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36話

 カリは、自分と徴税官とで魔法の威力に威力の差があるのは、魔央の濃度の違いであると仮定した。

 その仮定が正しいかは、カリも魔央を圧縮してみれば分かる。

 カリは魔法使いになってから、魔央が存在する範囲を広げようとはしてきた。しかし逆に圧縮しようだなんて考えたことはなかった。

 魔法使いは、出来ると思えば、なんだって魔法で叶えられると言われている。

 だから徴税官の魔央のような濃度まで自分の魔央を圧縮しようと思えば、それはすぐに叶えられることになる。

 カリの魔央は村を覆うほどに広く分布していたが、それが徐々に範囲を狭め始める。

 範囲が縮まる度に魔央の濃度が上昇していき、魔央の濃度が上がるにつれて、カリが発動する魔法の威力も上がり始める。

 二発の魔法で防いでいたのが、一発で被害なく防げるようになり、やがて一発同士で相殺できるようになる。

 このカリの魔央の変化を、徴税官も感じ取ったようだった。


「下郎め。我が魔法の使い方を見て学んだか。小生意気な」


 徴税官は、遊びはここまでといった風に、魔法を連発し始める。カリを含めた周囲一帯を焼け野原にしよういう、無差別攻撃だ。

 カリは、先ほど村人たちを守ることは止めると決意したこともあり、自分に襲い掛かってくる分の魔法だけを防いだ。

 そうやって防ぎながら、カリは自分の魔央の濃度を上げることに執心する。

 カリの魔央は圧縮に圧縮され、元々は村全域を覆っていた魔央の範囲が、家数件分の範囲へ縮んだ。この段階で、徴税官の魔央の濃度を明らかに超えていた。

 しかしカリは、ここで満足することなく、魔央の範囲を限界まで圧縮するのを試みる。

 やがてカリの魔央は、カリの体の周りを掌大の厚みで覆う形になり、圧縮が止まった。


「これが限界かな。ああでも、分かるな」


 カリが思わず呟いてしまったのは、この限界まで圧縮した魔央の性能について直感的に理解が起こったから。そして、この状態の魔央が発揮できる魔法の威力を直感し、感嘆する気持ちが起こったから。

