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洗濯物

川を発見して、しばらくの間俺達はここで滞在することになった。

流石に休み無しであそこまで歩いたんだ、しばらく動きたくは無い。

なんせ折角の水だ、洗濯物をして、水をいくつも確保しないといけないからな。


「それじゃあ、お洗濯物をしますので、脱ぎ脱ぎしましょうね!」


アルルの変態は俺の方を見て、気色の悪い笑顔で俺の方に近寄ってきて、俺の服を脱がそうとした。


「止めろボケぇ! 何してんだよ! このアホ!」

「嫌だなぁ、お洗濯をしようとしているだけですよ~」

「だったら、まず今までの服を洗え! そんで着替えを用意してからだな!」

「大丈夫ですよ、私達しかいないんですから、下着だけで歩いてても問題ないです!」

「ふざけるなぁ-! 洗濯して、その洗濯物が乾くまで下着だけでいろというのか!?

 そもそも! お前見たいな変態女がいる場所で下着だと!? 寝言は永眠して言え!」

「それだと何も言えませんよ」


俺の反論を受け、アルルはかなりがっかりしている様だった。

と言うか、少しだけ真剣に考えれば即座に分かる簡単な物だろう。


「とにかく、速く洗濯をしてくれ」

「分かりましたよ-」


アルルは寂しそうにして、荷物の中から俺達の着替えを出し、川に移動していった。

ようやく行動してくれたか、もう少し速く行動してほしいものだ。


「・・・・所でリオさん」


アルルが荷物の中から3着ほどの一切使われていない動物の柄が付いたパンツを見ながらそう言ってきた。


「なんだ?」

「なんでこのパンツとシャツを履いてくれないんですかね?」

「俺がそんな子供っぽい物を着るとでも?」

「子供じゃないですか、ほら、見てくださいよこの可愛いワンちゃんの絵を」


そう言ってアルルは犬の柄が付いているシャツとパンツを俺の方に差し出してきた。


「や、止めろ! 冗談じゃない! そんな悪魔のような化け物がプリントされてる服を着るか!」

「・・・・可愛いワンちゃんですよ?」


俺にとって、犬なんて奴は化け物だ、完全に死神だ! 絶対に嫌だ!

着てたまるか! 絶対に嫌だね! 下手したらアルルより嫌いだ!


「犬なんて化け物! 俺は大っ嫌いなんだよ!」

「わ、ワンちゃんを化け物と言う人は初めて会いましたよ、そこまで嫌いなんですか?」

「そうだよ! あんな怪物! 好きになれるか!」

「私よりも嫌いですか?」

「勿論だ! お前よりも犬は嫌いだ!」

「あぁ、少し嬉しい気がします」


こ、こんな質問をするとは、こいつは自分が嫌われていること自覚していたんだな。

自覚しているのなら直して欲しいんだが。


「じゃあ、この可愛い猫ちゃんのパンツはどうですか? 可愛いですよ?」

「女物のパンツはぴっちりしてて嫌なんだよなぁ」

「・・・・ドロワですけどね」

「何か違うのか?」

「ドロワは女性物の下着の中でもピッチリしておらず、動きやすく、履き心地も良いのです」

「ふーん」

「まぁ、私的にはリオさんが好んで履いてる男物の・・・・トランクス? でしたっけ

 そのトランクスの女の子バージョン? とでも言いましょうか」

「へぇ」


女性物の下着にもそんな物があったんだな、知らなかった。


「えっと、これです!」


そう言ってアルルが荷物から出してきたのは、白く長い少しふりふりした感じのズボンだった。


「ズボンじゃないか」

「パンツです」

「どう見てもズボンじゃないか」

「パンツです!」

「いや、でも」

「パンツです!」


俺にはそのドロワという物がズボンにしか見えない。

真っ白くふりふりしてて、結構長いしパンツと言うよりも確実にズボンじゃないか。


「俺には分からないが、まぁ、うん、パンツだとしよう、でも履かないぞ?」

「何でですか? 動きやすいですし、勿論大事なところも隠せますよ?」

「いやなぁ、これじゃあ、ズボンはけないじゃないか」


このドロワという物を履くと、確実にズボンを履くことが出来ない。

なんせ、ふりふりとした物が下に付いてるし、真ん中辺りの少しふっくらとしている。

もしもこれを履いて、ズボンを履いたとすると、感覚的にはズボンの上にズボンという

なんとも動きにくそうと言うか、違和感しかない状態になってしまう。


「そりゃあ、そうですよ、ドロワはズボンと履くための物じゃないんですから」

「じゃあ、なんなんだ? なんのためにあるんだ?」

「それはですね! 昔の人達はパンツを履く習慣がなかったのです!

