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ログインした時刻は午前4時。
既にインスタント・ポータル内では何名かが起き出している。
互いに挨拶を交わしながら周囲を見回すと。
いた。
「やあ、おはようさん」
「「おはようございます」」
アデルもイリーナも既にログインしてました。
「今日の試合は何時からだったかな?」
「私達は9時ちょうど、新練兵場A面です!」
「会場は一緒か」
「あの、対戦はここで?」
「うん。まあなんとかなりそうだしな」
昨夜、インスタント・ポータル内でテント設営を端に寄せていたのが良かった。
対戦が出来るだけの広さは確保出来ている。
つかもう対戦しているサモナーがいたりするし。
数は少ないがギャラリーもいるようだ。
皆さん早いって。
「では順番待ちですね」
「まあそうだな」
「少しは手加減して欲しいなー」
「今日はちょっとやり方を変えるよ」
「えっ」
「それは?」
「ジェリコと戦鬼だけで相手をする。少し試してみたい事があってな」
「試してみたい事、ですか」
「本番前にやはり確認しておかないとな」
朝飯までに対戦は6度こなした。
戦績は4勝2敗。
最初の2敗はジェリコと戦鬼を壁に徹しての防御戦を試してみたのだが。
やはりこれはいい方法ではない。
呪文で強化は出来るが、迂遠に過ぎる。
結局2戦とも時間切れ、判定で敗北である。
そしてその次からは戦術を大きく変えた。
そう。
ジェリコをどう活かすか。
その答えがそこにあった。
「それ!反則じゃないんですかあああああ!」
アデルの抗議は聞き流すとして。
うむ。
どうやら使えそうだな。
「確かにゴーレムは移動速度が遅いのが欠点ですが」
「それを他の召喚モンスターに運ばせるって。やっぱり反則!」
「アデルちゃん、でもこの戦い方は有効だと思うけど」
「イリーナちゃん、あれに対抗するのって難しいよ!」
「だからよ」
何をしたかと言えば。
ジェリコを液状化させて、戦鬼に貼り付かせただけだ。
そして後衛のアデルとイリーナの傍にまで強行突破。
ジェリコが元の姿に。
それだけ。
うん。
リグの代わりにジェリコを使っただけだね!
戦鬼の動きはやや阻害させているようだし、移動速度も落ちる。
だが十分に速い。
呪文で強化したらもっと速く移動できるだろうが、その必要は感じなかった。
大丈夫だろう。
「だが新しい問題が出来たな」
「何でしょうか?」
「リグだ。今まではずっと戦鬼に貼り付かせていたんでな」
そうだな。
リグはオレに貼り付かせて、というのはどうだろう?
重たいが歩けなくはない筈だし。
もう朝飯の時間だし、後回しにするか。
「キースさん、さっきの戦法なんですけど」
「うん?」
文楽の作ってくれた朝飯を片付けた後、イリーナが質問してくる。
何だろうね?
「私にも少しヒントを頂いた気がします」
「そうかな?」
「ええ。乱戦狙いならトグロは有効、ですよね?」
そうですね。
でも今までだってトグロの特性を活かした戦い方をしていたと思うが。
「イリーナちゃん?」
「速攻に加えて乱戦に持ち込む戦術。私達にだって出来ると思うの」
「でも」
「うん、私達にとっては壁役がいなくなるってリスクはあるけど」
「まあ無理はしないように、な」
うん。
そこは自己責任でお願いします。
「7時半になったら移動しますよー!」
おおっと。
アデルとイリーナを相手に対戦をやってたらいつの間にか時間が過ぎてしまってました。
春菜と此花が移動告知をして回っている。
対戦は食事後も2戦、やっておいた。
オレはリグを貼り付かせての戦闘を確認。
アデルとイリーナは速度重視、乱戦狙いの動きを確認。
内容は充実していたように思う。
《只今の戦闘勝利で【回避】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【受け】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【木魔法】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【平衡】がレベルアップしました!》
いくつかのスキルもレベルアップしているしな。
謎なのは【平衡】だ。
確かにギリギリを狙って回避してたけどさ。
