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2-21翻弄② ※ブライアン視点

 私へ強い視線を向ける彼へ一言物申す。

「セドリック殿。これはアリアナが私で遊んでいるだけだ。気に留めるものではない」


「えッ⁉ 私が騎士団長で遊ぶはずがありませんわ。公爵様ともあろうお方が、何を仰います」

「アリアナ?」


「残念ですが、公爵様の独りよがりな勘違いです。アリアナが嫌がっているではありませんか。私の元へお返しください」

「独りよがり?」


 アリアナから恋愛遊戯ではないと拒絶された。そのせいで、セドリック殿の得意げな口調に拍車がかかる。


 ……嘘だ。

 アリアナが私のことを好いていると感じたのも、心が繋がった気がしたのも、私の恥ずかしい思い違いだったのか?

 彼女の予言を信じなかったから、本当に嫌われたのか……。

 そして、いましがた彼女に嫌われていないと思ったのは、私の勘違いなのか。乙女心が全く分からない。

 まさか、彼女に焦がれ過ぎて、妄想に走っていたのか……。恋仲だと。


 いや……それがどうした。

 例え片思いだとしても、私の気持ちは貫く。もう離れる気はない。


「アリアナが狙われていると分かった以上、私の傍の方が安全だ。なにせ、一度護衛を任命された身だからな。これだけは譲れない」


「ええっ? 私、そんな図々しい依頼をブライアン様にしておりませんよ。どうしてそうなるのでしょうか。お兄様だけです。王城騎士団長様を護衛に利用するのは」


「人聞きが悪いな、効率的に動くのは当然でしょう」と、白々しい口調でセドリック殿が告げる。


「アリアナとの次のデートは、護衛の約束だったからね」

「あっ……」

「アリアナを探しているときに、領地内の至る所でアンドーナツの噂を耳にした。もしかして、以前、私に話していたパンのことだろうか」

 ……アリアナから提案されたそれを、凄く期待をしていたのだが。


「わっ私。そ、そ、そんな約束をした記憶はありませんわ。パン? 一体何のことかしら?」


「いやいやいや、約束したでしょう。二人で豆を買いに行くところから、楽しみにしていたんだ」


「何のことか、さっぱり分かりませんわッ」


「そうか……手料理の話をしたのは、私の記憶違いなのか」

「そうですよ。変なことを言わないでください」


「既にアリアナに愛想を尽かされたかもしれないが、私は常にアリアナの味方だ。何があってもあなたを護るから、それだけは忘れないで欲しい」


 デートの存在自体をなかったことにされた……。

 アリアナから次のデートに誘って貰ったのを、嬉しく思っていたし、心待ちにしていた。

 それなのに……彼女の言葉を信じずに、不意にしてしまった。言い訳はできない。私が悪い。

 だが、平民たちが口々に揃え絶賛していた、アンドーナツとやら。……話すら聞けない。


 駄目だ。すっかり嫌われたようで、心が滅入りそうだ。一国の王太子が女に振られたくらいで大袈裟だと、内心ジェイデンを馬鹿にした。

 だが、運命の相手に振られ、心がすさむ気持ちが今なら痛いほど分かる。


「もう。どうしてそんな大げさな話になるんでしょうか? この話、面倒なので、それ以上何も言わないでください」


「面倒って。……私はアリアナの護衛でいいから、一生傍に置いて欲しい」


「いつも自信気に斜め上のことを言うブライアン様が、一体どうしたんですか? ですが、もう面倒なので、それでいいです」

 よし。護衛の立場だけは確保した。

 だが、何かに焦るアリアナは、本当に斜め上へちらりと視線を向けた。建物の右側にある屋根の上へ。


 ……完全に後を付けられている。

 遅足もいいところの馬の歩み。それに合わせるように、向こうも速度を落としてしばらく経つ。

 全く殺意は感じない。いや、むしろアリアナに尾を振る犬のように付いてきているようだ。熱い視線を感じる。


「ねえ、さっきの暗殺者に何をしたの?」

「餌をまきました。どうやら釣れたようですね、私の狙いどおりです」

 アリアナが、にぃっと口角を上げる。


 ……狙いどおりって。

 アリアナは何をしたんだ?

 ただのご令嬢の域ではないと、階段で令息を助けたときから思っていたが、ここまでやれるとは。次元が違う。


 彼女が意図的に何かを仕掛けたのであれば、王都へ帰るまで、やつがどう出るか様子をみるか。


 セドリック殿はそこまで疲れていないだろう。余計な口を挟めるくらいだ。私の想定以上に体力はありそうだし、こうなれば。


「セドリック殿。予定は変更だ。到着が遅くなっても今日は泊らず、このまま王都まで向かう。夜中に屋敷へ戻るのが問題であれば二人を我が家へ招く」


「我が家は真夜中でも明け方でも問題ありません。危険な公爵様の屋敷にはアリアナは行きませんから」


「野良犬が迷い込んでも、我が家の方が安全だと思うが、まあいい。私たちの後を追う者がいる。街を抜けたら速度を上げるからそのつもりでいて欲しい」


「承知いたしました。戦術は私の専門外ですので、お任せいたします」

お読みいただきありがとうございます♪

次話は、アリアナ視点に戻ります。

引き続きよろしくお願いします。

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