87.第二部完結編:結果
真雪さんはトートバックからA4サイズの茶封筒を取り出した。
勝負は初版の売り上げで決まる。
「ああ、二人とも重版決まったから。初版は全部売れたわ」
「「「ええ……ッ!?」」」
二人とも初版が全部売れたって事は引き分け?
そんな明日の天気でも言うように、あっさりと結果を。
……いや逆に良かった、ゆっくりじわじわとは結果を伝えられるより良かった。
周りを見渡すと、真風くんがほっとしたような顔をしている。
真風くんは自分を追い詰め過ぎなような気もする。
「真風、残念だったな勝負は引き分けの様だな」
「……弦司の処女を貰えなくて残念です」
そう言いながらも、口を尖らせた後、真風くんは安心したように笑った。
――良かった、ある意味一番良い結果に落ち着いた……
「いや違うぞ、この勝負風くんの負けだよ」
「「「……えッ!?」」」
「初版の発行部数が違うんだよ真風が10万部で弦司が15万部だ」
「僕が、負けた……?」
「出版社の判断だからね。うちらにはどうしようもないさ……」
真風くんはソファから立ち上がり肩を落として青い顔をしてうつむいていた。
「……初めから結果は決まっていた……?」
「オイ真風大丈夫か?」
真清が真風くんに声を掛ける。
「……これは僕に対する皮肉でしょうか?
男として生まれてしまった僕への……
生まれた事が失敗で、勝負する事さえ許されないと言う事でしょうか……」
「真風大丈夫かっ!?」
俺は真風くんに近づき、その肩に手を掛けようとした。
「ヒッ!!?」
真風くんは小さな悲鳴を上げ俺の手を強く払いのけた。
真風くんが体を捻った拍子に派手な音を立てて転んだ。
「だ、大丈夫か!?」
「ウワッ!? あああ!?」
そのまま四つん這いで不器用に廊下に向けて逃げ始めた。
俺は廊下に顔を出して、走り去っていく真風くんの背中を見ていた。
玄関のドアが閉められる音が廊下に響いた。
「弦司! 真風を追い掛けろ!!」
真清がそう叫ぶ。
俺は真清の顔を見る。真清は真顔で俺を真っ直ぐに見ていた。
真雪さんを見るとソファにだらしなく体を預けこっちを見ていない。
俺はちょっと『イラッ』としたが素早く廊下へと翻した。
「「真風を頼む!!」」
真清と真雪さんの声が廊下に響いた。




