31話
カリは戦士の役目を行いながら、徴税官が来るまでの日々を過ごしていく。
その役目の間も、カリは魔法使いへの気付きを得ていた。
戦士の役目の中には、村の出入口を守る以外にも幾つか仕事がある。
その仕事の中の一つ、外壁の外を巡回して外壁が損傷していないか周囲は安全課を確認するものがある。
カリが毎日出入口に立っていては飽きるだろうと、先輩の戦士が新たな業務として、その巡回を行うよう命じた。
「分かりました」
とカリは素直に引き受けたものの、カリにとてみたら必要のない仕事である。
なにせカリは、魔法使いの特殊な感覚によって、開拓村全域を感覚することができる。
だから巡回をするまでもなく、外壁に損傷はないし、開拓村の近くに開拓村を脅かすような動物や魔物の存在はないことが、すぐに把握することができた。
しかしカリは、散歩のような感じで気晴らしができるしと、村の回りを歩いてみることにした。
戦士といっても、カリは急遽任命されたばかり。だから他の戦士が持っているような金属の武器は、まだ支給されていない。
もっとも戦士の武器は、自衛用の意味が強い。なにせ戦士の一番の武器は攻撃魔術だ。
攻撃魔術さえ使えるのなら、武器などいらないと考える戦士も多く、支給されている武器を携帯しないこともザラのようだった。
カリも、魔法使いになったことで、攻撃魔術より強力な魔法を放つことができるようになっている。だからカリも、武器なんて持つ必要ないなと、そう思っていた。
そんなことを考えながら、カリは外壁の周りを歩き続け、道のりの半分に到達した。
こうやって長々と歩いて、カリは魔法使いの魔央についての、新たな知見を得ていた。
「僕が歩くに従って、僕が感じられる魔央の範囲も動くみたいだ」
常に魔央の感知圏は、カリを中心に据えている。だからカリが一歩前にでたら、魔央の範囲も一歩分ずれることになる。
そう理解して、カリは新たな疑問が湧いた。
「僕って一瞬で遠くに移動できるけど、その場合の範囲ってどうなるんだろう?」
カリはまず、自分が瞬間的に移動可能な距離がどれだけあるのかを把握することにした。
その確認の仕方は簡単で、自分がどこまで瞬間移動できるかを感じればいいだけだ。
「うーん。感知範囲の端から端まで移動できそうだけど、そこを超えることはできなさそうだ」
もっと言えば、カリが魔法を発現できる範囲も、空間に存在するカリの魔央の飛沫がある場所までのようだった。
では、カリがいま感知範囲の端に瞬間移動したら、魔央の範囲はどうなるのか。
先ほどカリを中心にして展開されちている分かった通りに、魔央の範囲も瞬間的に移動するのだろうか。
「試してみよう――っと。さてどうなったかな」
カリは瞬間移動の魔法で、先ほどいた場所か消えると、ら感知範囲の端だった場所へと出現した。
では魔央の範囲はどうなったかというと、どうやらカリが瞬間的に大きく移動すると、魔央は追従しきれないみたいだった。
「感知範囲が、かなりの速さで僕に追いつこうとしているな。およそ、人の全力疾走ぐらいな感じかな」
ここでカリは、再び瞬間移動の魔法を使い、先ほどまで居た場所へと瞬間的に戻った。
すると魔央の範囲は、再びカリのいる場所を中心にした状態に戻ろうと、移動し直している。
「ふむふむ。ここまで魔央の範囲が自在に動くのなら、僕の意思で魔央の範囲の形を変えることは出来るかも?」
カリが思いついたことが、出来るような気がした。
それならと、カリは自分の魔央の範囲を変形させてみることにした。
いまの感知範囲はカリを中心とした、村を全て覆うほどの大きな球形をしている。
なのでカリは自分の足より下――地面の下を感じている分を削って、地面から上だけを感じ取る半球状の形にしてみた。
「試したら上手くいったし、下半分の容量が上半分に移動したから、感知範囲も大きくなった。けど、元の倍の距離まで広がらないのはどうしてだろう?」
下半分の感知範囲を上半分に加えたのだから、上半分の感知範囲は倍になっているはず。それなのに感知できる範囲は、直線で考えると、増えた分は元の半分未満だ。
この距離と体積の関係が理解できず、カリは不思議だなと首を傾げる。
「ま、そんなことよりだよ」
カリは半球状の感知範囲を、四角柱や三角柱の形にしてみたり、棒のような形に細長く伸ばしてみたりしてみた。
その後で、その感知範囲の中心をカリ自身からズラしてみる試みも行った。
そうやって実験してみてわかったことは、カリが魔法を発動できるのは相変わらず感知範囲内だけということと、感知範囲は常にカリの体に繋がっていて切り離すことはできないということだった。
「遠くに敵がいるとき以外は、あまり使い道がないかも」
感知範囲の形を変える際には、カリはかなり集中する必要がある。
試しにカリが感知範囲を弄ることを止めると、すぐに元の球形に戻った。
カリは、この球形範囲で困ってないからと、感知範囲の形を弄ることに興味を失った。
こうして感知範囲についての知見を深めた後、カリは戦士の役目を果たすため、外壁の外を巡る残りの道を歩いて消化することにした。




