154
ログインした時刻は午前5時00分。
装備を整えて周囲を見回すと、既に人影があった。
アデルとイリーナ、だな。
他にも数名、起きているプレイヤーがいた。
召喚モンスターも当然、うろうろしている。
どうやら朝食の準備をしているらしい。
「「おはようございます!」」
「おはよう。早いんだな」
「キースさんの分も用意してますよ?」
「おお、それはありがとう」
うむ。
文楽はスルーだな。
ヴォルフ、残月、ヘリックス、黒曜、ヘザーを召喚していく。
アデルとイリーナの召喚モンスター達と早速じゃれあいを始めた。
料理をしている近くだと危ないぞ?
「2人とも今日の試合場所は?」
「新練兵場E面です。時間は午前11時ちょうどになりますね」
「時間は一緒か。私は臨時試合場だが」
「試合観戦はお互いに無理?」
「まあそういう事もあるだろうさ」
試合終了後、昼飯の時間にでも落ち合う事にしておいた。
まあお互いにテレパスの呪文もあるしな。
朝食をアデルとイリーナと共に摂り終えると、アデルとイリーナが対戦をする事になった。
インスタント・ポータルの中では狭いので、一旦出て川原で対戦モードを展開する。
観客はオレ以外にも数名のサモナーとその召喚モンスター達だ。
ふむ。
今日は朝からギャラリー三昧ってのもいいな。
試合もあるけど。
観戦しながら、昨晩の話を咀嚼するかのように思い返す。
サモナーが先に狙われる、か。
確かに。
効果的なのは間違いないんだが。
オレが考えていたのは別の事だ。
それ、利用できないかね?
アデルとイリーナの対戦はアデルの中押し勝ちになったようだ。
互いに4匹同時召喚での対戦は初めてだったようだが。
つかさ。
アデルの布陣は虎1匹に狼3匹というシンプルなものであった。
ウッドゴーレムを前衛にして防御を固めたイリーナだったが、機動力の差が出たように見える。
ふむ。
召喚モンスターも特性を特化させたらこういう戦い方もアリなんだろうな。
「うっしゃあ!これで対戦成績は五分に戻ったぜい!」
「やられちゃったわ。足を止めたらダメみたいね」
素直に勝利を喜ぶアデル。
敗北から反省し始めるイリーナ。
彼女達らしい反応ではあるな。
ふむ。
サモナー相手にどう考えるだろうか?
実際にサモナーのいるパーティとやってみたらいいんだよな?
「アデル、イリーナ」
「はい?」
「なんでしょう」
「君達相手に対戦を申し込むぞ」
「「ええーーー!」」
こら、その間は何だ。
既に別のサモナー同士が対戦を始めていたので、その次にやる事にした。
アデルとイリーナのペアは闘技大会の布陣そのままである。
オレの方も、と言いたい所であったが。
それでは戦力が拮抗しない、よね?
リグは外す事にした。
大サービスでジェリコも外そう。
対戦モードっていいな。
ハンデ戦もできる。
「痛覚設定はゼロで!」
「アデルちゃん、やられる事が前提?」
「6対4でも勝てる気がしない!」
「いや、やってみないと分からないと思うぞ?全力で来ていい」
「えー」
「どうせ闘技大会で試合前に全快にして貰える。呪文も使い放題だろう?」
「いや、そういう問題じゃないんですが」
互いの顔を見る2人だが。
さあ、どうする?
「全力で、いいんですよね?」
「うむ。そうでなければ意味がない」
「本気で行きますよ?」
「ああ」
ほう。
少しはやる気になった、のか?
さて。
どうなるかね?
敢えて作戦はない。
普通で行こう。
普通で。
とは言っても久々に陣容が薄いんだよな。
ヴォルフ、戦鬼、護鬼だけだ。
アデルとイリーナの前には虎2匹、狼1匹、それに蛇1匹といる。
最も注目すべきは蛇のトグロだ。
クラスチェンジした事で大型化していて、その大きさはクリープとは比べ物にならない。
だが戦ってみるのも楽しみである。
試合開始。
同時にイリーナを除く全員が動いた。
「練気法!」「メディテート!」「ブレス!」
ヴォルフが先行して突っ込む。
その後を追うようにオレも走る。
オレの横に戦鬼。
護鬼は後方から、弓矢を持って続く。
横へ展開しながらアデルが矢を放つ。
『スナイプ・シュート!』
『スナイプ・シュート!』
彼女達からは呪文詠唱は聞こえてこない。
弓の武技をメインで攻撃を組み立ててくるのか?
