【祈り】
「……」
「……」
二人は階段を上がり、やがて屋上へと辿り着いた。
そこは驚くほど殺風景だった。
ただの四角い建物の天井――何の装飾もなく、空に晒されたコンクリートの灰色の床。
__だが、屋上の中央だけ違った。
「あれは……」
「はい、あれが【始まりの審判】の儀式場です」
儀式場――その言葉から思い描くのは荘厳な神殿か、古代の遺跡だろう。
だが、目の前に広がるのはそれらと正反対。
虚無の中に、ただ一点だけ__
「……水?」
屋上の中央に、直径数メートルはあろうかという水の球体が浮かんでいたのだ。
その中で静かに眠るように浮いてるアオイ姿が……
「【生命の泉】から採取した水です。この世にはもう存在しないはずですが……どうやら“神の使徒”の方々が用意してくださったようですね」
大人のユキは儀式場の前へ歩み寄る。
「この世にない?」
「その場所がどこか。私にもわかりません……あ」
そこでユキの視線が、球体の手前に散らばる灰を捉えた。
「これは……?」
「……これは、アビさんです」
「アビ? 確かお姉ちゃんが倒した魔王……?」
「はい……」
ユキはそれ以上何も言わず、水の球体の前に静かに座り込む。
胸の前で手と手を合わせ、目を閉じた。
「新しい神には信仰者が必要です……ジュンパクさん、私と一緒に祈ってください」
「え?祈る?どうするの?」
「なんでもいいんです、アバレーであるお正月と言う行事で神社に祈る時みたいな感じで」
「う、うん」
二人は並んで祈りを捧げる。
その時が来るまで____
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