本の刀。


「たりゃぁ!」


普通なら反応できないような不意打ちだったというのに、トラはその支援に反応した。

そして、その2本の刀を操り上空に飛び上がったフランに飛んでいく。


「この! この! この!」


だが、彼女も異常な程の反応を見せ、飛んできた2本の刃物を弾いた。

そして、ほんの数秒、僅かな一瞬だけ時間を稼ぐことが出来た。

俺は1回目の引き金で走った激痛をもう一度無理矢理押さえ込み、上空にいるフランを狙った。


「「「いっけー!! リオーー!!」」」

「これで、くたばれ!」


激痛が走る中、フレイ達の声に背中を押され、俺は上空で滞空しているフランを撃ち抜いた。


「あ・・・・嘘・・・・嫌だ・・・・」


俺の弾丸は無事にフランの胴体に着弾した。


「・・・・どうして、どうして私の邪魔を・・・・するの・・・・私は・・・・あなた達が欲しい・・・・なの・・・・」


俺の一撃を受けた彼女は今まで血走っていた目を閉じ、涙を流しながらその場に倒れた。

異常な程に膨れあがった筋肉は凄い速度で縮小し元の太さに変化した。

だが、それと同時に両腕と両足からかなりの量の血が出て来た。

今まで体の限界を超えて動いていたから、ここまで酷い反動が来たのだろう。


「はぁ、はぁ・・・・倒せたの?」

「・・・・あぁ、何とかな・・・・いっつ!」


一気に安心したからなのか、左腕左足の激痛と指先の激痛が同時にやって来た。

そうか、今まで俺はこんな激痛の中で戦ってたのか・・・・うぐぅ。


「リオちゃん!? 大丈夫!」

「あぁ、何とか・・・・てか、ウィングとフレイ、お前らいつの間に戻ってたんだ?」

「私はリオちゃんに撃たれて目が覚めたら、何だか賑やかだったから飛んできたの」

「私は皆が戦ってる時に・・・・ごめん、私が悪いのリオちゃんを怪我させたのは私なの!」

「・・・・操られてたんだ、責めたりはしない」

「そうそう、それに皆と戦うのも意外と面白かった!」

「「全然楽しくない!」」

「およ?」


クソ、フレイの馬鹿が、俺達がどれだけこいつに悩まされたか!

全く自覚のない強者ってのも嫌なもんだ。

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