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ログインしたのは午前6時ちょうど。
普段通りだ。
そう、普段通りでいいのだ。
《フレンド登録者からメッセージが2件あります》
おや?
サキさんとマルグリッドさんか。
『防具は出来ました。かなりバーバリアンっぽくなりましたけど。いつもの場所でお渡しできます』
ほほう。
戦鬼に防具が出来ました!
リグを貼り付かせたら更に防御力向上になるかね?
いや、リグはティグリスと組ませるのもアリだな。
おっと。
マルグリッドさんのは何かな?
『アイオライト2つは加工出来ました。あとこれはお願い。琥珀は買い取りたいけどまだあるかな?』
おお、こっちも出来ましたか。
で、琥珀買取りって何があるんだろうかね?
文楽を先に召喚しておいて料理を作らせておこう。
残月、ヘリックスも召喚しておいて留守番をさせておくか。
いつもの場所に行くとサキさんとマルグリッドさんが待ち構えてました。
無論、フィーナさんもいる。
レイナも何やら品出しをしている。
リックと不動といったメンバーは何やら後方で肉の出し入れをしているのだが。
冷気を感じる。
間違いない。
「気がついた?氷室を作ったのよね」
「簡易冷蔵庫ですか」
「そう。別の場所では熟成肉もやってるけどね」
フィーナさんも色々とやってますね。
つかフィーナさん主宰のプレイヤーズギルドって何人いるんだろう?
見覚えのないプレイヤーも何人もいるようだし。
「じゃあまずはこれね」
サキさんが重そうに取り出したのは服だ。
鎧、ではない。
柔らかく変形するのだから服という方が妥当だろう。
「素材は茶色熊の毛皮、レン=レンに手伝ってもらってオーバーオール風に仕立てたものよ」
「オーバーオール、ですか」
あれ?
疾風虎の皮は?
ああ、そうそう、兜になるんでしたっけ。
「で、こっちが疾風虎の皮で作った皮兜になるんだけどね」
取り出して見せてくれたのはあれだ。
暖炉の前に敷物にされた虎の皮そのものです。
いや、頭部は兜にちゃんとなっている。
【防具アイテム:服】茶色熊の服 品質C+ レア度4
Def+12 重量20 耐久値300 破壊力低減-2
耐寒判定+10
茶色熊の毛皮製の服。重たいが耐久性は高く柔らかい。
破壊力の低減効果も良好。
【防具アイテム:ベルト】水玉狐のベルト 品質C+ レア度3
Def+1 重量4 耐久値90
水玉狐の皮で作られたベルト。薄手のもので美しい風合いがある。
【防具アイテム:革兜】疾風虎の革兜+ 品質C+ レア度4
Def+7 重量4 耐久値180 破壊力低減-1
魔力付与品 風耐性
疾風虎の皮を加工した皮革製の兜。
疾風虎の皮をそのまま使用しており、美しい一品。
「これはサービスとでも思っていいわ」
取り出されたのは皮製品だが。
【防具アイテム:腕カバー】茶色熊の腕カバー 品質C レア度4
Def+4 重量3 耐久値120 破壊力低減-1
茶色熊の皮製の腕カバー。
皮は厚いが動きを鈍らせる程ではない。
【防具アイテム:脚カバー】茶色熊の脚カバー 品質C レア度4
Def+4 重量4 耐久値130 破壊力低減-1
茶色熊の皮製の脚カバー。
皮は厚いが動きを鈍らせる程ではない。
おお。
サービスにしてはいい装備?
まあそれはいいとして。
戦鬼を召喚して装備させてみようか。
「まさにバーバリアン!」
通り掛かったレイナの言葉です。
完全に同意します。
木の棍棒を持たせたら完璧だな。
特に兜が凄い。
トラの革が肩から背中をそのままカバーする形になっている。
無論、固定箇所は頭部だけだ。
「これは見た目だけでも凶悪よね」
「貴方が作ったんでしょ?」
「そうだけど想像以上よ、これ」
そう、女性陣には見た目も大事なのであった。
しかも厳しい。
作成者であるサキさん自身も納得がいかない様子なんですが。
オレ的には十分ですけど?
