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 リグを帰還させて残月を召喚する。

 オレが騎乗して移動速度を上げていった。

 ラムダくんは当然、自前の脚で走る訳だが。

 さすがに長距離走では残月やヴォルフに敵わないので、やや控えめのスピードである。

 それでも凄いんだけどな。


 目指す先は土霊の祠だ。

 無論、途中で魔物にだって遭遇する。

 ブラックベアにスノーエイプだ。

 手本としてスノーエイプ相手にオレが戦って見せたのだが。

 さすがにオークよりも格段に強いのですよ。

 解説するのも大変でした。

 戦闘終了後にもいくつかアドバイスをしておく。

 基本、オークに裸絞めを仕掛けるのと変わり映えはしない。



「現時点でこのスノーエイプよりも手強いPK職っていないだろうね」


「確かに」


「まあスノーエイプは魔法は使わないけどね。体格は人間並みだからいい練習相手になるだろう」


「練習相手ですか?」


「そう。得られるアイテムもいい値段で売れるし、レベルアップにもいい」


「なるほど」


 では次だ。

 ラムダくんにも実際にスノーエイプと戦って貰おうか。


 でもね。

 そこから暫くの間、スノーエイプには遭遇しなかった。

 ブラックベアばかりだ。

 ラムダくんと交互に狩って先に進んでいく。

 まあ毛皮も得られたし、熊の掌も入手している。

 嬉しいのではあるが、お前等は本命じゃないのだ。



 いかん。

 まだラムダくんがスノーエイプと戦えていない。

 コール・モンスターを使って周囲にいるスノーエイプを呼び寄せよう。


「コール・モンスター!」


 呪文の効果で周囲にいるモンスターの位置も把握できるようになった。

 おい、これはなんだ?

 周辺にはスノーエイプもちゃんといる。

 ブラックベアよりも少し多い位だ。

 クソッ。

 ちゃんとこっちを襲ってこんかい!


 とりあえず2匹、時間差を付けて呼んでおいた。

 先に現れた1匹はラムダくん用だ。

 もう1匹はオレが相手にしよう。



「では行きます!」


「おう、行け!」


 ラムダくんがスノーエイプ相手に素手で立ち向かっていく。

 それを傍目に見ながらオレもスノーエイプに襲い掛かる。

 教えるべき事は一通り教えてあるのだ。

 心配はしていなかったんだけどな。



「瞬殺になっちゃいました」


「何が悪かったのか、理解はしているよね?」


「はい。力の入れ過ぎです」


「分かっているなら調整する事。魔物のHPバーもちゃんと確認だな」


「はい」


 少し凹んでいるようだ。

 褒めて伸ばすか。

 叱って伸ばすか。

 両方がいいんだろうけどな。

 能力が高すぎるのも問題だ。

 技が身に付かないことがある。

 贅沢な悩みになるが、実際に目の当たりにするとは思わなかった。



「ステータス操作は使えるかな?」


「え?」


「筋力値、あとは器用値に敏捷値も低めに出来るかな?さすがに瞬殺では練習にならない」


「出来ますけど」


 何を懸念しているのかは分かる、

 ラムダくんの場合、スピードで撹乱して背後を襲って裸絞めに入っている。

 スノーエイプを相手に恐るべき事をしているのだが。

 敏捷値まで下げてしまうとその方法が使えなくなるだろう。


「打撃、それに蹴りも使う事だ。今の技量でも牽制にはなる」


「そうでしょうか」


「確かにステータスで圧倒できるならそれに越した事はない。でも常に圧倒できるとも限らないよね?」


 そう。

 彼が求めるのはプレイヤーズスキルなのだ。

 何が不足なのか、分かっている筈である。


「スノーエイプと戦っていけば自然と身に付く。まずはやってみる事だな」


「はい!」


 よし。

 では次だ。

 コール・モンスターでスノーエイプを追加する。

 ラムダくんに1匹、オレ達に2匹だ。

 ヴォルフ達にも1匹を割り当てよう。

 土霊の祠を目指して進みながら練習を続けていった。



 何匹目かのスノーエイプを相手していた時、油断してダメージを喰らってしまった。

 当然撃退はしたのだが、呪文をいくつか使わないといけなかった。

 いかんな。

 教える立場なのに戦い方が雑になっているようだ。

 反省。


《只今の戦闘勝利で【打撃】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【受け】がレベルアップしました!》

