63.写真集①
「弦司、脱げ」
「嫌です」
阿我妻家の居間で俺と真雪さんはこんな押し問答をしていた。
「弦司……チャンネル登録数も上々だし、コメントで写真集望む声が多いんだ。
人気があるんだからしょーがねーだろ。脱げ」
「嫌です」
「三〇由〇夫だって脱いで写真出してるんだぞ! 羽〇がヌード写真集出したら男のお前だって興味あるだろ?」
「う……真雪さんらしからぬ理詰め……」
真雪さん男の裸に対する執着心が凄い……
正直引くわぁ……
「風くんだって二冊目の写真集出してるんだ、お前だって使ってるだろ?」
「使ってませんよ……歯止めが利かなくなりそうだから……」
「くっコイツ正論を!? ドーテー臭くてスゲームカツク……」
「嫌な物は嫌です。絶対に脱ぎませんから!」
真雪さんは呆れたような顔をして大きくため息をついた。
「オイ、風くん、弦司に何とか言ってやってくれ」
ソファに座る真雪さんの隣に居る真風くんは、退屈そうに窓の外を眺めてあくびをしていた。
真雪さんをちらりと見やると、そのまま無視して、スマホを取り出して弄り始めた。
「オイ! 風無視すんな!!」
「……嫌です……」
「ハア?」
「僕はもう嫌なんです……弦司がこれ以上……」
そう言うと真風くんは押し黙ってしまった。
その姿を見た真雪さんは、それ以上言葉を継げる事ができなくなってしまった。
気を取り直したように、俺の方へと力強く振り向く。
――強い、めげない人だな……
「ハア……じゃあどうしろって言うんだよ? 金か? 女か? 他に何か欲しい物でもあるのか?
無理か、女には不自由してないもんな? うちの真風と真清が居るんだから?
金も真清の為にバイトできるぐらいだ、それ程執着してないんだろ!?」
ムカッ!?
真雪さん、堂が入ったヤンキーだけあって天性の煽り屋だな。
確かに色々執着が薄いし、それは真清や真風くんのおかげとも思うけど。
母親の真雪さんにそう言われると、普通に腹立つな。
絶対脱がないからなチキショー!!
「何と言われようと俺は絶対に脱ぎませんから……」
真雪さんは『ヤレヤレ』と言いながら、真風くんに話し掛けた。
「なあ、風くん……弦司だって年を取るんだぜ?
可愛い最高の弦司を記録に残して置きたくは無いのかよ?」
真風くんは見た事も無いような驚愕の表情を浮かべた。
まるで『考えた事も無かった!?』と言わんばかりだった。
真風くんは落ち着きなく顔を左右に向け腕を上げ宙を掴むかのように同じく左右に向け振っていた。
『あうう……』と落ち着きの無い声を上げるその姿は、まるでスリラーの一幕を踊っているかのようだった。
「うあ!? あうう。あうあうぅぅ!?」
真風くんは混乱している!