「じゃあこっちもね」
マルグリッドさんが宝石を取り出す。
2つのアイオライトだ。
【素材アイテム】アイオライト 品質C+ レア度2 重量0+
別名ウォーターサファイア。群青色の宝石。
希少価値はさほど高くないが、加工次第で魔法発動の助けになる事で知られている。
楕円形多面体に整形し研磨され、銀の台座に嵌め込まれている。
[カスタム]
台座に呪符紋様『螺旋』が刻まれている。
2つとも同じものだ。
今までと変わっているように思えないが。
何も問題はないようですけど?
「で。これなんだけどね」
そう言って取り出したのはアレだ。
呵責の腕輪。
【装飾アイテム:腕輪】呵責の腕輪 品質C+ レア度3
AP+1 重量0+ 耐久値150
魔力付与品 属性なし
獄卒の腕輪。何かの金属。特性は銅や銀に似ているようだ。
装備された腕の拳には亡者を呵責する力が宿ると言われている。
うん。
これもおかしいと思える所はない。
「これらを組み合わせたらどうなると思う?」
そう言うと呵責の腕輪にアイオライトの台座を組み込んだ。
オレに渡して見せてくれたがこれって。
【装飾アイテム:腕輪】呵責の腕輪+ 品質C+ レア度3
AP+5 重量0+ 耐久値150
魔力付与品 属性なし
獄卒の腕輪。何かの金属。特性は銅や銀に似ているようだ。
装備された腕の拳には亡者を呵責する力が宿ると言われている。
[カスタム]
アイオライトを嵌め込んだ台座を連結して強化してある。
あれ?
強化されてるのはAP、即ち攻撃力が向上している?
「奇妙な装備になっちゃってるわ」
そう言うと腕輪から宝石を外すとオレに渡してくれた。
つまり、オレが今、身につけている腕輪や足輪にも同じ事が起きるって事か?
両腕に装備してある腕輪を外す。
両方にアイオライトの台座を嵌め込んで見た。
【鑑定】して見ると同様にAPが向上している。
確認を終えると再び装備した。
「獄卒の鼻輪って奇妙な性格があるみたいね」
「そうみたいですね」
「獄卒の鼻輪はいくつか、貴方以外からも持ち込まれてるけどね」
「いい感じで売れそうですか?」
「格闘スタイルじゃないと活かせないのがネックねえ」
そう言うとマルグリッドさんは溜息をついた。
そんなに少ないんですかね?
「そうそう、琥珀は全部、買い取るわ」
「何かありました?」
「うちのラピダリーの経験値稼ぎにいいからよ」
「ほう」
「雷魔法のレベル1アイテムにしかならないけどね。少しだけど売れてもいるのよ?」
へえ、あれで売れますか。
でも雷魔法を持っていないパーティならば、高くても欲しがるかもしれないよね?
手持ちの琥珀を全て取り出すとフィーナさんが精算を始める。
紋章蜂の針も売りたい分を出して、買い取って貰うことにした。
結局、戦鬼の装備の分と合わせても持ち出しが少しだけで済んだようである。
まあこんな所か。
「ところで今日は大事な約束があるって聞いたわよ?」
「え?」
「決闘するって聞いたわよ?」
「ええ?」
「また女の子を泣かすの?」
「いやいやいや」
「正々堂々と戦ったほうが断然いい!」
まあ、なんと言いますか。
どこからそんな情報が?
「もう色々と噂になってるわよ?逃げちゃ失礼になるんじゃないかしら?」
フィーナさんの言葉が止めになった。
逃げ道はもうないんでしょうか?
