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ご覧いただきありがとうございます。さくさくと降りていきます、もうすぐIDです!
MAP一気に更新しました。距離感や小さな地域追加など細かい調整などまだあるかもしれませんが、とりあえずこれで行こうと考えてます!
「ね、ねえアルト……もしかしてここを通るつもり? 流石に冗談よね……」
顔面蒼白なコトハが、先に掛けられた吊り橋を見て言った。
吊り橋は深い谷と谷を繋ぐ唯一の交通手段だ。辺り一帯は険しい崖となっており、次の地域に行くには橋を渡るしかないのだが、木製でボロく、おまけにところどころ底が抜けているものだから、コトハは身が竦むような思いなのだろう。
「冗談じゃないって。大丈夫、踏み外してもシステム的に落ちはしない」
「システム的にって、そんなのどうしてわかるのよ!」
「むかし橋の外へ落ちようとしたことがあるんだけど、見えない壁があって――」
「あ、あああんた、頭おかしいんじゃないの!!? ねえフィイも何か言ってよ!」
コトハが振り向いた先、そこに金髪ローブの姿は既になく、
「……あれ?」
フィイはお喋りする俺たちをよそに、ちゃっかりと吊り橋を渡り終えていた。
「どうしたのかね二人とも。旅路の会話もまた一興ではあるが、いい加減こっちにきたまえよ。いつまでたっても先へ進めないではないか」
はあ、とフィイが溜め息をつく。俺たち三人の中で最年少だが、ああ見えて一番肝が据わっているのは彼女かもしれない。
「フィイは怖くないの!? こんな、あり得ない高さなのに!」
「高さていどでおののいていては、われは聖職者などにはなっていないのだ。これもまた信仰の力、敬愛する女神さまがわれを正しき道へと導いてくれる」
「何を意味不明なこと言ってるのよ! それじゃあわたしの女神さまはいったいどこ!? 誰がわたしを導いて――」
ふと、コトハと目が合う。
「……」
その瞬間、まるで奈落の底に希望を見いだしたかのような瞳で見つめてくるコトハには、途轍もなく嫌な予感がした。
「ねえアルト、ちょっと歩き疲れちゃったー、橋を渡るまでおぶってくれない?」
「断る」
あまりにも分かり切っていた問いだったから、思わず即答で返してしまった。
「な、なんでよ! 歩き疲れたって言ってるでしょ!」
「見え透いた嘘をつくな。お前は吊り橋が怖いだけだろ。いいか、こんな程度で俺の力を借りようとするな。橋くらいひとりで渡れ」
「そんな……だって、だって、わたし!」
やばい、またコトハがぐずり始めた。勘弁してくれ、ここは他の冒険者も通る道なんだぞ。こんなの誰かに見つかったら、いかにも俺が泣かせているみたいじゃないか。
「だあぁー、もう! 分かったから早く乗れ!」
ペタンと座っているコトハに手を差し出す。
その途端、晴れ渡った面持ちになった彼女が背中に飛び乗ってきた。さっきのアレは演技だったのか?
「さすがアルトね、本当に頼りになるんだから」
「……橋を渡り終えるまでだからな。着いたらすぐに降りろよ」
「もちろん、任せてちょうだい!」
いったい彼女に何を任せればよいのだろうか。
まったく分からんが……それよりも分からないことがある。
先ほどから背中に当たっているモノは何なのだろう。柔らかいような硬いような、やけに妙な感触である。
「あ、アルト――ねえ、あんまり揺らさないでよ」
「それはどうして?」
「それは、えっと……だからその……」
コトハは理由を伏せたそうに言葉を濁した。
やるなと言われたらやりたくなるのが人の性だが、良心を捨てた鬼畜に成り下がるのでやめておこう。たぶん怖いからだろうし。
「さあ着いたぞ、ここから先は自分で歩け」
背中から降りたコトハは、しかし「ありがとう」とお礼を言うでもなく、まるで仇敵に向けるかのような鋭い眼差しを向けてきた。
何で怒ってんだこいつ。相変わらず彼女の地雷原が掴めない。
「アルトくん、左右に道が見えるのだが、どちらに向かえばいいのかね」
ここから先は知らない地域なのか、フィイは分岐路を見て唸っていた。
「左だ。こっちの崖道をくだっていくと、やがて谷底に辿り着く。右はトルニヤ峠へと繋がっていて〝闘争都市バルドレイヤ〟への順路だな。いずれここも通る道だ」
「驚いた……アルトくんは本当に全ての地理を把握しているのだな。――そしてここもまた一筋縄ではいかなそうだ、モンスターの姿が確認できる」







