93.受験
いつものように真清の家に朝飯を食いに行くと、真清の髪の毛が黒くなっていた。
「おおー!? マジかこれ、受験対策か?」
真清は中華鍋を振りながら、こちらを見もせず答える。
「まあな」
「ハァー……」
「今は忙しいから後でな、そこにある物勝手に食ってくれ」
「いつもありがとうございます、いただきます」
「おはようございます弦司、弦司は受験大丈夫ですか?」
真風くんが、朝から重い話題を突っ込んでくる。
「志望も決まってないってヤバイかな?」
「うわー……姉さんはもう志望決まってますよ」
あの真風くんにドン引きされてしまった……ヤバイね? ヤバいよね?
「まあ、写真集の売り上げで工夫すれば遊んで暮らせるような気もしますが。
それとも僕のお婿さんになりますか?」
「うーん、あの売り上げに手を付けてしまったら、もう立ち直れない気がする……」
「まあ、同感です」
「どこで生きていくにしたって努力が必要なんだよ。
その事を俺は真風のプロ意識から学んだよ」
真風くんは目を丸くした後、顔を赤く染め、下を向いて低糖質パンを黙って『もっもっ』と食べていた。
「「いってきまーす!」」
「ハイ、いってらっしゃい」
見送ってくれているのは真風くんだ。
真風くんは小学校の頃から学校に通っていない。
家に籠って延々となんだかよく分からない創作活動や作業している。
撮影や仕事で出かけて何日も帰らないとかもざらだ。
今もセーラー服を着ているが、別に学校に行ったりしない、ただの部屋着だ。
登校途中の通学路で真清に志望大学について聞いてみる。
真清はいつもの金髪を黒髪に染めて、プリン頭を卒業して、いつもの派手なピアスも取り外している。
相変わらず胸元は派手にまろび出てるけど、後ろから見たらお嬢様に……は見えないな。
「なあ真清、大学ってもう決めてる?」
「あー……法〇大学にスポーツ推薦の方向で進めているけど」
スポーツ推薦か、その筋肉は伊達では無かった。
「ふーん、それって偏差値どれくらい?」
「学部によるけどたしか53から65くらいだったな」
ゲッ!? 俺の偏差値55だからギリギリじゃん! ヤベー……
「弦司もいい加減受験に真剣になれよ? あたしにプロポ―ズするんだろ?」
「ハハハ……頑張ります」
「そこは『頑張ります』じゃなくて『やります!』だろ、弦司は子供だなぁ……」
ぐっ!? 二の句が継げない。
話を変えよう。
「レスリングと言えば吉〇沙〇里が居た、至〇館大学はどう?」
「あーあそこはレスリングでのスポーツ推薦が難しかったんで、入るなら普通の受験かな。
偏差値も50からだし」
あー、個人的にはそっちの方が一緒の大学生活できてよいなぁ……
まあこう言う逃げの姿勢が『子供』と言われてしまう原因なんだろうけど。
つーか、真清はヤンキーの癖に意識高いんだよなぁ……
阿我妻家の遺伝子恐るべし。
「大学からあたしは名実共に弦司の物になるから、ちゃんと努力しろよ!!」
「ハイ、やります!!」
「よろしい」
そう言って真清は『ニシシ』と嬉しそうに笑った。




