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過酷な道のり

「あぁ、ったく、毛虫がうざいな」


やはり森を抜けるとなると、何かと毛虫が色んな場所にいて気持ちが悪い。

たまに服の上にも引っ付いてくるからな、全く嫌な虫だ。


「リオさん、毛虫に耐性でも出来たんですか? 前はあんなにビックリしてたのに」

「あれは不意打ちだったからだ、それに部屋着だったからな、薄かったから刺されるかと思って

 ゾッとしただけだ、外着ならビビる要素なんざ無い」


これでも一応軍服だし、まぁ、簡素な軍服だが毛虫程度の針が刺さる程薄くは無いだろう。


「もぅ、私は悲しいです、驚いて私に抱きついてくるリオさんを毛虫を見ながら楽しみにしてたのに」

「それなら、マルを抱きしめてたら良いんじゃないか?」

「ひゃーー! 毛虫だぁ! いやぁ! 虫怖い!」


どうやら、マルは虫が大の苦手らしい、異常な程に暴れているからな。

この道を通ったはずなのに虫が苦手ってどうなんだろうな。


「一度この道を通ったと聞いたのに、どうして虫が苦手なんですかねぇ」

「虫なんか嫌いだよ! 誰でもそうだって!」

「そうですか? 虫って可愛いと思うんですけどね、あ、そこに可愛い蝶々さんが」

「え!? 蝶々!? 何処!?」

「そこです、そこ」

「わぁ! 可愛い!」


・・・・蝶なのか? あれ、俺には蛾に見えるんだけど・・・・気のせいかな?


「あ、よく見たらその子、蝶々さんじゃ無くて蛾でした」

「ひゃぁあ! 触っちゃったよぉ!」


・・・・正体が分かった途端、手のひらが返しで蛾を投げ捨てた。


「蝶々さんも蛾も同じ様な物ですし、そんな全力で嫌がらなくても」

「でも! 怖いじゃん!」

「体の構造とか瓜二つじゃ無いですか、蛾にも美しい模様だっているんですよ?」

「そ、そうかもだけど」

「うふふ~、マルさんは名前に惑わされ過ぎですよ、名称なんて所詮飾りですよ」

「そうだな、名称だけでビビってたら何も出来ないからな」

「う、うーん」


蛾でも綺麗な模様はいるし、蝶でも気持ち悪い模様はあるんだろう。

やっぱり名称だけで判断するのは良くないよな。


「まぁ、要するにですよ、よくよく見れば可愛い虫さんも多いんで、そんなに嫌がらないでくださいよ」

「う、うん、分かった・・・・あ、違う、分かりました」


あぁ、マルは興奮すると敬語を忘れるのか、子供らしい。


「それじゃあ、案内お願いしますね」

「はい、こっちです」


アルルの言葉の後に、冷静さを取り戻したマルは俺達の案内を再開してくれた。

それから、しばらくの時間が経過していった、移動の距離は結構な物だ。

今回は初日の失敗から学んで、しっかり休みながら歩いて行った。


「ふぅ、今度はここら辺で一休みだな」

「分かりました」

「はい」


俺達は近場にあったほどよい大きさの石の上に座り、休憩を始めた。

流石にまだ少し涼しいとは言え、歩き続けると汗が出てくるな。


「はい、リオさんのお茶です」

「ありがとう・・・・てか、この水は何処で?」

「初日に休んだ日場所の近くにあった湖で」

「綺麗なのか?」

「はい、透明度は最高、それにちゃんとろ過もしています、長距離移動の時に

 そう言った道具を用意するのは当然ですよ」

「まぁ、そうだよな・・・・そういう所は信頼しておく」

「生命線ですからね、私は皆さんの命を最優先で行動しますから」


アルルのそういう所はちゃんと評価してるからな。

そう言う準備が万全と言うのも完璧に信頼してる。

ただなぁ、そこ以外がなぁ。


「ん・・・・あ、結構冷たい」

「そうでしょう? これも私特製の水筒ですよ、普通の物だとすぐにぬるくなるんで

 こう、冷たいのが逃げないように、色々と模索した結果がこれです」


この色々と巻かれているのがそれか、こいつ、もしかして結構頭良い?