《只今の戦闘勝利で【土魔法】がレベルアップしました!》

《【土魔法】呪文のストーン・ウォールを取得しました!》

《【土魔法】呪文のグラベル・ブラストを取得しました!》

《只今の戦闘勝利で召喚モンスター『残月』がレベルアップしました!》

《任意のステータス値に1ポイントを加算して下さい》



 それでもこれだけ得られるものがあったりする。

 善哉。

 残月のステータス値で既に上昇しているのは敏捷値だ。

 もう1ポイントは筋力値にしておこう。



 召喚モンスター 残月 ホースLv5→Lv6(↑1)

 器用値  7

 敏捷値 23(↑1)

 知力値  7

 筋力値 23(↑1)

 生命力 23

 精神力  7


 スキル

 踏み付け 疾駆 耐久走 奔馬 蹂躙 蹴り上げ



 うむ。

 美しい。


 そして土魔法の呪文も2つ追加された。

 中身は風魔法と水魔法のケースと同様に壁呪文と全体攻撃呪文なのだが。

 まあ手札が増えた事は有難いよね。



 再び土霊の祠に向かう。

 広域マップではもうすぐの筈だが。

 土霊の祠に到着するまでの間にもコール・モンスターも交えてスノーエイプを狩りまくった。

 ブラックベアはまあついでだ。

 雪猿の骨に皮、熊の掌に皮も得ている。

 戦果は十分であろう。


 そして肝心のラムダくんだが。

 打撃、そして蹴りも交えて猿相手に四苦八苦である。

 だがそれでいい。

 苦戦するようでなければ上達は望めない。

 裸絞めの方もいい感じだ。

 猿が強敵であるが故に、技がしっかりとかかっていなければダメージを与えられないからな。

 仕留めるまで時間はかかっているし、ダメージも喰らってはいるのだが、この方が上達するだろう。

 オーク相手に温い戦いを続けるよりずっといい。



 土霊の祠の様相は一変していた。

 まるで新品のように整備されていたのだ。

 外も中も綺麗である。

 例のノッカーとノームはいない。

 だが彼等の仕業である事は明白だ。


 そして祠の中には先客がいた。

 ここに到達したパーティだろう。

 人数としては10名は確実にいるだろう。

 パーティ2つ分といった所だ。


 彼等は広い祠の中の一角でテントを設営して休憩中なのだろう。

 入れ替わりで全員が一旦ログアウトするみたいである。

 こっちに気が付いて視線を投げ掛けてくる者もいるようだが。

 中には携帯食を食べている者もいる。

 オレは努めて気にしない様にした。


「昼飯にするにはまだ早いですね」


「ああ。でも一旦はログアウトして来た方がいい。ところで時間はいいのかな?」


「今日はゲーム時間で午後2時あたりまでが限界です」


「それじゃあPK職を狩るには都合が悪いんじゃないかな?」


「今は自分を鍛える方を優先で構いません」


 明日は依頼品をレギアスの村で受け取る用事がある。

 オレはリターン・ホームで戻ればいいだけだが、ラムダくんとの時間を合わせるとなると都合が悪い。

 ラムダくんにはここで自主トレを兼ねて明日も狩りをして貰った方がいいだろう。


「一旦ログアウトしてきて。戻ったら少しトレーニングの後、飯にしよう」


「分かりました。10分で戻ります」


 ラムダくんがテント設営をしている間にオレも陣容を少し変えておく。

 残月は帰還させてジェリコを召喚する。

 コール・モンスターを連続で使ってはいるが、MPバーが大きく減るような呪文はそんなに使っていない。

 余裕はある。

 それに白銀の首飾りの効果でMP消費は少しだけ減っている筈だ。

 心に余裕が出来るというのはいい。

 但し油断は良くないけどね。



 先客の数は目に見えて減っていた。

 どうやら6名が残ってパーティを編成し直し、冒険を続けるのだろう。

 土霊の祠を出て行くようである。

 頑張って頂きたい。


 

