71.みつどもえ③
「ま、真風くんもそう思うよね?」
「そうですねー……僕はですねー……」
阿我妻家のリビングで俺は『水着を着よう!!』と言う提案をしていた。
真雪さんには、話も聞いて貰えず、真清は中立、真風くんと言う危険人物に一縷の望みを期待するしかなかった。
何なのこのクソゲー?
真風くんは嬉しそうに目を細め口の両端を上げていた。
捕食動物が獲物を前にした時にする歓喜の表情だ……
「――弦司、僕に~? “お手”して貰えますか? わんちゃんみたいに?」
真風くんはそう言って自分の右手を差し出してきた。
ぐっコイツ……いつも俺の世話になってる癖に、急にサディストの顔を出してきやがった。
俺は迷わず差し出された真風くんの手に自分の手を乗せた。
「わん!!」
フッ……プライドなどとうの昔に捨てて来た……母親の胎内にな!!(イケボ)
真風くんは『ブルッ』っと電流が走った様に震えた後
感極まったようなだらしない顔をして膝から力が抜け崩れ落ちそうになっていた。
「じゃ、じゃあ、つ、次は、ち、チンチン?」
真風くんが顔を赤くして、俺の股間を凝視している。
俺は迷わずズボンのチャックに手を掛け素早くチャックを下げた。
軽快な音を立て滑り落ちるチャックのスライダー。
俺は今、完全に、開放されようとしている!
「わーッ!!? やっぱいいです!! チンチンはキャンセルで!!」
「いいのかい? 俺のトミーガンが火を噴くぜ?(イケボ)」
俺はジョ〇ョの登場人物に成り切って、ジョジョ立ちを華麗かつ奇妙に決めた。
「い、いいです!! トミーガンはしまって下さい!!」
『弦司は時たま大胆に行動するから困ります……』そんな事をブツブツ言って真風くんは大きく深呼吸をしていた。
真風くんは真雪さんに向かって話しかけた。
「ママ、僕も水着を着た方がいいと思います。弦司はドーテーですから、刺激が強すぎると思います」
「うーん……風くんがそこまで言うなら……ドーテーじゃしょうがないか……」
真風くんの味方に付ける事に成功したが何か腑に落ちないな……
真雪さんの態度が俺の時と違い過ぎるし。
なんかすごくディスられたような……
――まあいいや……素直に条件が緩和された事を喜ぼう。
その時俺の灰色の脳味噌に天啓が舞い降りた。
名案が思い付いた!? 水着を取りに行く振りをしてそのまま逃げてしまおう!!
「あっ俺、実家から水着持ってきますね?」
真雪さんがなんの気も無しに答えて来た。
「あー旦那のあるから貸してやるよ、自分のも探さなきゃいけないし。
んじゃ一回、解散! 各人用意して三〇分後に風呂前な?」
「あ、ハイお気遣いありがとうございます……」
現実はそんなに甘くはなかった……