ハンネスにまたしても野菜を持たされたので、若木にグロウ・プラントを忘れずに掛けておいた。
もういくつかの木々は立派なものになりつつある。
ヤバい成長度合いに見える。
木魔法の使い手が増えているのかもしれない。
文楽の元に戻ると食事の用意は出来てました。
もうね。
味なんて分かりゃしません。
上の空でした。
そうそう。
召喚しておかないとな。
戦鬼と文楽は帰還させておく。
リグとナインテイル、それにヘザーを召喚しておきましょう。
移動用の布陣だ。
ミーティングでも上の空でした。
何故だろう、見られてる気がする。
いや、気のせいではないな。
見られてます。
報告事項なんて耳に入りませんがな。
「キースさん、宜しいですか?」
ああ。
来ちゃった。
ガヴィが目の前にいます。
横目で見るとフィーナさん達も注目してます。
「ええ、どうぞ」
「対戦条件はデフォルトで良いでしょうか?」
「お任せしますよ」
「了解です。戦闘エリアは円形か方形になりますけど、希望はありますか?」
「それもお任せしますよ」
「分かりました。では円形で」
ああ。
もうダメだ。
逃げ道はない。
村の中央の広場にはミーティングに参加していたプレイヤーが当然いた訳ですが。
減った様に見えません。
まさかこれ、全部ギャラリーか?
いやな世の中だ。
情報がいつの間にか出回ってしまっている。
《プレイヤー名『リディア』さんから対戦が申し込まれました!受けますか?》
《Yes》or《No》の画面を見ながら正面にいるリディアを見る。
兜の奥に光る目が尋常じゃない。
帰っていいですか?
リディア Lv.12
ソーサラー 待機中
彼女を【識別】したんですが。
レベル、上がってます?
まあそれはそれとして。
細かな対戦条件が流れていく。
まあデフォルト条件なのだろうが確認用なのだろう。
場所はこの村の広場。
戦闘範囲は円形、半径は30m。
HP勝敗判定は90%で。
MP使用範囲は90%まで。
試合時間は10分。
判定あり、HPバー残存率で行う。
感覚設定は全て100%。
武器使用は制限なし。
呪文使用は制限なし。
武技使用は制限なし。
回復アイテムは使用不可。
対戦形式は1対1で。
『準備はいい?』
『いつでもどうぞ』
オレのメイン武器は呵責の杖だ。
背中にはサブで呵責のトンファーを2つ、背負っている。
さて、どうなるんだろうか?
開始までのカウントダウンが始まった。
開始まで残り10秒。
一礼する。
彼女もまた一礼していた。
手に持っているのは弓。
装備も闘技大会の時のものと一新されているように見える。
残り、3秒。
手に持っている杖を構える。
最初の手順だけは決めてあった。
カウントがゼロとなってインフォが流れた。
《戦闘開始!》
「メディテート!」
「ブレス!」
「練気法!」
「ツイン・シュート!」
武技を3つ、連続で発動した直後に2本の矢がいきなり飛んでくる。
遠距離を利用しての先制攻撃。
牽制なのは分かっている。
だから無視して突撃を敢行していた。
2本とも直撃はせず、掠っただけだ。
それでも多少はダメージが入っている。
相手の様子は?
動かない。
呪文詠唱をしているのは分かっている。
弓に矢を番えて攻撃の体勢。
どっちが、来る?
だがオレの使う次の一手の方が速い。
武技を、使う。
問題は範囲だ。
もう少し、近寄って置きたい。
矢が、放たれるのが見えた。
同時に武技を使う。
「スペル・バイブレイト!」
矢はオレの肩に直撃。
痛みも走るが、HPバーの減りはそんなに大きくはない。
それに見合う報酬は既にある。
彼女との距離だ。
更に距離を、詰める。
呪文が発動しない事にようやく気がついたようだ。
慌てた様子で弓に矢を番える。
オレはその足元へスライディングして行った。
体勢は十分ではなかった。
それでも足払いが有効であったのは手にした杖も使っていたから、かな?