 そんなカリに、徴税官が放った魔法がやってきた。

 カリは、魔法で迎撃しようとして、直前に魔法の発動を止めた。

 徴税官の魔法が直撃し、カリが魔法の火によって包まれる。

 その姿を見て、徴税官が不満げに鼻を鳴らす。


「魔法使いになろうと、下郎は下郎。最後はあっけないものだ」


 そんな言葉を口にした徴税官だったが、やおら巻き起こった風が周辺に降り注いで燃やし続けてた魔法の火を吹き消すのを目撃し、目を丸くする。


「なぜだ。どうして我が魔法の火が消える! 対象が燃え尽きるまで燃え続けるはずだ!」

「それは、僕が風の魔法で吹き消したからだ」


 声の発信者は、カリ。先ほど徴税官の魔法で炎上したはずなのに、服にすら焦げ跡一つない姿だ。


「下郎、何をした!」

「風の魔法を使った以外は、なにもしてない。あんたの魔法は、俺に通用しなかったってだけだ」


 戦いが始まった当初、カリの魔央は徴税官の魔央の濃度に押しやられてしまって、カリは徴税官の周囲に魔法を出現させることが不可能になった。

 だからカリは、徴税官の魔央の範囲の外側に質量のある物体を魔法で作り、その質量弾を発射させることで攻撃していた。

 その現象に仮説を与えるとすれば、魔央の濃度に差があると質量のない魔法を防ぐ防壁になり得るということになる。

 だからカリは、極限まで魔央を圧縮した際に、徴税官の魔法を食らうことで試したのだ。

 限界まで圧縮した魔央は、どの程度の魔法まで防げるのかを。

 その実験の結果は、怪我をしそうになったらすぐに検証を止めようと決めていたカリの予定とは裏腹に、全くの無傷で終わったことで証明された。

 そして限界圧縮した魔央から放たれる魔法は、魔法の風が一吹きしただけで周囲を燃やしていた魔法の火が消えたことから、自ずと察しがついた。


「次は、おまえが魔法を食らう番だ」


 カリは指を徴税官に向け、火の魔法を使用した。その指から、まるで熱された鉄の棒のような、明るい橙色の火が一直線に続いた状態で伸びた。

 その火の棒とも言える魔法は、徴税官の右肩に即座に直撃し、着弾地点周辺を一瞬にして燃やして塵に変えた。


「ぐああああああ!」


 徴税官が呻き声を上げ、焼き消された右肩を左手で押さえる。右肩周辺が焼滅したことで、右腕が体と繋がりを失って地面に落ちた。その腕の焼かれた断面は、灰に塗れている。

 苦しむ徴税官の姿を見ながら、カリは困っていた。


「一番弱い火の魔法を使って、この威力。過剰すぎるよ」


 つまるところ、魔法でこれ以上の手加減は不可能だ。

 それでも威力を下げようとするのなら、魔央の圧縮率を下げる必要が出てくる。

 しかしカリは、敵にそこまでしてやる道理を感じなかった。


「まあいいや。ねえ、答えてよ。どうして、この村を全滅させようとしているのか」


 カリが指を向けながら問いかけると、徴税官が火の魔法を返答として放ってきた。

 しかしその全ての魔法は、限界圧縮されたカリの魔央が障壁となり、一切の効果がなかった。

 カリは、徴税官の反抗的な行動を受けて、先ほどと同じ魔法で徴税官の左膝に放った。


「ぐあああああああああ!」


 徴税官は、先ほどの右腕に続いて、左足の膝から先を失った。左足を焼滅された痛みに仰け反った拍子に、片足で立っていられなくなり、転倒する。

 喪失感に呻く徴税官に、カリは再び質問した。


「村を全滅させようとした理由は?」


 徴税官は、地面に倒れた状態で、唐突に笑い声をあげた。


「くくくっ、あははははっ! 魔法使いが現れた村など、残しておけるわけがない! 魔法使いになって良いのは、貴族だけと決まっているのだ! そうでない魔法使いは、全て悪なのだ!」


 徴税官は気が触れた様子で、大声を放ち続ける。


「魔法使いが出たと偽った村や噂が上っただけの町ですら、貴族の手によって灰燼に帰してきた! 本当に魔法使いが現れた村となれば、貴族の全精力でもって駆逐されるのが定めよ! 魔法使いである我が死によって、この村に本物の魔法使いが現れたことは証明される! 残念だったな、下郎! この村とお前の未来は死しかないのだ! あははははははは!」


 大声を上げながら、徴税官の体がひとりでに炎上を始めた。

 カリが魔法をかけたわけではなく、徴税官が自分の魔法で自身を焼き始めたのだ。


「ははははははは! せいぜい足掻くがいい、悪の魔法使い! 無駄な努力だろうがな! あはははははははははは……」


 笑いながら、徴税官は焼死した。

 いまの徴税官の言い分が本当なら、これで騒動は終わりじゃないことになる。

 カリは頭を抱えたくなる気分になりつつも、圧縮していた魔央を今までと同じものに戻した。

 その開拓村全域を覆い直した魔央を通して、カリは生き残っている甲冑戦士と荷馬車に隠れている人員を狙って魔法を放った。

 こうして、徴税官が連れてきた人員は、当の本人を含めて全滅した。

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― 新着の感想 ―
自死すら超えた主人公だから、しょうもない負け惜しみや脅しが全く通用してないんだろうなあ。もう強者だけが興味の対象とかいう存在になってそう
立ちふさがるもの全部ぶっとばせば幸せになれそうな感じがして面白い。
村が襲われた理由は想定通り。 魔術の修行で魔央が割れにくくなるのは周りから魔力集めるんで魔央が厚くなるんじゃないかな? だから魔術を修行した方が魔力は多くて強い。 でも、訓練受けて無いから初期段階で分…
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