表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
FD-煽りで始まる新世界  作者: Yuzi
一章
30/34

26 本当は気付いてる

 偵察龍イベント。

 主人公パーティーが様々なところで活躍することで噂になり、遂には龍にまでその情報が届いた。

 主人公の力が人間種の英雄となり得るだけのものなのか確かめる為に選ばれた偵察役との戦いが偵察龍イベントだ。

 恐るべきはその致死率。

 初見のプレイヤーの命を悉く奪っていったそれは実に95%以上と言われている。

 これは適当に言っていた数字なのでどうかわからないが俺は普通に殺された。

 そんな極悪イベントが主人公たちを襲おうとしていた。


 主人公パーティーが王都に近づいてきている。

 ゲームでの戦闘場所を探したんだが、現実のこの道ではどこかよくわからなかったので適当に道から外れた場所で待ち伏せた。

 この場合の適当は、適度に当たっている方だ。

 ある程度見渡せて、相手からは見えにくいそんな場所だ。

 少し待つと来た、先に到着したのは偵察龍の方だった。


 俺は偵察龍がどんな龍か知っていたので驚きはなかったが、知らないメーヤとミヤは大いに驚いていた。

 驚きすぎて声を上げそうになったので止めた。

 偵察龍の恐ろしさを伝えると青い顔をしていた。

 自分たちが何も知らず襲われたときのことを考えてしまったのだろう。


 そんなことをしているうちに四人組の男女が近づいてくる。

 騎士剣を携えた長身で全身甲冑の男、もしくは女━━主人公。

 巫女服でハーフのようにも見える美人━━龍の巫女、アスカ。

 長身の無精髭でありながら爽やかさを感じる槍を携えたイケメン━━絶槍士、クーリオ。

 身長の低い、背負った大盾に隠れてしまいそうな、美男子のようにも見える可愛らしいピンク色の髪をした少女━━鉄壁で絶壁でツンデレでロリで……属性盛りすぎ、レオーネ。

 ゲームでいつも見ていた主人公パーティーだ!

 まだ偵察龍の姿を見つけてはいないはずだが、警戒態勢になっている。さすがは主人公パーティーといったところか。


「お初にお目にかかる、そなたが人間族の救世主と呼ばれる存在でよろしいか?」

 主人公パーティーが近づいた時、偵察龍が語り出した。

「ハァ?」

「気をつけてください、何か違和感を感じます」

 ……なんだろう、すごく懐かしくも鬱陶しい声を聞いた気がする。そしてゲームで聞いていた注意をアスカが言った。

 そんなことを思っているとレイン? が突然偵察龍に斬りかかった!

「ハァ!」

「え、アンジェ様?」

「うぉ! いきなりかよ!」

「あのバカ! フォローいきますよ!」

 主人公パーティーはそれに驚きながらもなんとか態勢を整えた。

「おのれ! 話すことはないということか! 流石は下等な人間種、こうなれば是非も無し、叩き潰してくれようぞ!」

 今回ばかりは偵察龍の方が正しいと思う。

 それにレオーネがアンジェと言っていた。よかった! 俺の性転換疑惑は白、現世でも男だということが確定しました! ありがとうございます!


 そんなことを思っているとアンジェとクーリオに向かって偵察龍がブレスを放った。

 なるほど、主人公の能力を見極めるために後ろにクーリオがいる状態でブレスを放ったのだな。

 流石に頭も良い。

 だが、結果がどうなるかわかっている俺は安心して見ていた。

 次の瞬間、その光景に目を疑った。

 主人公がブレスを避けたのだ!

「え? グッギギィ! うわぁぁぁ!!」

 まさか避けるとは思っていなかったクーリオはブレスが直撃、少しは耐えたが消し飛ばされた……

「クーリオォォォ!!」

 知れず叫んでいた。彼のエピソードが思い出される。

 王都一の騎士にして、槍の達人。

 彼のスキルは絶対刺突━━確率で相手の魔力を貫き、通常の1.5倍の攻撃を放つことができる。レベルが上がれば防御力無視攻撃も放つことができるようになる。

 反魔法体質系の攻撃スキルだ。

 最初は騎士団長と目されていたが、彼の槍は突きすぎた。

 男も女も関係なく、正確な数はわからないが四桁に近いと語っていた。

 宿屋に泊まると、『お前もどうだ? 俺が天国に連れて行ってやるぜ!』と毎回誘われるのはどうにかして欲しかった。

 そんな両刀使いで見境のない絶倫のために騎士団長になることもできず半ば厄介払いで主人公パーティー入りする。

 そんなクーリオが目の前で死んだ。


「クーリオ殿!」

 叫ぶレオーネはアンジェを冷たい目で見ていた。

 当然だ、アンジェは完全なる反魔法体質、ブレスなど打ち消すことができる。だからクーリオは避けもしなかったのだ。

 しかしアンジェは気にすることなく偵察龍に突っ込んでいった。

「グルァァァ!」

 偵察龍の尻尾での一撃がカウンター気味に放たれる。

 アンジェはなんとか回避したがその時、ヘルムが掠ったのか飛んでいった。

 アンジェ動きが鈍くないか? ゲームではいつも身体を鍛えまくっていたのに、こんな動きのはずが……

 それにしてもあの女の顔、誰かに似ているよな。

 うん、俺、本当は気付いてる。


 クーリオの死が衝撃すぎたり、目の前の事実を認められず呆然としているとさらに動きがあった。

 アスカも補助魔法などをかけていたがついにはアンジェが偵察龍に捉えられた。

 アンジェが攻撃を受けそうになったのを見てレオーネが助けに入り、そのまま偵察龍に噛まれ、上半身と下半身が分離した。

「レオォォォネェェー!!」

 鉄壁で絶壁でツンデレでロリで……属性盛りすぎのレオーネェェ!!

 呆然としていたらレオーネまでもが犠牲に。

 レオーネは親衛隊隊長候補だった。

 だか、見た目の問題もあり選ばれることはなかった。

 見栄えというのも隊長職には必要だったのだ。王都で出世し、人々のために頑張るという彼女の願いが叶わないと知った時、主人公の話を聞く。

 主人公についていけば多くの人々を救えると思った彼女は主人公パーティーに入ろうとする。

 そのときのツンデレぶりとドジっ子属性などなど盛り過ぎの属性に掲示板は荒れたとか荒れなかったとか。

 彼女のスキルは鉄壁━━魔法系の攻撃をある程度防ぎ、またパーティー全員にまでその効果がある。

 反魔法体質系の防御スキルだ。

 主人公が個の完全魔法防御ならレオーネは全体への不完全魔法防御となる。

 人気キャラクターランキング堂々一位のレオーネが目の前で死んだ。


 真っ白になっている俺にさらなる衝撃が━━

「ハァァァァァァ!」

 あいつ食われやがった!

 糞女のお株を奪うようなセリフを言いながら、俺は目の前の光景を疑った。

 龍に丸齧りにされてやがる!

「お兄ちゃん! まだ生きている人がいるよ!」

 メーヤも呆然としていたようだが、ゲームで彼らを知っている俺よりショックが薄かったのか意識を取り戻し、俺に注意してくれた。

 そんなメーヤの言葉で意識を取り戻し、巫女を救いに行く。


「そんな、みんな……」

 膝を折り、唖然として呟くアスカを助けるために動く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