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FD-煽りで始まる新世界  作者: Yuzi
一章
29/34

25 現実は一番のクソゲー

 とりあえず、嫌な予感がするので更に鍛えた。

 それに今の俺たちには成長率を高める装備品もある。

 中級迷宮のクリア報酬として手に入れたそれは、クリアすることで解放される一風変わった物だった。

 征服者への憧れ、守護者への憧れ、侵略者への憧れ、知識者への憧れ、智慧者への憧れといった装備品だ。

 中級迷宮で階層ボスを倒し手に入れていた、『???の玉』がクリアと同時に解放され、真の名前が表示されるようになり、装備可能となった。

 これらは装備者のステータス成長率をそれらが対応するものに限り、引き上げることができる。

 征服者は攻撃力、守護者は防御力、侵略者は速さ、知識者は知力、智慧者は精神力に対応している。

 これらは装備品扱いでありながら、アクセサリーなどと重複して装備ができた。

 ゲームでも不思議な設定だと思っていたが、中級迷宮をクリアして理由がわかった。

 その玉を持ち、装備と念じると身体に吸収されるのだ。

 外すと念じると身体から出てきた。また2つ装備しようとしても先に吸収された方が出てきた。

 なるほど、体内に吸収されるのならそりゃアクセサリー類とは別枠だわ。


 ただ、中級迷宮をクリアできるというとゲームの中ではレベル50程度は最低限必要とされていた。なので中途半端なレベルでの入手ということであまり人気はなかった。

 わざわざ低レベルで中級迷宮クリアを目指すまでのメリットはない、と。

 まあクリア後にアイテムを引き継げるので、周回プレイを楽しむ人たちには好まれた。まあ全体的に雰囲気が暗く、鬱々としたシナリオの多いファイナルドラゴンを周回プレイしてまで楽しんだ人が何人いたかは知らない。

 素晴らしい名作と語る人も多かったが、残念ながら肌に合わないと言う人も多かった。

 俺は鬱々としたシナリオにイライラはしていたものの名作だと思っていた。


 懐かしい日のことを思い出したものだ。

 ゲームでは名作だと思っていたが、現実になると……

 現実は一番のクソゲーだとはよく言ったものだと感じた。

 だが、そんな中で生きていかなければならないので、憧れ系の装備品も有効活用させてもらおう。

 幸いなのかわからないが、俺の能力値はあまりレベル依存ではないし、メーヤも最初からチート級だし、ミヤもスキルがアレなので、俺たちはゲームでの最低限必要レベルを下回って中級迷宮をクリアすることができていた。

 それからは俺は防御力に不安があるので守護者への憧れを、ミヤは長所を伸ばすために侵略者への憧れを、メーヤには何を装備させるべきかわからなかったので余り物の中から智慧者への憧れを選んだ。

 精神力を上げると状態異常になる確率を下げられるはずなのでそれに決めた。

 回復役が状態異常になるのは避けるべきだからな。


 そうして上級迷宮で修行に励みつつ、時を待った。

 周囲から聞こえてくる主人公たちの動向からそろそろ王都に戻りそうだ。

 そうなれば、偵察龍イベントに突入することだろう。

「そろそろ俺たちの出番があるかもしれない」

 2人にも告げておかなければ。

「……そう、なら」

「あぁ、この世界の主役という者に会いに行こう」

「お兄様、本当にその方たちは敵にならないのですか?」

 不安そうにミヤが聞いてくるが……

「前にも言ったけどそれはわからない。俺らは本来なら敵対する関係だ。だが奴が動かなければ人類が滅ぶ」

 そう告げるとメーヤとミヤは何か言いたげな表情をした。二人ともそこがあまり納得できないみたいだ。

「言いたいことがあったら言っていいんだぞ」

 俺がそういうとメーヤが普段俺に向けることがない睨みつけるような視線で

「お兄ちゃんさえ無事なら人間が滅んだって!」

 と叫んだ。

 こんなに想われて嬉しいという気持ちと重いなぁっという気持ちがあった。

「私も、お姉様と同じ意見です」

 メーヤもミヤも真摯に俺を心配してくれているのがわかる。

 だが、俺としても救いたい人物もいる、気にくわない現状も打破したい、狂いたくない。だからここで引く選択肢は俺にはない。

「二人の気持ちは嬉しいが俺は止めない。だが、死ぬ気もない。そのために鍛えたんだし、メーヤもミヤもいる、だから安心している」

 そういって二人を抱きしめる。

「ふへへぇ〜〜〜任せて、お兄ちゃんを守るのは妹の役目だもん!」

「あうう……微力ながらも頑張りますです!」

 照れる二人を見るのは楽しい。

「それに俺が死ぬとメーヤが後を追いそうだからな」

 なんて調子に乗って冗談を言う。

「うん、お兄ちゃんが死んだらあたしも後を追うよ。お兄ちゃんが寂しくないように」

 さも当然といった感じで言うメーヤ。

「お兄様もお姉様もいない世界なら私にとって価値はないです。私も後を負わせてもらいますです」

 同じようにミヤも言った。

 調子に乗って冗談を言うんじゃなかったと後悔した。

 最初から死ぬ気なんてものはないが、家族二人分のそれも妹の命が俺に掛かっているとなるとプレッシャーが……


 とりあえず王都の方に移動を始めた。

 これからが本番だ。

 正直どうなるかわからない。

 俺たちがどういうポジションで主人公たちと接することになるのかもわからない。

 ただわかるのはここからは引き返せない、数多くの鬱イベントが俺たちに襲いかかってくるということだ。

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