ま、いいか。
移動は昨日を上回る規模になった。
恐るべし。
「すみません、同乗させて貰っちゃって」
「まあついでだしな」
そう。
残月でレムトの町へと移動するのに同乗者がいるのであった。
ヒョードルくんです。
残月からしてみたら、リグを乗っけてもまるで問題にしないのだ。
全然、大丈夫です。
彼はまだ馬を召喚モンスターに加えていないらしい。
ついでに言えば【馬術】もないそうだ。
「やっぱり馬がいると便利なんですか?」
「そうだな。色々とスキルも要るとは思うけど」
彼の肩には鷹が止まっている。
そして足元には狼。
ヒョードルくんの昼間の編成はこれがデフォルトのようです。
「じゃあ出発するよー!」
春菜が号令を下す。
「オォーーーン!」
ヴォルフが上空に向けて吠えた。
恐るべき召喚モンスターの群れが動き出していた。
行軍はゆっくりしたものであった。
それでもレムトの町には試合開始前に十分間に合ってます。
馬での移動だと余裕ですな。
途中、襲ってくる魔物は1匹だけでした。
勇者ホーン『ド』ラビット。
いや、初期マップでは最も恐るべき魔物と言いきれる相手なのだが、瞬殺でした。
鷹とフクロウによる連続急降下突撃を喰らってましたね。
うん。
ホラー映画を見ているようでした。
その中にはヘリックスも黒曜もいる筈なのだが、遠目だと見分けはつかない。
やはり数の暴力は恐るべきだな。
レムトの町に到着。
さすがに大集団だったので、町の外で解散する事になった。
「今日の夕方が交流会の最終日ですよー!」
「是非参加してねー!」
春菜と此花が告知していました。
まだ、やるのか。
いや、ようやく終わる、という認識でいいのかな?
楽しめるからいいんですけどね。
「では行くか」
「「はい!」」
試合用の召喚モンスターを入れ替えてレムトの町に入る。
まだ試合は始まっていない。
でも町の熱気は間違いなく高まっているようである。
アデルとイリーナとは同じ控え室に通された。
まあそれはいいとして。
オープニングからいきなりアデルとイリーナの第三試合が始まりました。
さて、どんな戦い方を見せてくれるのかね?
「では行ってきます!」
「ではまた後ほど」
「ああ。ここで見てるぞ」
控え室との出入り口近くの特等席を確保して対戦相手の様子を窺う。
うむ。
どうやら格上のようだな。
??? Lv.12
ファイター 待機中
??? Lv.12
ファイター 待機中
??? Lv.11
トレジャーハンター 待機中
??? Lv.11
ハンター 待機中
??? Lv.12
ソーサラー 待機中
??? Lv.12
ソーサラー 待機中
うむ。
間違いなく、格上か。
それにしても変則的な編成だな。
ファイターは2人とも装備から見て重装備の壁役。
共に重たそうな盾。
得物はメイスに片手剣だ。
これにトレジャーハンターが前衛を担うスタイルか?
ハンターはスタンダードに弓使いのようだし。
後衛のソーサラーは2人とも杖持ち。
呪文の火力が要注意って事になりそうだ。
ふむ。
戦闘ログは勿論、この試合は動画を撮っておこうかね?
使い方を仮想ウィンドウで見ながら操作を進めておく。
どうにか、試合開始に間に合ったかね?
試合開始直後から激しい動きが起きた。
トグロのみが真正面から突撃。
うーちゃんが細かくステップを踏みながら前衛に迫る。
アデルとイリーナはそれぞれ虎を引き連れて左右に散った。
大胆だな。
戦力の分散はリスクが大きい。
その狙いは何か?
これに対して相手チームはどう動いたか、と言えば。
なんとこっちも左右に展開する動きを見せた。
ハンターはアデルと。
トレジャーハンターはイリーナと。
急速に接近する事になってしまった。
互いに意表を突かれる形になったか?
足を止めたのはハンターだ。
一瞬、後方に戻ろうとする動きを見せていたな。
だがその一瞬が致命的だった。
虎のみーちゃんに足を噛まれてしまい、ついでに引き倒されてしまった。
アデルはそれに構わず武技を繰り出し続ける。
『スナイプ・シュート!』
『スナイプ・シュート!』
そしてイリーナもまた武技で押し通すつもりのようだ。
こっちも三毛が奮闘、ダメージを喰らいながらもトレジャーハンターを転がしていました。
迷ったのは前衛の壁役のファイター2人。
そして後衛のソーサラーも判断が遅れた。
正面の蛇と狼を攻撃するか?
