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縄文文書(もんじょ)で世界を救え!! ― 01  作者: 幸田 蒼之助
五、

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25/36

5-2、

※なるべく縦書きでお読み下さい。

「おい。あのトラック、高速道路を使う気か」


 咥えタバコでハンドルを握る岩切が、苦々しげに呟いた。


 うわあ、と後部座席に座る六人が嫌な顔をする。


 トラックは一度、自社の営業所に立ち寄ったが、作業員を四人ばかし下ろしただけで、そのまま走り出したのである。挙げ句、向かった先が高速道路のインターチェンジだった。


「ルート便じゃなく、直送かよ」

「こりゃあ、このまま出張になりますなあ」

「うわ北上ルートか……。この出張は長くなりそうですね。参ったなあ」


 独身の三人はまあ、良いが、残る三人は家族持ちだ。黒木などは顔をしかめつつ、スマートフォンを取り出し嫁さんにメールを打ち始める。


「仕方ねえ。何としてでも行き先を突き止めるぞ」


 岩切は、高速道路へとハンドルを右に切った。


 そんな彼らの思惑などいざ知らず、引越トラックは数時間走り続け、関門海峡を抜ける。山口県に入ったところで、やっと美祢市の美東サービスエリアに立ち寄った。


「おお。やっと休憩か」

「ふう、良かった。しょんべん我慢してたんだ」

「オレも」


 七人は慌ててトイレに駆け込んだ。


 さすがに引越会社のドライバー達も、暫くは休憩をとるだろう。が、彼らがいつ走り出すか分からない。七人は手早く、飲み物や食べ物を買い込むと、岩切の車に戻る。ついでに懸念の給油を済ませ、スタンバイ。


 はたして三〇分後、引越トラックが動き始めた。


「思ったより早かったな」

「あ、そうか。交代で運転するのか。だから休憩が短いんだ」

「そのようだな」


 そういう岩切も、既に若手職員と運転を交代し、疲れ切った顔で助手席に座りタバコをふかしている。


 冬場である。時刻は既に午後五時を過ぎ、辺りも暗くなってきた。


「あのトラック、どこまで行くんだ?」

「まさか夜通し走るつもりじゃないですよねえ」

「大型なら、中に仮眠をとるスペースがあるけどな。あんな小型にそんなスペースはねえ。どこかでインターを下りて、宿をとる筈だ」

「なるほど」


 岩切の言う通り、前を行くトラックは広島市のインターで下り、市内のとあるビジネスホテルの駐車場へと入った。


「ふう……。よし、みんな今晩はここで一泊だ」


 何食わぬ顔で、引越会社のドライバー二人の後に続き、ホテルのフロントでチェックインの手続きをする。


「あのぉ。お二人はどちらまで、荷物を輸送しているんですか?」

「済みません。業務に関する事を、他人に言ってはダメなんです。そういう規則がありまして」

「はあ……。なるほど、そりゃそうですよね。失礼しました」


 引越スタッフらと並んで宿泊カードを記入しつつ、岩切はさり気なく行き先を探ろうとしたが、あっさり失敗。


(ダメだこりゃ)


 素直にあとを追うしかないようだ。他の六人もげんなり顔である。


「いや。まあ、いい。追いかけるのは今日だけだ。ひとつ、うまい手を思い付いたぞ」


 シングル一部屋、ツイン三部屋を取り、岩切のシングルに全員が集まると、岩切はおもむろに口を開いた。


 突然の長距離移動、そして成り行きで出張が決まり、皆疲れ切った顔をしている。


「どうするんです?」

「こいつを使う。オレの、予備のスマホだ」

「ほう」

「こいつをフル充電するだろ。で、明日朝イチで連中のトラックに仕込む。そうすりゃ連中がドコへ移動しようと、GPSで追跡出来る」

「あ、なるほど」

「さすが岩切さんだ」


 翌、早朝。まだ辺りは薄暗い中、岩切らは引越トラックの側面、ほろ内側の目立たない位置に、予備スマート端末をこっそりと手早くビニールテープで貼り付けた。


 仕込みは万端。部屋に戻り、自身のスマート端末にインストールしたGPSアプリで、受信状況を確認する。


 果たして予備スマート端末は、アプリ上の、現在地点を指していた。


「うん、大丈夫そうだ」

「いけそうですね」

「よし。オレ達はこのままチェックアウトして、一旦引き上げるぞ。トラックの行き先が判明したら、改めて準備万端で現地に直行だ。わかったか?」

「「「了解っ!」」」


 皆、部屋に戻り、帰宅すべく荷物をまとめ始めた。

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