1話
カリは、純人種の両親の下、原生平野を開拓する農民の子として生まれた。
両親は別の土地から移住してきたらしく、カリの祖父祖母は村に存在しない。
カリの父親は、精力的に畑働きを行い、父親の畑は凶作知らずとして村で有名だった。
母親は、そんな父親のことを愛していて、献身的に畑の手伝いや家庭の仕事も行っていた。
カリも、物心ついたときから、そんな両親のことを愛して慕っていた。
開拓村という僻地ではあるものの、幸せな家庭がそこにあった。
そんな幸福が崩れたのは、父親が畑の中で働いている最中に倒れたときだった。
「あなた、しっかりして! 村長さん、どうして夫が!」
ベッドの上で呼吸をしていない父親を見て、母親は悲痛な声を上げる。
献身的な村人が死んだと聞いて飛んできた村長は、ベッドの上の死体に痛ましい目を向ける。
「神官様の判断を貰わぬといけないが、おそらく日禍であろう。太陽神は働き者が大好きで、日中に目に留めた働き者を連れて行ってしまうという、あれだ」
「どうして、そんな!」
「神と貴族の行いは、平民である我らには分かり様がないのだ。そういうものだと諦めるのだ」
カリの父親の死体は、速やかに村の外に運ばれ、村から遠い場所に捨てられた。
これは、原生平野の獣に死体を食べてもらう、獣葬。
死体を焼き上げる薪を用意できない土地で、村の中に墓地を作る余裕のない場所特有の、葬儀の方法。
こうして父親の存在は家庭から居なくなった。母親がこっそり切って確保した遺髪を残して。
母親は愛する夫を失った衝撃からか、葬儀が終わった後から、生活に変調をきたし始めた。
家事を疎かにし始め、家の中にゴミが溜まり、空気が埃っぽくなりだした。
家族二人を養う作物を畑で作らなければいけないのに、畑に行くのは何日かに一回だけで、まともに働かなくなった。
カリも父親を失った悲しさがあり、母親の気持ちも分かるため、五歳の体で出来る限りの手伝いを行った。
しかし、日中は神殿での勉強が必須な子供が手伝った程度で改善するほど、開拓村の生活は甘くない。
カリの家の畑は収穫期には荒れていて、その収穫量は父親が生きてきた頃の十分の一にも満たなかった。
そんな村のお荷物と化した家庭に、村人たちは冷たかった。
村長も、懐事情が厳しい開拓村を守らなければならないため、同じだった。
「君らでは畑を守れないと判断し、畑と家を取り上げる。これから先は、小作人として働くように」
村長の唐突な宣言と村人たちの手により、カリと母親は外壁近くに雑に建てられた小作人用の小屋へ押しやられた。
この村でいう小作人は、真面目に働かずに村に迷惑をかけた者が落ちる、畑作業を手伝って一日分の食料を得る貧農を指す。
この日、六歳になってから、カリの受難が始まった。




