64.写真集②
「あう、あうう……」
狼狽する真風くんを見て真雪さんは『しめた!』とばかりにニヤリとした。
「風くんよく考えてみろ、弦司だって歳を取って劣化するかもしれないだろ?
今の可愛い弦司を写真や映像で残しておきたいだろ?」
「あう、あうう!? い、いやでも弦司が……僕の弦司がどこか遠くに行ってしまうかもしれない!
ぼ、僕はもう弦司無しじゃ生きて……」
真風くんはそう言うとソファから立ち上がり俺に抱き着いて来た。
「弦司! 弦司!! どうか遠くに行かないでください! 僕を捨てないで!!」
そう言うと真風くんは俺の太腿の間に顔を埋めた……
真風くんは、自分を落ち着かせる様に『スーーー、ハー』と大きく息を吸い込み吐き出した。
俺の股間に顔を埋め、うっとりと瞳を虚空に漂わせ、ファンに見せられないだらしない顔をする真風くん。
「――えへへへ……弦司臭いです……」
「……真風は感情の動きがピーキー過ぎる!!」
事態を静観していた真雪さんが口を開いた。
「風、そういや弦司は子供の頃からそりゃもう、ものすごく可愛くて、
向こうの両親もアタシ達もそりゃハマったもんさ」
真風くんが猫耳を立てて、真雪さんの話に反応する。
立ち上がりフラフラと真雪さんの前に立つ。
「『子供の頃から可愛い』ってその話くわしく……!?」
真雪さんは『食い付いて来た!?』とばかりにいやらしいニヤニヤとした顔をする。
「まあ可愛い過ぎて、うちも向こうもビデオカメラ買い込んで大量に動画を取ったもんさ……
風くん、子供の頃の可愛い弦司の動画見たいか?」
「見たいですッ!!」
目を爛々と輝かせる真風くん。
これほどまでに真風くんが物事に興味を示した事があったであろうか?
ちょっと記憶にない。
「じゃあ何をすればいいか分るよな?」
真雪さんは『堕ちたな……』と言わんばかりの今世紀最大のドヤ顔をかました。
ヤバ……俺大ピンチ……
真風くんが敵に回ったら俺に勝ち目がある訳がない。
真風大魔王からは逃げられないのだ!?
真雪さんマジ汚い! 手持ちのカード量が違い過ぎる!!
――どうする……?
「――弦司……」
真風くんはゆらりとこちらへ振り向き、俺を見ている。
吸い込まれそうになる深く黒い虚無を湛えた大きく丸い眼球
真風くんは一端ギアが噛み合い動き始めると、恐ろしい勢いで物事を始める。
そうして何もかも飲み込んで、何か恐ろしい物を生み出す事が出来る天才なのだ!
その天才の気迫がジワジワと漏れ出し、周囲に沁み込んでいく。
大魔王と凍てつく波動
――大魔王からは逃げられないッ!