 なので、スカートを履き、座るともろに見えてしまい、どうにかしようと考えた結果がこれです!

 今では需要はないのですが! あえて言いましょう! 小さい子は皆ドロワを履くべきだと!

 短めの可愛いスカート! そこからチラリと見えるドロワ! 萌えます!

 だからこそ! だからこそ! リオさん達はドロワを履くべきなのです! フレイさんも!

 ウィングさんも! トラさんも! マルさんもね!」


何だか知らないが、突如アルルの奴が目の色を変え、俺に対して熱演を始めた。

やはりこの変態はどんな時だろうとぶれない、だが、こいつは致命的な結果がある事に気が付いてない。


「・・・・そもそも、俺達はスカートはかないぞ?」

「・・・・!!!!!」


アルルが声にならないほどの衝撃を受けたようだ。

そして、口を小さくパクパクさせ、深呼吸を始めた。


「・・・・お願いします! スカートを履いてください!」

「お前は馬鹿か? 軍服はズボンなんだぞ?」

「な、なら、休みの間に私服を!」

「俺は遠征のためにいくつか私服を買ったんだが、フレイ達は私服は1着だ、その1着はズボンだぞ」

「何故ですか!? 何故1着なのですか!?」

「・・・・俺達が何処出身か、理解してるのか?」

「あ・・・・もしかして、服を買うお金も・・・・」


俺達は孤児院出身だ、そんな何着も服を買えるわけがない。

で、俺達はあそこを出るとき、服は置いてきた。

ただ1着、先生が縫ってくれた服が残っているだけだ。

で、その服は先生がいつも動き回って怪我をしている俺達のために

色んな場所を縫い直してくれていた物だ、だが、今回は持ってきてない。

大切な服だからな、こんなボロボロになりかねない長距離遠征で着られるわけがない。


「まぁ、1着しかないが、俺達はその1着に色んな思い出を残せたんだよ」

「どんな思い出ですか?」

「そうだな、フレイがからんで来て、転けてお互い大怪我したり

 トラが部屋を歩いていると、そこが抜けて足を怪我したり

 ウィングが俺とフレイの喧嘩を仲裁しようと頑張ったけど、止めに入る前に転けたりな」

「怪我してばっかりですね」

「大体フレイが悪い、暴れ回ってたんだから」


俺達の怪我の原因は大概フレイだからな、俺を振り回して盛大に転けて擦りむいたり

ウィングを追いかけ回していると反撃食らって転けたり。

トラと喧嘩をしていたときにお互い怪我をしてみたりな。

・・・・あれ? 俺だけ一方的にやられてね? 反撃も殆どしてないし。

いや、確かにさ、食事も取れてなかったし、生まれたときからひ弱な肉体だったから仕方ないんだが。


「そうなんですか、やっぱりフレイさんはフレイさんですね」

「そりゃ変わらないっての、なんせ1年も経ってないんだから」


フレイが暴走を始めだしたのは3歳頃だったかな、動けるようになってからああなったし。


「・・・・そうだった、リオさんは5歳でしたね! なら、フレイさんも5歳児ですか

 それなら殆ど変化しているわけありませんよね」


たまにこいつは俺の年齢を忘れている気がするな、いや、確かに中身は高校生だから

性格が見た目相応になるはずも無いのだが。


「リオさんは大人びていますからね、たまに忘れちゃうんですよ」

「頻度が多すぎだ、なんだ? もうすでに更年期障害か? もう少しくだらない事に関する

 記憶を捨てて、脳みその正常な機能に容量を回せ」

「ふふ、お断りです、私の脳みそは私が楽しむためにあるのです」

「どういう意味だ?」

「つまりですね、私は私が好きなように自分を使います、正常な機能なんて必要ないのです

 私としては、最高に人生を楽しめれば、それで満足なのですよ」

「それで良いのか?」

「それで良いのです、名誉も地位もお金も要りません、ただ私が求める物! それは愛です!

