おまけ
____《?年後》
「ふぅ……すぅ……」
深呼吸を繰り返す。
目の前には、金の装飾が施された豪華な大扉。
その向こうに待つ視線と祝福を思うだけで、心臓が喉から飛び出しそうになる。
――俺は……俺は……
“ウェディングドレス”姿で、ただ入場の合図を待っていた。
「色んな意味でゲロ吐きそう……」
ヴェール越しに額に滲む汗を拭うこともできず、ただひたすら鐘の音が響くのを聞いていた。
『キャハハハっ♪ 私が変わってあげよーかー??』
「いや、大丈夫……これは俺が女で生きる事を決めたケジメの儀式でもあるから……」
『ふ〜ん?かっこいいねぇ〜?』
「これから先は、可愛いって言われるのにも慣れないとなぁ……」
心の奥で交わす声。
不思議とそのやり取りが、震える膝を支えてくれている気がした。
――その時、扉の奥から音楽が流れ始める。
魔法の光に包まれて、ゆっくりと大扉が開かれていく。
視線が、一気にこちらへと集まった。
「よし!行くぞ!」
俺は一歩、一歩とレッドカーペットを踏みしめ、祭壇で待つ“新郎”と神父の元へと進んでいく。
俺の胸は高鳴り続ける。
これは――俺が女として生きると決めた、その選択を刻む儀式。
俺はレッドカーペットの先に立つ新郎の横へと並び、静かに深呼吸をした。
「新郎、新婦。これより互いに愛を誓い合う儀式を行います」
参列者たちの視線がさらに強く注がれる。
鼓動が速くなる中で、神父ルコサはゆっくりと問いかけを続けた。
「病める時も、健やかなる時も、互いを支え合い、愛し続けることを誓いますか?」
「はい、誓います」
隣から響いた声に続いて、俺も口を開く。
「……誓います」
「では、指輪の交換を」
差し出された小さな銀の輪。
震える指でそれを受け取り、互いの薬指にはめようと__
「待ったぁァァァア!!!!!!!!!」
「うぇえ!?」
俺が女になるのは……もう少しだけ先になりそうだ……





