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66.写真集④
真雪さんが真風を抱きかかえ。
「データ! 動画データー!!」
と叫んで真風くんを抱きかかえたまま真雪さんは居間を走って出て行ってしまった。
ドップラー効果を伴って、真風くんの泣き声が遠ざかって行く。
台風が過ぎ去った後のような静けさの中、俺と真清はお互いの顔を見合わせていた。
「あれはしばらく掛かるな……」
真清がそう呟いた。
「あー……」
「後で弦司も行けよ?」
「あー……分かった……」
あそこまで感情を激しく表した真風くんを初めて見た。
真風くんはダウナーだから、落ち込む事はあっても激しく感情を表すと言う事はあまりなかった。
「思春期ってこえーな……」
「まあ弦司とあたしはただ馬鹿みたいに遊び惚けてただけだからな」
そう言って真清は嬉しそうにニヤニヤとしていた。
「んでどうすんだよ弦司?」
「何が?」
「写真集、脱ぐの?」
「脱がん!!」
俺は脱がない!!
――いやしかし真風くんのあの様子を見ると、
よっぽどの事が無い限り精神の安定は期待できそうにないな……
はたして子供の頃の動画だけで、真風くんの安定は取り戻せるだろうか?
良かろうが悪かろうが前に進まなきゃ駄目なのか?
真風くんが壊れようとも答えを出さなきゃ駄目なのか?
「うーん……」
「真風の事考えているんだろ?」
真清はたまに変に勘がいい。