矢が肩と腕に命中する。
オレは既に呪文詠唱をしていたが、中断には至らない。
ふむ。
この程度ならまだいけるか?
だが、矢が次々と飛んでくる。
呪文詠唱も始まっているようだ。
「ガゥァ!」
『ギャン!』
ヴォルフと狼のうーちゃんが互いに絡み合うように噛み合う。
しかも凄いスピードで、だ。
普段はじゃれあう仲だが、戦いとなると全力全開ですね。
ヴォルフが優勢だがそこに虎の三毛が介入する。
さすがにヴォルフも距離を置いた。
戦鬼が、トグロとみーちゃんの前に立ちはだかる。
蹴りを見舞う戦鬼。
だがトグロとみーちゃんは互いに攻撃する様子を見せながら襲ってこない。
牽制だけだ。
ふむ。
かなり警戒しているようだな。
トグロに向かって突進していたのを。
進路変更。
アデルに向かう。
横目で後続を見ると、ヴォルフの支援に向かって突進する護鬼が見えた。
その手には既に片手剣と片手斧が握られている。
いつの間に持ち替えたんだ?
「ワールウィンド!」
接近した所で攻撃呪文を放つ。
一気にアデルのHPバーが半分以下にまで減ってしまった。
凄い。
レベル10の攻撃呪文、凄いな!
背後から何かが迫っている。
みーちゃん、だな。
その後ろから戦鬼が迫っている。
一気に乱戦になった。
みーちゃんが凄い勢いで迫ってきている。
杖で突き。
そして間髪を入れずに、薙ぐ。
そのいずれも直撃ならず。
みーちゃんはオレとアデルの間に割り込んだ。
うむ。
互いに速攻で崩す機会を失ったようだな。
『ファイア・ヒール!』
「グラビティ・バレット!」
アデルが呪文で回復を図るのと同時にオレも呪文を放つ。
目標はみーちゃんだ。
ちょうどオレに飛び掛ろうとしていた所だったから大きく姿勢を崩していた。
直撃。
そしてその直後に戦鬼が襲い掛かる。
蹴りがみーちゃんの腹に食い込み、で試合場の外にまで吹き飛んだ。
アデルの視線とオレの視線が、同時にその様子を見ていた。
壁になる存在を失ったアデルに迫る。
矢を番えるのを途中で止めて、ナイフを抜こうとした所で追いついた。
杖を手放すとアデルの腕を取る。
そのまま後ろ手に極めて首に腕を回した。
そして、絞める。
あっという間に落ちてしまった。
ワールウィンドのダメージは回復しきれていなかったようだな。
試合場に戻ったみーちゃんとおーちゃんの姿が消えた。
戦鬼は?
トグロに両足を巻き付けられて地面に転がされている。
状態異常を示すマーカーが戦鬼の頭上のマーカーに重なっているのが見えた。
毒だ。
どうする?
オレの答えはイリーナを優先。
イリーナの壁になり得るのは三毛だけ。
ヴォルフと護鬼、それにオレがいたらイリーナを倒し切る方が、手っ取り早い。
『ダークネス・ステア!』
ヴォルフが直撃を喰らい、暗闇の状態異常になっていた。
護鬼は三毛の相手に優勢でありながらもイリーナに迫る事ができない。
「フラッシュ・フラッド!」
三毛に直撃。
ついでに足が止まってしまったようだ。
護鬼の攻撃が重なって三毛はすぐに沈んだ。
イリーナは回り込みながら矢を放ってくるが、オレと護鬼に同時に迫られては逃げ場はない。
オレに捕まってしまい、裸絞めで仕留められてしまう。
それで終了、になった。
「キースさん!もう1匹、減らさないと相手にならない!」
「アデルちゃん、それよりも今の対戦、色々と反省点があるんじゃない?」
「今のは互いに反省点があった、と思うぞ?」
召喚モンスター達を回復させていきながら、今の対戦の確認をしておく。
そう。
オレの戦略は最初から乱戦狙い。
だが最初の集中攻撃を捌ききれなかった。
攻撃を受け続けて呪文が詠唱中断されるような事態になったらどうなるか?
相当な苦戦は免れないだろう。
彼女達の弱点は明らかだ。
乱戦に持ち込まれたら、どうするか?
壁役の召喚モンスターの動きは?
