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FD-煽りで始まる新世界  作者: Yuzi
一章
16/34

13 育て方が悪い?

本日二回目

 そんな風に思った時からもう何時間経ったのだろうか……

 鉄鎧龍(てつがいりゅう)はタフ過ぎる。

「グギャーオ! グギャーオ!」

 痛みに悶える叫び声が洞窟内に響く。

 恨むなら自分のタフさを恨んでくれ。


 今回こいつと戦おうと思ったのには色々な理由があったが、戦闘面では二つ。

 飛べないこと、そして動きが遅いことだ。

 そう思って来たのだが、こいつは鉱石を食べ過ぎていた。

 関節部にもそういった物が固まっており、本当にゆっくりとしか動けていなかった。

 確かに普通の人間ならこんな鉄塊どうしようもないだろう。

 ただし俺の左腕は龍だ。

 その爪や牙は精製されたオリハルコンなどには負けるかもしれないが、ただの鉱石なんかには負けはしない。

「グギャーオ!」

 こちらに気が付いたのか雄叫びをあげる鉄鎧龍。

「お兄ちゃん!」

「大丈夫だ!」

 坑道内ということもあり、それだけで揺れ、恐怖を感じてしまったメーヤを励ましつつ飛んだ。

 飛び回っている最中に叫ばれると、一瞬身体が硬直した。

 こんな弱点があるなんて! 少し後悔しつつ、メーヤが落ちないように気をつけつつ、どうするか考える。

 とりあえず、飛び回りながら隙をついて鉄鎧龍の鎧に噛み付いた。

 やはり鎧は削れた。

 攻撃は通る、なら後は……

 その時、閃いた!


 俺たちは高速で飛び、叫ばれる前に鉄鎧龍の下にたどり着いた。

「お兄ちゃん! ここは絶対に危ないよ!」

 そう喚くメーヤをなだめながら語った。

「いや、逆だ。ここが一番の安全ポイントだ!」

 そう、関節がほとんど曲がらなくなるまで固まってしまっている鉄鎧龍は、足を畳んだり、投げ出したりして地面に身体を押し付けることができなくなっていたのだ。

 龍の尻尾による強大な一撃も足が邪魔してここにまで届いていない。

 後は左腕で鎧と鱗、肉を削りながらトドメを刺すだけとなった。

 こんなにバカなのだから、こいつはもしかしたら人間を苦しめるために火山を噴火させたのではなく、たまたま火山を噴火させてしまっただけかもしれない。

「お兄ちゃんに力を! 力を! 力を! 強化!」

 メーヤの強化を受けて俺は削り出した。


 鉄鎧龍の叫び声が坑道内を震わせ、精神的にも疲れるこの作業の終わりがようやく見えてきた。

 心臓が見えたのだ。

「お兄ちゃ……」

 リザードやリザードマンとは違う、龍を殺すことに抵抗があるのか、足が震えている。

 だが、やめるわけにはいかない。

 最初は狂いたくない一心だったが、メーヤを一人残すわけにもいかなくなった。

「俺の為にも、メーヤの為にも俺はこいつを殺す」

「メーヤの、ため?」

「ああ、俺はこの先、力を手に入れないと狂ってお前まで傷つけるかもしれない……。お前を一人にするわけにはいかないし、俺もそんな最後を迎えたくはないからな」

 そういって笑うとなんだかメーヤの目がキラキラしだした。

「ならあいつをぶっ殺そう、お兄ちゃん!」

 ……もしかして俺の育て方が悪いのかな?

「鉄鎧龍、お前の力をもらうぞ!」

 そういって心臓を食らい、ドラゴンイーターのスキルを発動させた。


 ━━スキル『ドラゴンイーター』が発動しました。

 そんな声が聞こえた。

「グギャーオォォォーン!!」

 その時、突然鉄鎧龍が叫び、暴れだした!

 そうしてガンガンと身体を壁にぶつけ出した!

「なに? なんなの」

 メーヤが驚き、俺に抱きついてくるが俺は焦っていた。

「飛ぶぞメーヤ!」

 そういってメーヤを抱きしめ、全力で飛び逃げた。

 ちょっとして爆発音が聞こえた!

「お兄ちゃぁん……」

 半泣きのメーヤに答えることもできずに一心不乱に飛ぶ。

「後ろぉ! 後ろから炎がぁ!」

 ああ、わかってるよ!

 メーヤを正面から抱くように身体を動かした。

「メーヤも翼! 飛ぶんだ!」

 このままでは間に合わない! こんな状態で抱き合いながら飛んだらもしかしたらバランスが崩れ、摩り下ろしになるか、炎に焼かれるかもしれない。が、何もしなければ焼かれるだろう。ならやるまでだ!

「うん、お兄ちゃん!」

 メーヤもそのことに気がついたのか、ちゃんと返事をして羽ばたいた。

 俺たちの兄妹パワーでバランスも取りつつ、今までより速く、力強く飛び、なんとか坑道を抜けられた。


「なんとかなったね、お兄ちゃん……」

「お前のおかげだ、メーヤ」

 そういって頭を撫でる。

「ふへへぇ〜」

 泣いた跡がまだ残っているのに笑っちゃってまあ。

 もう使える手が残っていないので、そこは舌で舐めといた。

「ふひゃぁ!?」

 驚かせてしまったらしい。そりゃ舌で舐めたらダメか。


 アイテムボックスを見ると

 鉄鎧龍の爪、牙、鱗、鉄鎧石、火石、炎石、溶岩石などが大量に入っていた。

 俺もドラゴンイーターの力で防御力、魔力が少し上がったようだ。

 しかし、まだ背中に両翼が揃うことはないようだ。

 片翼でもブレスを放てるようになったが安定しないし、結構大変だから早く生やせるようになりたい……

 そして危惧していたあの姿になることもないようだ。

 まあ鉄鎧龍は弱い方だから大丈夫だとは思っていたが、安心した。

 それにしてもあの鉄鎧龍、身体を壁に打ち付けるとか何考えてやがるんだか……

 あんなの大量の火石系を纏っといてやるなんて、ダイナマイトを身体中に巻いて火をつけるのと同じような行為だぞ!

 本当に恐ろしい奴だった。


 こうして大量の素材が手に入ったので大剣も打ってもらえるだろう。

 名匠タークスの師ダークの大剣。

 これは期待できる! 俺ワクワクしてきたぞ!

 ルンルン気分で一刻も早く帰りたくなり飛ぼうとしたが、今翼竜系に襲われたら辛いので素直に歩いた。

「お兄ちゃん、強くなろうね」

「突然どうしたよ?」

「だってメーヤ、今回補助魔法の強化しかできなかったよ……」

「大丈夫、もう少ししたらメーヤも強くなれるさ」

「本当に?」

「ああ」

 俺がそういうと嬉しそうに手をブンブンと振り回している。

 メーヤは本当に強くなれる。

 主人公が苦戦するほどに。

 そして俺が育成しているのだ、ゲーム時代より確実に強くなる。

 というか、産まれからチートに限りなく近いんだから。

 ……もしかして対をなして主人公、ラスボスが生まれてきたと思っていたが、メーヤも合わせて三人一組、だったりしないよな? もしくはパーティーメンバー分でもう一人、とか……

 まあ裏設定とかで本来はパーティーメンバーだったのかもしれないし、あまり考えないようにしよう。

 いろんな意味で頼もしく育ってくれそうな妹を見てそう思った。

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