体を反転して右足の蹴りを腹目掛けて放ち、手にした杖で足元に引っ掛ける。
当然、転ぶ訳だが。
膝十字固めに行くには絶好の体勢だ。
だがオレの脳裏に危険信号が。
いけない。
膝十字は、ヤバい。
色んな意味で。
その一瞬が隙になった。
オレの顔目掛けて蹴りが飛んでくる。
顎に喰らいました。
痛い。
痛くない訳がない。
そして自分に腹が立った。
真面目に、やれ。
蹴ってきた足も腕に捕らえた。
彼女の両足を交差させる。
右足が上に。
蹴ってきた左足を下に。
オレ自身の左脇に彼女の右足を抱え込んで固定。
そしてオレの左腕は彼女の左足の踵を抱え込むように上へと持ち上げる。
杖は手放して関節技に集中しよう。
クロスヒール・ホールド。
両足のアキレス腱を同時に痛めつける技だ。
痛いのは言うまでもない、筈なんだけど。
彼女、かなり耐えてます。
それどころか弓を手放してナイフをその手に握ってますけど?
執念を感じる。
こっちから体を反転させて、互いに腹這いの体勢に移行する。
そのままオレ自身は足を引き抜き、彼女の足は交差させたまま折りたたんでいった。
そのまま変形のインディアンデスロックへ。
杖も拾っておく。
彼女の手にはナイフが握られているが、呵責の杖で払い打つ。
何回か打ち込むと手放してくれた。
これでもう逃げられない筈。
軽く革兜を2回叩いて頭の横の地面を杖で突いた。
「もういいわ、私の負けよ」
「了解」
《プレイヤー『リディア』さんがギブアップしました》
《試合終了!戦闘を停止して下さい!》
勝負はあっけなく終わってしまった。
なんか、あっけなかったような。
革兜を外したリディアの顔はやはり美人さんだ。
以前のような険しさがなくなっているか?
そうでもない。
いや、普段からこんな感じなのかもしれない。
ある種、勿体無い気がする。
それにフル装備していると女性に見えないのもいけないな。
背は高い。
オレとそう変わらないし。
それに胸も。
おっと。
これはいかんな。
つかまあアレだ。
最初から弓矢だけに集中して攻撃を続けられていたらどうだったろう?
呪文と併用する事を前提とした組み立てだったから隙を作る事が出来た訳だが。
弓矢だけで勝負を挑まれていたら?
もっと苦戦していたに違いない。
戦闘フィールドが解除される。
周囲のギャラリーの声が聞こえてきた。
何故だろう、微妙な感じがします。
試合時間が短すぎたせいなのかね?
HPバーは減ったままだった。
だがポーション1つで全快できる範疇である。
問題ない。
だが別の問題が発生。
「キースさん」
「はい?」
「立て続けでアレですが。対戦して頂けますか?」
「え?」
誰かと思えば。
何を仰る与作さん。
「え?」
「いえ、対戦なんですが」
「え?え?」
「貴方に、私が」
「えー」
連戦ですか?
まあ試合がサックリと終わってはいますが。
与作さんの装備は?
メインの斧は以前の得物ではない。
デカッ!
明らかに大きい。
ヤバいよヤバいよ!
鎧も革鎧のままだが、以前の物ではない。
盾は持っていないようだ。
両手斧のスタイルか?
いよいよヤバいぞ。
与作 Lv.12
ランバージャック 待機中
いやいやいやいや。
レベル差が気休めになるかっての!
とてもじゃないが、絡め手なしには勝てそうにない。
オレ、サモナーですから!
グランドが頭に付いても基本サモナーですから!
だが周囲の雰囲気が一気に加熱したように思えるのは何故だ。
期待の視線が突き刺さる。
ヤバい。
断れる雰囲気ではなくなってきている。
逃げ道は?
いや、マズい雰囲気を残すようでは困るし。
しょうがない。
受けるか。
「分かりました。受けましょう」
「ありがとうございます。少し時間を開けますか?」
「いや、早めに済ませましょう」
そうそう。
狩りにも行きたいんですよね。
《プレイヤー名『与作』さんから対戦が申し込まれました!受けますか?》
まあ受ける訳ですが。
奇妙な事が目の前で起きてました。
与作が、その手に持っていた大きな斧を地面に置いた。
背中に背負っていた盾と手斧も地面に置く。
腰のベルトに装着されているナイフを鞘ごと引き抜いて地面に置く。
まだ戦闘フィールドは展開されていない。
周囲の歓声に驚きの声が混じってくる。
これって、素手でやるぞって意思表示だよな?