仲間を助けに行くか?
どうやら後衛のソーサラーの選択はまず防御だった。
『ストーン・ウォール!』
トグロの前に土壁が出現する。
そのまま土壁に沿って這って行く。
うーちゃんは?
トグロと反対側から回り込む動きを見せる。
前衛のファイターが壁の両脇から現れた。
うーちゃんは攻撃範囲から逃げるように距離を置く。
トグロはそのまま、ファイターを無視して後衛のソ-サラーを襲った。
混乱。
トグロは後衛のみを狙っていた。
だがすぐに後退を始める。
前衛ファイターが2人とも、戻ってきていたからだが。
イリーナの壁になるようにトグロが立ちはだかり威嚇する
アデルの壁になるようにうーちゃんが位置を変えつつ後退する。
虎2匹は獲物を食い漁るように攻撃を加え続けていた。
なんとまあ。
まずは相手チームから2人、排除を優先させるようだ。
なるほど。
元々はトグロによる後衛奇襲が目的だったのか。
予想通りとはいかなかったようだが、遭遇戦で有利に立ったので御の字と言えるだろう。
『フィジカルエンチャント・ファイア!』
『フィジカルエンチャント・アース!』
アデルとイリーナが呪文で強化する。
うーちゃんは筋力値、トグロは生命力が強化される。
ふむ。
この2匹を攻撃の軸にするつもりだな。
相手チームも仲間を救出する選択をしたようだ。
4名全員がイリーナに向けて動き出す。
イリーナは、というと何と退き始めた。
トグロはその場で威嚇し続ける。
『骨砕き!』
『獣断剣!』
『グラベル・ブラスト!』
『ウィンド・カッター!』
トグロ、そしてイリーナに攻撃が加えられる。
『スナイプ・シュート!』
『スナイプ・シュート!』
無論、反撃も加えられていく。
ソーサラー、しかも片方にだけ矢が集中されているのが分かる。
ほう。
そうするのか。
トグロも武技を相手にダメージを喰らいながらも良く耐えていた。
反撃しながらも、退く。
三毛はトレジャーハンターを仕留める寸前だったが、ついに退いた。
仕留めそこなった?
いや、もう一方のハンターが仕留められているようだ。
イリーナ、トグロ、三毛がダメージを受けているものの、引き換えにハンターが戦線離脱、か。
ソーサラー2人の後ろからうーちゃんが襲い掛かっていた。
完全に奇襲。
いや、ソーサラー2人は見逃していたのだ。
自分たちが築いた土壁が邪魔で見えなかったのかもしれない。
矢を喰らい続けていたソーサラーがその一撃で瀕死寸前にまでHPバーが減ってしまう。
『スナイプ・シュート!』
アデルの放った次の矢がそのソーサラーの体に吸い込まれる。
これで、数的優位は成った、か。
『アース・ヒール!』
相手チームもトレジャーハンターを回復させて戦力維持に努めようとするのだが。
既に戦力差は明らかだ。
そしてアデルとイリーナの方針も明らかになりつつある。
前衛のファイターを後回しにして、徹底的に後衛を潰すつもりだったらしいな。
前衛のファイターの足は遅い。
弓の射程と機動力を利用する工夫だな。
まあ召喚モンスターの特性があっての戦術でもあるんだが。
後はなし崩し的に推移した。
徹底的に残っているソーサラーを弓武技『スナイプ・シュート』で撃つ。
うーちゃんとトグロもソーサラーだけを狙い続けていた。
前衛のファイターとはまともに戦闘せず、距離を置く。
ソーサラーが倒れた後はトレジャーハンターだ。
徹底、してるな。
ファイター2名が残った所でギブアップするか、とも思ったが、ファイター2名は最後まで粘った。
それだけに最初の選択は惜しい。
早い段階で挽回できた機会は開始直後にあった筈なのだから。
召喚モンスター4匹に集られ、矢を受けながらの奮戦も空しく、相手チームは敗れ去った。
「おつかれさん」
「勝ちました!」
「最初、ビックリしちゃったけど」
「互いに意表を突かれたな」
「ですね」
「ラッキー?」
ま、そうだよな。
だがやりたかった事を最後まで徹底できたのが一番良かったと思うぞ?
