22 殴り込みに行けばいいのだろうか
主人公がこのまま王宮から出てこない場合はどうしたらいいのだろうか。
殴り込みに行けばいいのだろうか?
いや本格的に人類の敵認定されるだけだな、ラスボスらしいといえばらしいけど。
「お兄ちゃん、どうする?」
「私たちはお兄様に従いますです」
俺たちの準備はある程度整っていた。
だが動きがないならもっと修行を行うか、主人公達の代わりに俺たちが動くべきなのか、悩んでしまう。
こんなイレギュラーは想定してないよ!
本格的に危険な状況になってきたら動いた方がいいのかもなぁ。
でも徒労イベントもあるし、それらは無視だな。
そんな状況なので王宮の様子を近くから伺うことにした。
周囲で情報を集めると、どうやら外に出たがる主人公たちを王が引き止めているらしい。
たしかにイベント終了後は引き止められ、勧誘されたような……
この世界の王は、他のゲームや漫画、小説の王と異なり、龍が人間を管理しやすいように設定した役職だ。
その為、賢王なんていう言葉とは無縁の存在が多い。
さらに話を聞いていくと主人公であるレインも王に賛同しているらしい……
レイン……いや、たしかアンジェの場合、舐められないように最初は男装してレインと名乗っていたな!
良かった、俺の性転換疑惑はまだ灰色のままだ。
それにしても主人公が王に賛同するなんてあり得るのか? 大方、言語に制限が掛かっているのをいいことに王が適当なことを言っているのだろう。
だが、そろそろ動き出さないと主人公パーティーのレベル上げとかも厳しいと思うんだが……
「とりあえずパーティーメンバーが王の説得に動いているようだし、少し様子を見る」
「わかったよ、お兄ちゃん!」
そういってメーヤが右腕に抱きついてくる。
「お姉様、そういう行動は感心しないのです! もう成長したのですから子供の頃とは違うです」
それを見たミヤが切れ長の目をさらに細めて注意した。
「ミヤ、兄妹だからいいでしょ。それにそんなこと言って自分だけすましていても、耳がピクピクしてるわよ。自分も抱きつきたいって思ってるんでしょ?」
そう指摘されるとミヤは顔を真っ赤にした。
「そ、そんな、ことはないのです……」
どんどんと声が小さくなっていく。
「まあ、ミヤも一緒に抱きつくとあたしの胸と比較されて困るってのはわかるんだよ」
あ、ミヤの目から光が消えた……
「メーヤ言い過ぎ、そういうのも個性だから比べるものじゃない」
「でもお兄ちゃん、あたしが胸を押し付けると嬉しそうだよ?」
なんて、何てことを言うのだろう!? くそ! 俺も男の本能には逆らえないのか……
「ク、ク、月夜の晩ばかりと思うなです」
ミヤが暗いし、怖い! その戦闘スタイルは暗殺者っぽくなっているので、似合うセリフではあるのだが……
そんな恐ろしい状況をなんとか回避しつつ、夜はミヤを抱き枕にして寝た。
ミヤは若干体温が高く抱き枕にちょうどいい。
というか、ミヤの機嫌を直してくれる条件がこれだった。
メーヤだと肉感があれで抱き枕にはちょっとね。
メーヤが反抗してか、後ろから抱きついてきている。
俺の理性凄いな、継承龍ありがとう! でも俺が苦労する理由もこいつだった。
もう食った後だから死体に鞭打つことはしないが、したら俺が痛いだけだし、うん、やっぱり感謝は違う、する必要はないな。
次の日、街は慌ただしくなっていた。
警備兵と思われる者たちが街中で隊列を組み動き回っていた。
どうやら主人公パーティーが夜逃げしたらしい。
目撃証言も多数あり、警備兵が捜索中ということでこんな騒ぎになっていた。
目撃証言の中には、レインは担がれて運ばれていたというものがあり、それについてはよくわかっていない。
まあ、とりあえず主人公パーティーが動き出したということで安心して次の修行に移れるというものだ。
初期の難関イベント、死霊龍、血塗れセルファはこちらで終わらせているので大丈夫だと思うのだが……
あ、偵察龍イベントがあったか!