戦闘開始まであと数秒。
オレの得物は呵責の杖だ。
手放した。
背中のトンファーも外して地面に置く。
挑発だって事は、分かっている。
だが興味のほうが強かった。
お互いに、素手。
最初から格闘戦を挑まれた事に血が騒いでいた。
闘技大会の戦いは判定で決着が着いた。
確かに判定というのはお互いに納得し難いものが残るんですよ。
でもオレの興味は別にある。
どんな戦いになるのかね?
互いに、礼。
そしてカウントがゼロになる。
《戦闘開始!》
戦闘フィールドの真ん中まで歩み寄って互いに構える。
だがその間も、その後も、何も起きない。
武技?
互いにまだ使っていない。
呪文?
互いに使っていない。
意思を確かめるように、徐々に間合いを詰めていく。
武技も呪文も使う様子がない。
使ってくるならこっちも、と思ってたんだが。
どうやら素のままで戦いたいらしい。
これは。
意地でも先に使うわけにいかないか。
武技も。
呪文も。
武器すらも。
ヤバいな。
こんな形で挑まれるとは思いませんでした。
先刻までと異なる感覚が湧き上がってくる。
互いに、動いた。
互いに腰を、少しだけ低くする。
それが本当の戦闘開始の合図だった。
最初は様子見の筈でした。
本当に武技を使わないのか?
呪文は?
武器は?
使う気配はなかった。
緑のマーカーを見たら、呪文による効果が追加されていない事が分かる。
「チッ!」
「シッ!」
短いが鋭く口から漏れる、音。
裂帛の気合の、音。
そして互いを叩く、音。
今のオレにはそれしか聞こえてこない。
HPバーがジワジワと減っていく。
手数はオレの方が多い。
だが1発で減るHPバーはオレの方が明らかに大きい。
様子見でこれだよ。
互いに芯が通るような打撃も蹴りも入っていない。
与作の動きを見ると分かる。
オレを捕まえる機会を狙っているのだ。
間違いない。
拳を握りこんでいないし。
それなのに軽い牽制程度のジャブが凄いダメージなのはどういう事なの?
このままでは、不利だ。
罠。
明らかに、罠。
それでも懐に踏み込むしかない。
「ッ!」
「ッ!」
虚を突くだけの余裕もない。
ダッキングした瞬間に飛び込んだ。
ボディに、右の直突きを1発。
直撃。
だがその手首は掴まれてしまう。
そのまま与作が体を反転、腰を落とす。
与作の右手がオレの左脇を持ち上げるように差し込まれた。
分かる。
視野の端に与作の右足が伸びていくのが見える。
次の刹那。
オレは地面に叩きつけられていた
「グッ!?」
ダメージは?
今のは?
体落しか?
次は何が来る?
混乱はするが、目の前に足があるのが、良かった。
足首を取りに。
行けない。
オレの右腕は掴まれたまま、離されていなかった。
与作の上半身が。
オレに迫って。
来ますよ?
袈裟固めか。
反射的に脚を跳ね上げて与作の首に引っ掛ける。
カウンターで首を絞められたら最高だ。
そうでなくとも腕拉ぎに行けたら次善。
最悪、袈裟固めを逃れる事ができればいいんだが。
捉われていた右腕を無視して強引に首を刈る。
何が起きるかは承知だ。
首を刈る事は出来たものの、ロックするまでには至らない。
体を捻って袈裟固めから脱出を。
いや。
与作もまた空いた右手で次の技に入ろうとしている。
首を刈っているオレの右脚を抱え込んで。
足首を、極めようと、している?
いつの間にかオレの右手は離されていた。
好機?
