65.写真集③
真風くんの真っ暗な、何もかも吸い込む深淵を湛えた瞳
狂気と正気がせめぎ合う美しくも背徳的な両眼
『人間にこんな目が出来るのか』と、純粋な恐怖と感動がそこにはあった。
「――弦司……」
真風くんの瞳がキラキラと輝き、急速に潤んでいく。
――緊張の糸が途切れた様に、真風くんはへにゃっと眉が垂れ下がり。口は何かを堪える様に半開きになった。
膝から崩れ落ち、ペタンと地面に座り込む。
「お、弦司の……子供の頃見だいぃぃぃ~~~!!? ふあああぁ!!?」
そう言うと真風くんは大声で泣きだしてしまった。
耳まで真っ赤になった顔をぐしゃぐしゃにして大声を上げる真風くん。
「弦司が見たい!! でもでも! 弦司が!? 弦司がと、遠くに!!
ぼ、僕はどう、どうッ!!」
『うわ、うあぁぁぁぁ!!』と大声を上げ地面に顔を伏せて泣く真風くん。
真風くんの動向に注視して次の一手を考えていた俺は、
完全に想定外の真風くんの号泣に思考がストップしてしまった。
「え? ええ? 真風大丈夫か?」
そこに居間でTVを見ていた真清が大声で叫んだ。
「ぅあーーッ!!? ママが! 真風泣かしたッ!!?」
立ち上がり真雪さんを責める様に指差す真清
「ああああ!? ふ、風くん!! ごめん!!」
真雪さんがソファから立ち上がり真風くんに抱き付く。
「ごめん風くん!! 泣かないで!」
「ママ……子供に交換条件出して嫌な事やらせるって、普通に虐待だろ……」
「ゴメン風くん! 本当にごめん!! データーは後で全部上げるから!!」
一度火が付いた真風くんは中々泣き止まない。
「――大惨事だ……」
収拾が付きそうにない居間の惨状を見て、俺はそう独りごちた。