口には出さないけどね。
「次は私の番だな」
「B面でしたね」
「観客席から応援します!」
おう。
絶対に勝てる、とは言い切れない。
だが観戦するに足る戦いぶりは見せておかないと、な。
オレの出番ももうすぐだ。
まあ普段通りに戦う事になるだろうが。
事前に確かめた策も相手次第によっては使うかもしれない。
使わないかもしれない。
あとは流れでお願いします。
さて。
職員さんに呼ばれるのを待つために控え室へ。
なんと言いますか。
視線が痛いのですけど。
「キースさんですね?試合が迫ってます。こちらへ」
職員さんに案内され、試合場に向かう。
対角線の先には既に対戦相手らしきチームがいる。
??? Lv.10
ファイター 待機中
??? Lv.12
ファイター 待機中
??? Lv.10
ファイター 待機中
??? Lv.11
トレジャーハンター 待機中
??? Lv.11
ソーサラー 待機中
??? Lv.10
ソーサラー 待機中
うん。
【識別】してみたらこんな感じではあるのだが。
気になるのはファイター達の装備だ。
1人は刀を所持。
盾は持ってない。
1人は剣を2本所持。
盾は持ってない。
一番レベルが高い1人は何も持っていない。
盾は無論、持っていない。
その手甲は妙にゴツいんですけど。
おお。
潔い連中だな。
前衛の3名のうち2名は攻撃に特化している事は丸分かりな訳だが。
これは観客として見たかった!
後衛はどうか。
ソーサラーは2名とも杖持ち。
トレジャーハンターも注目すべきだな。
こいつも二刀流スタイルの可能性がある。
短めの剣を2本所持。
そして肩ベルトに投げナイフかな?
これは。
このトレジャーハンターの動きがどうなるのか、読めないな。
選択肢がいくつもある。
前衛に出るのか?
後衛から投げナイフで支援?
それとも遊撃?
後衛ソーサラーの護衛、というのもアリか?
まあ戦ってみれば分かる事だ。
なんといってもオレの興味は格闘スタイルのファイターに向いてしまう。
いや、本当に観客として見たかったんだけどな。
主人公 キース
種族 人間 男 種族Lv17
職業 グランドサモナー(召喚魔法師)Lv3
ボーナスポイント残 24
セットスキル
杖Lv13 打撃Lv10 蹴りLv10 関節技Lv10 投げ技Lv10
回避Lv11(↑1)受けLv11(↑1)召喚魔法Lv17 時空魔法Lv9
光魔法Lv9 風魔法Lv10 土魔法Lv9 水魔法Lv10
火魔法Lv10 闇魔法Lv9 氷魔法Lv7 雷魔法Lv7
木魔法Lv8(↑1)塵魔法Lv7 溶魔法Lv7 灼魔法Lv7
錬金術Lv8 薬師Lv7 ガラス工Lv6 木工Lv6
連携Lv12 鑑定Lv12 識別Lv12 看破Lv4 耐寒Lv6
掴みLv10 馬術Lv10 精密操作Lv12 ロープワークLv1
跳躍Lv5 軽業Lv2 耐暑Lv7 登攀Lv6 平衡Lv2(↑1)
二刀流Lv9 解体Lv7
身体強化Lv8 精神強化Lv9 高速詠唱Lv11
魔法効果拡大Lv8 魔法範囲拡大Lv8
装備 呵責の杖×1 呵責のトンファー×2
呵責の捕物棒×1 怒りのツルハシ+×2 白銀の首飾り+
雪豹の隠し爪×1 疾風虎の隠し爪×2 雪豹のバグナグ×1
草原獅子のバグナグ×1 闘牛の革鎧+ほか
呵責の腕輪+×2 呵責の足輪+×2
暴れ馬のベルト+ 背負袋 アイテムボックス×2
所持アイテム 剥ぎ取りナイフ 木工道具一式
称号 老召喚術師の高弟 森守の紋章 中庸を知る者
呪文辞書 格闘師範