いい連携だった、とは言い難い。
数で優勢だったうちに色んな攻撃の選択肢があった筈なのだ。
「威嚇させなかったのは?」
「あれって足を止めちゃうんですよ」
「キースさんの所の召喚モンスター相手に隙を見せたくなくて」
ふむ。
だがやってみても悪くなかったと思うんだけどな?
「スナイプ・シュート、というのは武技だな?」
「ええ」
「これ、凄く便利なんです!」
聞けば威力はそこそこ、命中率絶大の弓武器らしい。
そういえばほぼ外れてないよね?
「対戦相手の構成、それに装備を見たら、もっと良い戦い方が出来ないか?」
「でもー」
「相手はプレイヤーですから。想定通りにはいかないでしょう」
「それはそうだがな。乱戦になったら一気に乱れたぞ?」
2人とも目を落とす。
いや、選択している戦闘スタイルは悪くないと思うぞ?
「もう1回だな」
「「ええーーー!?」」
「私にも今の対戦で課題が見つかってる。もう少し付き合って欲しいんだが」
アデルとイリーナは互いを見る。
その目は真剣だ。
「や、やる!」
「お相手して頂けますか?」
おお。
積極的だな。
「うん、だがいいのか?」
「や、やる!」
「今の対戦、敗北でしたけど、色々と技能がアップしましたし」
アデルの声はまだ定まってないが。
大丈夫か?
「私は同じ布陣で、やる」
「はい」
「今度こそ!」
「頼むぞ」
変に聞こえるかもしれないが、本気で頼む。
集中砲火を。
情け容赦のない、集中砲火を!
飽和しても構わない。
サモナーが狙われるという弱点を、乗り越えるにはどうするか?
案なら、ある。
でも実戦で使えるかどうか、それは分かったものではないのだ。
考えてみても仕方がない。
実戦でこそ、浮かぶ妙案もあるだろうしな。
そこから6戦、連続で対戦をこなしてみました。
いくつかのアイデア、そのいずれも効果を試してみた。
正直に言えば、事前に試してみて良かった、と思う。
効果も確認出来たが、欠点も明確になったのだから。
時空魔法の呪文、ディメンション・ミラー。
確かに効果は絶大だ。
だが壁を展開した前面に対して、という条件が付く。
最初から半包囲を仕掛けてくるような相手には効果は薄くなるだろう。
横合いから飛んでくる矢には全く効果がなかったのだ。
それに壁が展開できる時間が短いし、集中砲火の全てを凌げるとは限らない。
攻撃を跳ね返した結果、相手が混乱する事に期待できるし効果的ではあるのだが。
その他の壁呪文の利用。
これも芳しいとは言えない。
状況によっては不利に働くだろう。
呪文で着実なのは、エンチャント系で強化しながら、といった所だろうか。
だがそれも速攻を基本にしているからなあ。
何を?となると優先順位が難しい。
だが大きな収穫もある。
レベル10の攻撃呪文だ。
その威力と特性を確認できたのは良かった。
特に呪文の射程を見極めた意味が大きい。
ワールウィンドの射程は他の攻撃呪文と比べても短めになるようだ。
これは注意せねばなるまい。
「し、シゴキって言わない?これ」
「でもアデルちゃん、得られたものは大きいと思うわよ?」
そう。
彼女達も対戦の中で色々と試みていたのが良く分かった。
オレへの集中砲火をディメンション・ミラーで跳ね返されてからは特に。
攻撃にわざと緩急を付けて攻撃を途切れなくすると同時に牽制してみたり。
呪文も多用してきた。
スペル・バイブレイトで呪文詠唱キャンセルされても動じず、攻撃を続けていたし。
戦闘経験の幅が出来ると
だが何と言っても色々とレベルアップしたらしいな。
アデルとイリーナも魔法技能が強化されたようだ。
オレは?
無論、いくつか上がっている技能があったりします。
《只今の戦闘勝利で職業レベルがアップしました!》
《取得が可能な補助スキルに【平衡】が追加されます》
《只今の戦闘勝利で【掴み】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【魔法効果拡大】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【魔法範囲拡大】がレベルアップしました!》
うん。
まあこんな所か。
しかし、対戦はいいな。
ハンデ戦を通して分かる事は多かった。
どれだけ多様な戦闘を経験しているかによって、対応できる幅も異なってくるだろう。
そう思える。
まあ付き合ってくれたアデルとイリーナにも感謝、だな。
おっと。
補助スキルの【平衡】だが。
昨夜の雑談の中で耳にした奴だな。
船に乗る時だけでなく、戦闘で姿勢を崩されても回復が早くなる、とか言ってなかったか?