 さて、オレはオレで暇な時間は適当に潰しておこう。

 朝拾っておいた黒曜石を矢尻にして矢を作り、補充しておく。

 手持ちの黒曜石がなくなった所でラムダくんが帰ってきた。

 さて。

 やるか。


「では昨日の続きだ。少し模擬戦をやっておこう」


「トレーニングですね」


 うん。

 ちゃんとしたトレーニングになるかどうかはラムダくん次第なんだけどね。

 オレは木製の小刀と小剣を両手に持つ。


「今から教えるのも基本的なものばかりではあるけど、身につけるのは容易ではないからね」


「はい」


「ぶっちゃけ私にしても極めているとは言い切れない。そのつもりで」


 土霊の祠の中でトレーニングを開始した。

 基本を一通り教えるだけではあるが。

 剣の使い方も覚えておいた方向がいいだろう。



 とはいえオレが教えるのは日本刀を使う事を前提にした剣術って事になるのだが。

 ラムダくんは右手に小剣だけを持たせている。

 最初は構え方からだ。


 小太刀のみで戦う際の基本的な構えとは?

 半身だ。

 武器を持つのが右手であるならば、右足を前にして構えるのだ。

 これにはいくつかの理由がある。


 前後に動いて間合いを調整し易い事。

 相手が出てくるのに合わせて足捌きも工夫すれば接近する事もできるだろう。

 小剣にせよ小刀にせよ、間合いの短さの不利は当然ある。

 取り回しの良さを活かすには、相手の間合いをまず外してから攻撃に移すのが合理的だ。

 この構えは不利を埋めながら利点を活かし易い。


 そして正対する相手から見た場合、攻撃できる範囲が狭くなる。

 これが地味に大きい。

 突く、そして撃ち下ろす攻撃が僅かでも当たり難くなる。

 それだけに受けに回る場合にも有利に働く。

 馬鹿に出来ない効果なのだ。


 だがそれ以前にもっと大きな理由が他にもある。

 武器を振り回して自分を傷つける場合が少なからずあるのだ。

 これ、かなり重要。


 とは言ってもこの基本の構えにも弱点はある。

 足を前に出して半身になる以上、そこが狙われ易い。

 片足タックルにも気を付けるべきだ。


 構えの次は型をやらせた。

 打太刀と仕太刀とを交互にやる。

 型にだって意味はあるのだ。

 様々な要素を排除したエッセンスが型なのだ。

 疎かには出来ない。


 その一方で素振りはしない。

 素振りに意味がないとは言わないが、実際に魔物相手に戦う方がいい。

 実戦に勝る修練はないのだ。

 どんな技であれ、熟達するのを待ってから戦いに臨む事などありはしない。

 達人になってから実戦に出る、というのは遅い。

 つかあり得ない。



 型を反復練習させてから実戦形式で立会いをしてみる。

 ラムダくんは小剣。

 オレは小刀。

 フェンシングみたいな構図だが、小太刀術では別の要素が加わってくる。

 蹴りが飛んでくる。

 懐に入られたら投げもある。

 関節技だってある。

 元々、組打ちを前提にした武術なのだ。

 鎧武者を地面に倒して首級をとるのに工夫もされている。

 当然、魔物相手でも有効だろう。

 PK職相手ならば尚更だ。

 こんな戦い方はプレイヤーズスキル前提でなければ扱えまい。


「まるで敵いません」


「そりゃあすぐに対等になったら立つ瀬がないよ」


 ラムダくんの場合、サッカーをやっていたせいか、動きそのものは良い。

 体重のシフトも速い。

 だが武器を操る技量はお世辞にしても高くないのだ。

 まあまだ型を覚えたばかりだし仕方がないんだが。


「武器を握る力はそんなに必要じゃない。斬る寸前に力を込めるイメージで」


「はい!」


 まあこの辺りは口で説明しても身に付き難いんだよな。

 実際に斬ってみなけりゃ理解は深まりはしないだろう。

 でも基本だけは教えておく。


 持ち方は簡単だ。

 普段、一番力を込めるのは小指。

 斬る時、受ける時には、柄を絞り込むようにして力を入れる。

 これに手首の返し方を覚えていけば上達は早い。


 でもね。

 口で説明するだけなら簡単だ。

 だけどこれを果たして完璧に実践できるものだろうか?