「この巻かれてるのがそうなのか?」

「はい、冷気って周りの温度を吸収してるんですよ

 だから、暖かいのがあまり伝わらないように、布等の熱を通しにくい物を沢山用意してですね」

「いや、それ以上は良い、訳分からんし」

「分かりました、私が知っていれば万事どうにでもなりますからね」

「それってつまりお前に何かあったら、万事どうにでもならないのか?」

「そうですね、なので私を捨てないでくださいね?」


軽い脅迫なのかな? まぁ、こいつを捨てたいと思う事はよくあるけど

こいつを捨てることは無いだろう、何だかんだで優秀だし、色々と助かってるし。


「まぁ、大丈夫だ、お前を捨てたいと思う事はあっても、捨てはしないさ」

「そうですよね!」

「ただ・・・・役に立たなくなったら捨てるぞ?」

「やっぱりハッキリ言いますね・・・・でも、その方が私としては嬉しいですよ

 中途半端な嘘は疑心暗鬼を生みますし、そもそも、信頼されてないと思っちゃいますから

 それに、そう言ってくれるって事は、少なくとも今は私はお役に立ってるって事ですしね」

「そうだな、少なくとも今は役に立ってるな」

「おぉ! リオさんが褒めてくれました! これで私は10年は戦えます!」


たかが褒めただけで10年分のやる気を手に入れるとは、単純な奴め。


「さて、それじゃあ、そろそろ移動を再開するか」

「そうですね」

「マルは大丈夫か?」

「はい、大丈夫です」


のんびりとした休みを終わらせ、再び移動を再開した。

しかし、昨日は殆ど移動できなかったのに、休憩を入れて移動するとかなり違うな。

やっぱりノンストップでの行動は非効率だったっか・・・・はぁ、なんで初日はあんな事をしたんだろ。




それから3日ほど時間が経過した。


「っしゃぁ! 抜けたぁ!」


3日間休み休み移動をして、ようやく長い森を抜け出すことが出来た。

推測では1日で突破できるはずだったのに、蓋を開けてみれば4日か

やっぱり、子供の足だと時間が掛って仕方ないな。


「いやぁ、久々に広い道を拝める・・・・何てことはありませんでしたね」


森を抜けると、今度は大きな山が俺達の前に姿を現してきた。

森を抜けた後は、今度は山を登らないといけなくなるなんてな。

て言うか、確実に森よりも山の方がしんどいっての、坂だし、根っ子もあるし。


「なんで今度は山なんだよ」

「私達の前哨基地は、山を3つほど越えた先にあります」

「じょ、冗談だろ? 山を3つだと!?」

「はい、大きな山の裏側にあるんですよ」


そうか、ミストラル国から見付からないようにそんな場所に・・・・

攻撃の時とか面倒じゃ無いのか? いや、位置が割れるのはヤバいけどさ。


「攻撃の時大変そうだな」

「皆、そんな事を嘆いてました」


やっぱりそうなんだな、長距離移動ってだけでも辛いのに、そのルートが過酷なら嘆くか。


「まぁ、嘆いていても仕方ありませんよ、さぁ、行きましょう」

「全くお前は元気だな、底なしの体力かよ」

「鍛えてますから、毎日マラソン10kmは走りたいなぁと思ってます」

「走ってないのかよ!」

「ほら、私も多忙ですから、毎朝リオさん達の為に、ご飯を作ってたりですね」


そう言えば、毎朝の飯はこいつが作ってくれてるんだったか。

毎朝起こしてくれたり、変態な所を除けば完全に母親って感じだな、こいつは。


「なる程な、だから走れないのか」

「はい、まぁ、10km走りたいって言うのは冗談です、正確にはリオさんと10km走りたいです」

「俺が死ぬ」

「ですよねぇ、なのでただの夢です、はい」


いくら何でも10km走り続けるとか普通に死ぬ。


「・・・・でも、まぁ、1km・・・・いや、500m程度なら一緒に走っても良いぞ?」

「あ、あぁ! リオさんがデレました!」

「あのなぁ、単純に体力を鍛えるために一緒に走っても良いと言ってるんだ

 デレだとか馬鹿みたいな事を言ってんじゃねーよ」

「あぁ、やっぱりトゲがあります、ツンツンしてますよ」

「とにかく、さっさと進むぞ、ここで変な会話をしてる場合じゃ無い」

「そうですね、この悲しさを背負ったまま進みます」


俺達はその会話を終わらせ、再び移動を始めた。

今度は山あり谷ありルートとは、これまたかなりしんどい道だな。

こんな場所、俺達のような子供が挑んで体力が持つとは思えない。

そして、俺とマルは案の定、山に上り始めてすぐに体力の限界が来た。


「ぜぇ、ぜぇ、畜生、山を登ってるだけなのにスゲーしんどい」

「はぁ、はぁ、あ、足が・・・・足の裏が痛い・・・・」

「やっぱり山の方が体力を消耗するんですね」

「みたいだな、しかし、こんな道が150km位だろ? 体力持つかよ」

「わ、分かりません・・・・」


しかし、本当にヤバいな森を抜けるだけで4日間だぞ?

まだ楽だった森でだ、距離的に考えて3倍だから12日は掛る

そもそも、あの道は50kmの近道だから、多分20km位だとして

・・・・確実にこれから1ヶ月以上掛るじゃないか。


「・・・・アルル、保存食って後どれ位だ?」

「そうですね、移動している間に1食も食べてないので、一切減ってません」

「そう言えば、毎度お前が作ってたんだよな、弁当まで用意して」

「ふふ、私はこう見えてもサバイバル能力高いんですよ、保存食は非常用ですからね」


やっぱりこいつの女子力は侮れないな、能力高いし。

こいつ、変態な所を除けば完璧なんじゃね?

いや、そんな事は無いか、作戦とかの立案をした事なんて殆ど無いし。

ついでにカリスマなんて一切ないし、完全に変態だからな。


「なる程、食料は問題ないか」

「えぇ、確保できそうなら、いくらでも確保できますから」

「そうか、じゃあ時間が掛りまくっても問題ないか」

「そうですよ・・・・よいよいしょ」


アルルは俺と話しながら、何か不自然な動きをした。

こいつ、何をしてるんだ?


「何してんだ?」

「いえ、軽く道しるべを、森では木に分かりやすくしてたんですが、山ですからね

 石を積んでるんですよ」

「ほう、そんな事までしてたのか」

「そりゃぁ、そうですよ、もしも迷子になったら困りますからね」


アルルの奴は最悪の事態を想定して動いてくれるな、本当に重宝する。

あぁ、俺も最悪の事態を想定して動かないとな・・・・最悪の事態か。

うぅ、駄目だ、考えることが出来ない・・・・今の俺が想定できる最悪の事態、それは。


「どうしたんですか? こっちを見て」

「な、何でも無い」

「ん?」


俺が想定できる最悪の事態、その事態を何とかする方法は1つしか無い。

その1つの選択肢が残酷で、俺には出来ない・・・・そもそもだ

そんな事態を想定するだけで、軽く足が震える・・・・駄目駄目じゃ無いか、畜生。

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