これは取得して有効化しておこう。
支払うボーナスポイントは5か。
まあ余裕があるし、いいか。
周囲でも暇潰しで対戦に興じていたのが、徐々に収まりつつある。
レムトの町へ向かう準備を進めつつあるのだ。
オレも陣容を変更する。
ヘリックス、残月、黒曜、ヘザー、ナインテイルといつもの移動布陣だ。
「皆で行くのか?」
「はい」
「その方が安全ですし」
そう。
馬を召喚モンスターとして所有しているサモナーは結構いた。
つか多過ぎ。
結局、20頭を超す騎馬軍団が形成されていた。
馬を所有してないサモナーは他のサモナーの馬に同乗して移動する事になる。
そして頭上には鷹とフクロウの猛禽軍団。
騎馬軍団に随行する狼集団。
まあ安全だろうな。
誰がこれを襲うんだ?
レムトの町には午前9時前には到着した。
当然、魔物は蹴散らしながら進んできている。
つか襲ってきた魔物がいた事が驚きです。
あのホーンラビットにステップホーク、無茶しやがって。
誰かの召喚モンスターが片付けたように思うが、誰も見向きもしなかった。
「ではここで解散ですね」
「本日も同時刻に同会場で開催するよ!」
アデルの号令に唱和するサモナー軍団。
そして狼達の遠吠え。
こええよ!
アデルとイリーナが新練兵場に入るのを横目に見ながらオレも別の試合会場に向かった。
臨時試合場だ。
つか町の規模を拡大する為に新しく作られている城郭の中なんだが。
あちこちに石材が積まれて臨時の観客席と化している。
受付に行ってはみたが、時間が早すぎて控え室に入れなかった。
仕方ないな。
観客席から暫く観戦するか。
残月だけは帰還させておこうかね。
臨時試合場での試合開始は午前9時ちょうどからスタートした。
最初うちの試合は第一回戦の続きだ。
そして今日中に第二回戦は全て終了する事になる予定か。
明日は第三回戦から第五回戦まで、という事になる。
トーナメント表のようなものも無い。
前回の個人戦でもなかった。
それだけに情報収集の意味合いは薄い、と言えるかもしれない。
だがそれがいい。
純粋に、楽しめ。
観戦も苦にならない。
つか実に面白いのですよ。
時刻は午前10時を過ぎた。
試合が早めに進行しているようなので、受付しに行こう。
布陣は試合用に入れ替える。
ヴォルフ、ジェリコ、戦鬼、護鬼、リグとなる。
さて。
今日の相手はどんなパーティになるんだろうか?
分からないだけに楽しみでもある。
主人公 キース
種族 人間 男 種族Lv17
職業 グランドサモナー(召喚魔法師)Lv3(↑1)
ボーナスポイント残 24
セットスキル
杖Lv13 打撃Lv10 蹴りLv10 関節技Lv10 投げ技Lv10
回避Lv10 受けLv10 召喚魔法Lv17 時空魔法Lv9
光魔法Lv9 風魔法Lv10 土魔法Lv9 水魔法Lv10
火魔法Lv9 闇魔法Lv9 氷魔法Lv7 雷魔法Lv7
木魔法Lv7 塵魔法Lv7 溶魔法Lv7 灼魔法Lv7
錬金術Lv8 薬師Lv7 ガラス工Lv6 木工Lv6
連携Lv12 鑑定Lv12 識別Lv12 看破Lv4 耐寒Lv6
掴みLv10(↑1)馬術Lv10 精密操作Lv12 ロープワークLv1
跳躍Lv5 軽業Lv2 耐暑Lv7 登攀Lv6 平衡Lv1(New!)
二刀流Lv9 解体Lv7
身体強化Lv8 精神強化Lv9 高速詠唱Lv11
魔法効果拡大Lv8(↑1)魔法範囲拡大Lv8(↑1)
装備 呵責の杖×1 呵責のトンファー×2
呵責の捕物棒×1 怒りのツルハシ+×2 白銀の首飾り+
雪豹の隠し爪×1 疾風虎の隠し爪×2 雪豹のバグナグ×1
草原獅子のバグナグ×1 闘牛の革鎧+ほか
呵責の腕輪+×2 呵責の足輪+×2
暴れ馬のベルト+ 背負袋 アイテムボックス×2
所持アイテム 剥ぎ取りナイフ 木工道具一式
称号 老召喚術師の高弟 森守の紋章 中庸を知る者
呪文辞書 格闘師範




