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縄文文書(もんじょ)で世界を救え!! ― 01  作者: 幸田 蒼之助
三、

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11/36

3-2、

※なるべく縦書きでお読み下さい。

 そういえば笙歌らが入学した直後、


 ――うちの高校の入学試験がアヤシい。


 という噂が流れた。母校出身者の親族がいる場合や、特定の在日外国人だとかに下駄を履かせ、いわゆる“情実入試”が行われているという。


「そいつは不公平だ」


 眉をひそめつつ批判する、金作。


「いかんな」


 彰善と倫輔も頷く。


 早速、彰善は学校の教務PCネットワークにやすやすと侵入し、たちまち情実入試の証拠を見つけた。


 採点集計ソフトウェアに、ある種の受験生に下駄を履かせるロジックを発見したのである。更にはそれらの加点により合格した生徒達の、リストを作成した。


 ――悪しき慣例、正すべき!


 倫輔が、毛筆にて太々と書き、堂々たる立て看板を作った。それに彰善の見つけ出した証拠を貼り、校門前に高札の如く掲げた。さらに金作が、同文をマスコミ各社に“善意の匿名在校生”名義で送り付けた。全て金作発案の、不正告発作戦である。


 たちまち、


 ――名門進学高の情実入試の実態


 として世間の知るところとなり、校長教頭教務主任がマスコミの前でアタマを下げる事態に発展したのである。


 以来、教師陣は、


「あいつらに触れちゃいかん」


 と敬遠した。


 クラスメイトも皆、三人に一目おき、とりわけ金作のリーダーシップを歓迎……しつつも、受験勉強しか眼中にない事無かれ(ゝゝゝゝ)人間が多いせいで、三人はどこか超然としていた。浮いていた。


 そんな中、笙歌だけは例外と言えるだろう。三人が何か企んでいるのを嗅ぎつけるなり、


「今度は何やるの? あたしも混ぜなさいよ!」


 と絡む。


 なにしろ彼らとつるんでいると、面白いのだ。


「また、お前か……」


 渋い顔の三人。


「何よそれ!! せくすぃーないすばでーJKの笙歌さんが、手伝ってあげるって言ってるんだから、少しは喜びなさいよ!」


 いつしか、煙たがる三人に笙歌が無理くり絡む、という構図が出来上がった。


 花も恥じらう女子高生(!?)の筈が、金作を大声で“タマキン”と呼んで憚らない、笙歌。……


「あいつ、美人なんだけどなあ……」


 男子生徒は皆、ビミョーな表情で、変女(ゝゝ)・笙歌とも微妙に距離を置いた。


 高校卒業後、笙歌は都内のお茶呑女子大学に進学した。


 金作は、同じく都内の晩稲田(おくてだ)大学へ、倫輔も頓狂大学へ進学。ただし倫輔はわずか一週間で大学をやめ、米国のジョンズ・ホプキンズ大学に入学し直す。その卒業時には、


 ――研究職ポストを用意するから大学に残れ。


 と声が掛かったらしいが、にべもなく断り帰国。研究顧問として一応の籍を残しつつ、日本国内で気楽にフィールドワークを行っている。


 彰善はマサチューセッツ工科大学に進学。これまた卒業時、某有名研究所から声が掛かったが、素っ気なく断って帰国した。以来、凄腕デイトレーダーとして稼ぎまくっている。


 こうして再び都内に集まった三人と、笙歌。――


 しかし程なく、三人は西日本の某農村へ移住を決めた。


「また、あたしだけ除け者にするの!? ちょっと待ちなさいよ!」


 憤慨し、笙歌は三人の後を追いかけた。が、排他的な地方の農村ということで、先行する三人は随分とひどい目に遭っているらしい。いや勿論、彼らが黙ってやられている筈がなく、やられた分以上に村人達をやり込めたようだが。


(うわ。余計なトラブルは勘弁……)


 笙歌はその隣町に、部屋を借りて落ち着いた。彼ら三人の住まいまで、それぞれ一〇分強といったところである。


 あれから、もう一年半程が過ぎようとしている。

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