いや、次の危機が迫っている。
与作は柔道ベースだった筈だが。
柔道に足関節技は、ない。
反則である。
だが反則技なら、かつてあった。
さっきの抑え込みだって短刀を併用したり拳で打撃を加えるのは明確な反則だ。
有効だからだ。
抑え込みで一定の時間経過で効果、有効、技あり、一本とポイントがある。
それだけの時間を相手に与えると、それだけのリスクを負う事を意味するからだ。
30秒もあれば短刀で喉を裂かれて殺されているだろう。
足関節に来る与作の後頭部を左足で蹴って右足を抜く。
脱出。
そして柔術立ち。
見れば与作も柔術立ちをしている。
今の攻防は完全に与作のペースだった。
いや、相手が柔道ベースで戦ってくるというオレの思い込みが招いたミスだ。
少し、頭に来た。
何やってるんだ、オレ!
今度はオレから、仕掛ける。
自分のミスは自分でカバーするしかないではないか。
「ッ!」
「ッ!」
今度のオレの狙いは、腕だ。
柔道のように組む。
そんな訳あるか。
一気に与作の左腕を引き込んで腕返し。
オレの左肩に与作の手がかかる。
体を反転、出来ない。
だがそれは最初から承知済みだ。
逆回転。
小手返しに移行する。
腕だけで倒せる自信などないから左手で肘を抑えて、投げた。
いや、転んだって所だが。
それで十分。
狙うのは腕挫ぎ十字固めだ。
極まる、と思った瞬間。
与作の両腕がロックされているのが見えた。
そりゃそうだ。
柔道技でも良く使われている関節技だしな。
防御に長けているのも当然か。
「ンムッ!?」
「チッ!」
力を込めたか、と思ったら。
オレの体が、浮いている。
なんてパワー。
そしてオレは一転、窮地に立たされていた。
地面に、落とされる?
先に技を外して後転、柔術立ちへ。
直後に与作から蹴りが飛んできていた。
なんとか腰を落としてブロック。
つか与作が蹴り?
今日、初めて喰らったような。
だが今の攻防はこっちに利があったか?
HPバーの残存量は互角に戻っている。
互いに4割ほど削れていた。
革兜の奥に目が見える。
驚きの色はない。
怒りの色もない。
ただ見開かれていた。
そして唇の端が僅かに釣り上がっていた。
楽しいのか?
そうか。
オレも、きっと楽しんでいる。
痛いんだけどな。
互いにダメージはある。
だが互いに踏み込みあった。
拳が。
蹴りが。
頭突きまでもが飛んでくる。
立ち関節も与作は使ってきた。
逆に手首を極めに行くが、構わず投げを打たれる。
オレは足関節を狙う。
転んだ所で再び寝技の応酬。
互いに立って距離を置く。
そう。
中々、決め手がない。
オレの方が攻めている。
そこには自信があった。
だがどうしてもパワー負けするのだ。
体格も差が大きい。
寝技も地味に効いてくるが、何といっても投げが危険だ。
地面に叩きつけられると同時に上に乗っかってくるのだから、そこから脱出するだけでも大変です。
だがそうも上手く戦闘は続かない。
互いにミスが出た。
与作のミス。
横へ回り込もうとしたオレにサイドキックを放った事だ。
オレのミス。
そのサイドキックを捌こうとせず、跳躍して飛び蹴りに行った事だ。
飛び蹴りは直撃した。
しかも足の先で。
だがその代償で与作に捕まってしまっていた。
キャッチされたまま、地面に叩きつけられる。
その衝撃は半端なかった。
体ごとだったのだから当然だが。
その衝撃で対応が遅れた。
抑え込みが、来る。
だが、来ない。
与作の意識は飛んでいるようだ。
《プレイヤー『与作』さんが戦闘継続不能になりました》
《試合終了!戦闘を停止して下さい!》
勝った。
確かに、勝ってますけど。
HPバーの差は一目瞭然。
オレは2割ほどしか残っていない。
与作は3割、残ってます。
MPバーは互いに戦闘開始時のままだ。
最後まで、武技も、呪文も、武器すらも使わなかった。
だがオレには納得できない事がある。
飛び蹴りって。
あんなの、当たると思って放ったものではない!