 オレにしても極めてないし。

 どの剣術流派でも基本が即奥義なんて事があったりするんですよ。

 武術は奥が深い。

 深すぎる。



 正午前にトレーニングを中断して食事を摂っておく。

 そして正午になった。

 運営インフォはない。

 イベントが実装された、とあったんだが。

 ここの運営は情報をまるで出そうとしない。

 小出しにすらしない。

 そのスタンスはここでも健在か。



「じゃあ外でスノーエイプを相手に実戦かな?」


「は、はい!」


「装備は小剣1本。仕留めるのは裸絞めで」


「分かりました」


 今度は小剣を持たせて実戦を積ませよう。

 少しは戦い方にも幅が出てくると思う。



 祠を出ようとしたその時。

 中央のあたりで異変が起きていた。

 次々とプレイヤーが転移してきている。

 何だ?


「死に戻りですね」


「ついさっきここを出発したパーティか」


 なんとまあ。

 出発してそう時間もたってないのにもう死に戻りとは。

 何があったんだ?

 装備や編成を見ても、ブラックベアやスノーエイプ相手に遅れを取るように見えないのだが。

 そのパーティメンバーの顔は蒼白そのものだった。

 6人目がやや時間を置いて死に戻ってくる。

 全滅だ。



「何があったんです?」


 図々しいかとは思ったが話しかけてみた。

 情報を得られるに越した事はない。


「魔物だよ。いきなりスノーエイプ5匹に遭遇した」


「ここに来るまで1匹としか遭遇しなかったのに!」


「ツイてなかったよな」


 壁戦士、魔法使い、弓使いが返答してくれていた。

 他の3名は壁戦士、ドワーフ戦士、エルフ弓使いである。

 バランスがいいな。

 それでもスノーエイプ5匹が相手でも苦戦はするだろうが、勝てないとは思えないのだが。

 可能性としては、レベルの高い個体が考えられる。


「もしかして、斧持ちの個体がいました?」


「1匹、いたわよね?」


「ああ、確かにいた」


「【識別】が間に合わなかったからレベルは不明だけど」


「貴方はサモナー?それでも気を付けた方がいいわ。数が増えると面倒だと思うわ」


 壁戦士の女性に忠告を頂きました。

 きっと兜を外すと美人さんに違いない。

 いい声音だ。


「気をつけます」


 深く一礼してその場を離れる。

 そして祠の外へ。

 イベントのタイミングでスノーエイプ5匹と遭遇か。

 何かが起きているのかも知れない。

主人公 キース

種族 人間 男 種族Lv10

職業 サモナー(召喚術師)Lv10

ボーナスポイント残8


セットスキル

杖Lv8 打撃Lv6(↑1)蹴りLv6 関節技Lv5 投げ技Lv5

回避Lv6 受けLv6(↑1)召喚魔法Lv10 時空魔法Lv3

光魔法Lv5 風魔法Lv6 土魔法Lv6(↑1)水魔法Lv5

火魔法Lv5 闇魔法Lv5 氷魔法Lv3 雷魔法Lv3

木魔法Lv3 塵魔法Lv3 溶魔法Lv3 灼魔法Lv3

錬金術Lv5 薬師Lv5 ガラス工Lv3 木工Lv4

連携Lv8 鑑定Lv7 識別Lv7 看破Lv3 耐寒Lv3

掴みLv6 馬術Lv6 精密操作Lv8 跳躍Lv3

耐暑Lv4 登攀Lv4 二刀流Lv5 解体Lv3

身体強化Lv3 精神強化Lv4 高速詠唱Lv5


装備 カヤのロッド×1 カヤのトンファー×2 怒りのツルハシ+×2

   白銀の首飾り+ 雪豹の隠し爪×1 疾風虎の隠し爪×2 

   野生馬の革鎧+ 雪猿の腕カバー 野生馬のブーツ+

   雪猿の革兜 暴れ馬のベルト+ 背負袋 アイテムボックス×2


所持アイテム 剥ぎ取りナイフ 木工道具一式


称号 老召喚術師の弟子、森守の証、中庸を望む者

   呪文目録


召喚モンスター

ヴォルフ グレイウルフLv1

残月 ホースLv5→Lv6(↑1)

 器用値  7

 敏捷値 23(↑1)

 知力値  7

 筋力値 23(↑1)

 生命力 23

 精神力  7

 スキル

 踏み付け 疾駆 耐久走 奔馬 蹂躙 蹴り上げ

ヘリックス ホークLv5

黒曜 フクロウLv5

ジーン バットLv5

ジェリコ ウッドゴーレムLv4

護鬼 鬼Lv4

戦鬼 ビーストエイプLv5

リグ スライムLv4

文楽 ウッドパペットLv3

同行者 ラムダ(本名オメガ)

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