コンビネーション
「撃て……」
既に武器を構えていたオリバルの号令と共に、空を埋め尽くす銃火器が一斉に火を噴いた。
「まだセリフの途中なのじゃーッ!」
ルカは慌てて背中からクリスタルの翼を展開し、瞬時に球体へと組み上げて防御態勢を取る。
無数の弾丸が雨あられと叩きつけられ、凄まじい火花と轟音が辺りを包んだ。
「そう来るなら……これかな」
ルコサの魔法陣が変化し、粘着性の高い液体がドロドロと滴り落ちてルカの羽に絡みつく。
「ぬ!? 甘いのじゃ!」
しかし――触れた瞬間。
粘着液は弾けるように変質し、ポロポロと小さな宝石へと姿を変えて地面に散らばった。
「なるほど。触れたものの『原子の書き換え』か……めんどくさい能力だな」
オリバルは射撃を続けるが、決定打には至らない。
近接を仕掛ける準備のできたクロエが声をかける。
「どうすんよ、ルコさん」
「そうだね……オリバが攻撃してる間は、守るしかなさそうだしぃ!?――っ!」
次の瞬間。
三人は反射的に跳び退いた。直後、彼らの立っていた場所を突き破って、鋭利なクリスタルの槍が突き出す。
「……前言撤回。あの状態でも攻撃できるみたいだね」
「チッ、だったらまずは――あのクソ硬ぇのをどうにかするしかねぇな!」
「そういう事みたい。オリバ、まだ大丈夫?」
「全然行ける……俺はこのまま撃ち続けてればいいか?」
「うん。羽で攻撃を防いだってことは――結局、身体そのものは柔らかいのか……それとも、こっちの攻撃を警戒して“ヤバい”と判断して防御したんだろうね」
「了解……」
「ただ、隙が見えたら迷わず殺していい」
「任せろ……」
オリバルは【空歩】で一気に遠くへ跳び、姿を霞ませて弾幕を続ける。
「さて、と――クロ」
「あ?」
「ちょっと試すから、見てて」
「あいよ」
ルコサは転移魔法で一気に上空へと舞い上がり、青白く光る一本のランスを呼び出した。
「……とりあえず、コイツで」
神気を帯びたランスを構えると、空気が震えた。
「くらえッ!」
ルコサが全力で投げ放った瞬間、ランスは回転しながら竜巻を巻き起こし、唸りを上げて突き進む。
「――ッ!?」
バリン! 鋭い破砕音と共に、ルカの片翼が貫かれた。
「うん、やっぱり! “神の武器”は書き換えられない!」
「でかした!」
クロエが笑う。だが、オリバルの弾幕は止まず、ルカは片翼を残して必死にガードしつつ再生を試みる。
その刹那――。
防御する翼に相合傘のように入ってきた一人の女。
「……よう。久しぶりだな、クリスタルドラゴン」
「なっ――いつのまに!」
ルカが反応するより早く、クロエの大鎌が横薙ぎに振り抜かれる。
「くっ!」
「ぬぬぬ……! なのじゃ!」
ルカは意地で両手に【クリスタルブレード】を生成し、鎌を受け止める。
「しぶてぇな! このクソ竜が……殺すぞ!」
クロエが力任せに鎌を押し込む。
「(これは……まずいのじゃ)」
クロエの鎌を押さえ込みながら、ルカは残る翼で必死に弾丸の雨を防ぐ。
再生した片翼も健在だが、至近距離に入り込んだクロエが邪魔で思うように動けない。
さらに――
「ちょちょい〜忘れちゃ困るんだよなぁ」
「なのじゃ!?」
転移してきたルコサの手には、青白く輝く日本刀が握られていた。
「勇者の剣よりは劣るけど……これもまた“神の武器”」
ルコサが刃を閃かせ、ルカの首を狙う――。
「させぬのじゃッ! あむッ!!」
ルカは咄嗟に口を大きく開き、その牙で日本刀の刃を噛み砕かんばかりに受け止めた。
「う、うわぁ……まじ?」
「ひははら! ほうふふはんほは!!」
(貴様ら……もう許さんのじゃ!)
直後、地面を突き破るようにクリスタルの槍が無数にせり上がる。
ルコサとクロエは転移で回避し、距離を取った。
「何やってんだルコ! しくじりやがって、殺すぞ!」
「いやー……マジごめん」
次々と突き出すクリスタルを避けながら飛び退く二人。
だが――
「鬱陶しいッ! 今度はこっちの番なのじゃ!!」
圧倒的な魔力を解き放ちながら、ルカの反撃が始まる。