 喜びです! 楽しみです! そして何より! リオさんを好き放題に出来る権利なのです!」

「よろしい、死ね」


俺はその言葉に呆れ、銃を召喚し、アルルに向けてぶっ放した。


「ギャー! 死んだらどうしてくれるんですか!」


しかし、あいつは俺が銃を出すと素早く左に避けて俺の銃弾を回避した。

元々当てるつもりはなかったが、左に避けたから当たらなかった。

もしも、この時にこいつが右方向に避けてたら・・・・あいつの腹に風穴が空いていただろう。


「そうだな、もしお前が死んだとすれば、それはほぼ自殺だろう」

「どういう意味ですか!?」

「だって、あの状況で当たる場合なんて、お前が自分から弾丸に当たりに来るしかあり得ないからな」

「え? それってつまり、私がもし変な風に動いてたら・・・・」

「お前のお腹に洞窟が出来てたな、動かなければ死ななかったのに、って感じで」

「あ、あはは・・・・安全な回避方向に避けて良かったと、心の底から思います・・・・」


運が良い奴だ、まぁ、俺としても、もしこいつをぶち抜いたってなったら後味悪いし。

一応、生存してくれたお陰で助かったとしか言えないな。

じゃあ、そもそも銃をぶっ放すなよってなるが、脅しも兼ねてたし。

すぐに調子に乗る馬鹿な奴には脅しが1番だからな、でも、それで殺っちまったら洒落にならないし

今度からはこう言う手段は止めることにしよう。


「それじゃあ、その、洗濯してきます」

「分かった・・・・ん?」


アルルが洗濯をするために、俺の目の前から移動し、奥の木が見えたとき、違和感を覚えた。

俺の弾丸は、その後方に生えて居た木に当たっていた筈なのだが、そこに銃弾はない。

その代わり、木の表面を抉るように何かが跳ねた様な焦げた跡がある。


「・・・・もしかして」


俺はその焦げた後を見て、擦れている方向を確認した。

その方向は擦れた後は地面に向って伸びている様に感じる。

俺は擦れた後の角度を確認し、その方向を見てみた。


「これは」


その方向を見ると、そこの地面は思いっきりへこんでいる。

まるでここに何かがとんでもない速さでぶつかったような感じだ。

穴の大きさは目測で5~7ミリ程度だった、正確には測れないのだが、このサイズは見た記憶がある。

俺はウィンチェスターを召喚し、ボルトだけを引いて、中に入っている弾丸を取り出してみた。

そして、そのまま弾丸をその穴に差し込んでみると、結構綺麗に入る。

この事から、ここには俺がさっきぶっ放したウィンチェスターの弾丸が当たったと言う事が分かる。

じゃあ! もしかしてこの木に弾丸が当たって跳弾した!?


「・・・・・・すげぇ」


もし、これが本当なら跳弾計算さえ出来りゃ、隠れている相手を撃ち抜くことも出来るぞ。

かなりヤバいな、これは、なんせ弾丸が射出され、物体に瞬間移動する弾丸が

跳弾するってなれば、風力計算、重力計算、距離減衰を考えないでも良いって事だ。

それなら、この位置に着弾すれば、どう反射するかを計算出来ればほぼ無敵の力か。

で、俺にはそれが出来る技術がある、これ位出来ないとクリア出来ないゲームをクリアしたからな。


「こいつは良い!」

「どうしたんですか? 大きな声を出して」

「少し自分の魔法の新しい使い方に気が付いただけだ」

「良かったですね、流石はリオさんです」


それにしても、なんでこの木に当たって跳弾したんだろうか。

跳弾はかなり硬い物に対してじゃないとしない、だから普通の木だと硬度が足りずに

弾丸が跳弾することは無い、いや、そもそもだ弾丸が当たったはずなのに、この木のダメージが低い。

俺はそんな疑問を持ち、その木を調べてみることにした。

そして分かった、ここら辺に生えてる木の硬度は異常に高い。


「ふん!」


狙撃銃の弾丸を出し、銃口を持って木をグリップ方向で殴ってみた。

その時に出た音は普通の木のように鈍い音ではなく、石を叩いたかのような

そんな乾いた音が聞えたの、他の木も試してみたが、同じだった。


「何してるんですか? ここら辺の木に何か恨みでも?」

「そうじゃない、ただ試してただけだ」

「何をですか?」

「木の硬度、で、分かったことはここら一帯の木の硬度が異常にある事だ」


石を殴っているのか? と錯覚するくらいの硬度と乾いた音。

こんな木材がこんな場所にあるとは思わなかった。


「恐らく、ここら一帯は豊潤な栄養があるのでしょうね」

「それが理由で堅くなるか?」

「栄養が豊潤、栄養を集め放題、木の硬化をしてより安全に大きく! みたいな感じじゃないですか?」


そんな感じで頑丈になる物なのか? 異世界の木だし、色々と勝手が違うのか?

まぁ、なんにせよここら辺がかなり豊かな土地だと言う事は確からしい。

でもまぁ、なんにせよ、この木が頑強だったお陰でこの魔法の新しい可能性が見付かったんだ

そこはひたすらに感謝するかな。


「・・・・大きな音」

「マル!?」


さっきまでテント内で眠っていたマルがテントから顔を出した。

どうやら意識を取り戻したようだ! 良かった!

これでこいつが無事だとハッキリ分かったし、良かった・・・・本当に良かった。

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