窮余のうちに出鱈目に放ったようなものだ。
狙ってのものでは断じて、ない。
戦闘フィールドが解除される。
同時に与作に駆け寄るプレイヤーが何人か見えた。
《只今の戦闘勝利で【打撃】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【蹴り】がレベルアップしました!》
《只今の戦闘勝利で【受け】がレベルアップしました!》
うわお。
色々と上がってるじゃないの。
「いい試合だったね!」
「お疲れ様」
オレの後ろにレイナとマルグリッドさんがいた。
いつの間に。
フィーナさんもオレの肩に手を掛けてくる。
「そのままで。回復は私達がやるわ」
「いいんですか?」
「ま、観戦料って所でいいんじゃない?」
彼女達から呪文詠唱が聞こえてくる。
3つの回復呪文でオレのHPバーは全快になったようだ。
与作は?
既に意識は回復しているようだ。
オレに向かって歩いてくる。
足取りは確かだ。
「完敗でした」
「いや、最後の蹴りは偶然でしょ?」
「負けは負けですよ」
互いに握手。
もうそれ以上は必要なかった。
強い。
いや、怖くもある。
技の幅が広くなっていた。
それに彼のレベルはオレよりも確実に低いのだ。
果たして同列で語っていいのか?
それに装備の差もある。
呵責の腕輪。
それに呵責の足輪。
もし、これがなかったら?
結果は逆であったのかも知れないのだ。
そもそも、本来の得物を装備して戦っていたら?
結論。
ランバージャック、恐るべし。
与作、恐るべし。
オレもこの戦闘スタイルを変える気は当分ない。
だが明確に弱点は、ある。
それを再認識した事こそが収穫だろう。
そう思う事にしよう。
主人公 キース
種族 人間 男 種族Lv15
職業 グランドサモナー(召喚魔法師)Lv1
ボーナスポイント残 24
セットスキル
杖Lv12 打撃Lv10(↑1)蹴りLv10(↑1)関節技Lv9 投げ技Lv9
回避Lv9 受けLv10(↑1)召喚魔法Lv15 時空魔法Lv8
光魔法Lv9 風魔法Lv9 土魔法Lv9 水魔法Lv9
火魔法Lv9 闇魔法Lv9 氷魔法Lv7 雷魔法Lv7
木魔法Lv7 塵魔法Lv7 溶魔法Lv7 灼魔法Lv7
錬金術Lv6 薬師Lv5 ガラス工Lv3 木工Lv6
連携Lv11 鑑定Lv11 識別Lv11 看破Lv3 耐寒Lv5
掴みLv9 馬術Lv9 精密操作Lv11 跳躍Lv5
耐暑Lv6 登攀Lv5 二刀流Lv9 解体Lv7
身体強化Lv7 精神強化Lv8 高速詠唱Lv9
魔法効果拡大Lv6 魔法範囲拡大Lv6
装備 呵責の杖×1 呵責のトンファー×2
呵責の捕物棒×1 怒りのツルハシ+×2 白銀の首飾り+
雪豹の隠し爪×1 疾風虎の隠し爪×2 雪豹のバグナグ×1
草原獅子のバグナグ×1 闘牛の革鎧+ほか
呵責の腕輪+×2(New!)呵責の足輪×2
暴れ馬のベルト+ 背負袋 アイテムボックス×2
所持アイテム 剥ぎ取りナイフ 木工道具一式
称号 老召喚術師の弟子、森守の紋章 中庸を知る者
呪文辞書 格闘師範
召喚モンスター
ヴォルフ グレイウルフLv3
残月 ホワイトホースLv2
ヘリックス ファイティングファルコンLv2
黒曜 ミスティックアイLv2
ジーン ブラックバットLv2
ジェリコ マッドゴーレムLv1
護鬼 羅刹Lv1
戦鬼 レッサーオーガLv1
リグ イエロープディングLv1
文楽 ウッドパペットLv5
無明 スケルトンLv6
ナインテイル 赤狐Lv6
ヘザー フェアリーLv5
ティグリス タイガーLv4
クリープ バイパーLv3




