39.二次性徴
カチャリ、ガチャガチャガチャと音を立ててサムターン錠と南京錠が三つ閉められた。
真風くんは作業机にある椅子に座り。俺はベッドに腰を掛けた。
真風くんが真剣な顔をして重たい口を開く。
「――弦司、僕、悩みがあるんですが……」
「うん」
つーか真風くん悩みしかないんじゃない?(辛辣)
すっごい生き辛そうだしね。(他人事)
いつも思うけど真風くん重いよね(辛辣)
『天才故の苦悩』と言うけど真風くん見てると実感できるよ。(他人事)
「弦司聞いてます?」
「うんうん聞いてる、んで何?」
「僕の今後の方針についてなんですけど」
「ハイハイ」
「二次性徴後の肉体完成予想図で『ロリ』と『自然』と『マッチョ』だと弦司はどれが好きですか?」
肉体完成予想図? ロリ? 自然? マッチョ?
「え? ゴメン何を言っているのか理解できない」
「僕これから成長するじゃないですか? どう言う肉体に進化しようかなと」
「――あー……うんうん分った」
漫画で言ったらガンスミ〇キャッツのミ〇ーメイと刃〇のジャック・ハ〇マーね。
漫画でよくある成長止めたり、筋肥大や骨延長する奴ね、完全に理解したわ。
「――それって自分で選べる物なの?」
真風くん行き着く所まで行ってんな、未来を生きてんな。
「弦司はどれが好きとかアリマスカ?」
「重い、フツーにコエーよ、真風くんの発想が怖い、俺の好みが反映されるとか怖すぎる」
「お嫁さんは可愛い方がイイデスヨネ?」
「だから重い上に怖いっての、お願いだから人の話を聞いて?」
「いや冗談ですよ、本当にできるか分かりせんし」
「真風くん絶対冗談じゃないよね?」
気軽に好みを言ったらそれに寄せて来る。マッチョとか言ったら大惨事じゃねーか。
範馬勇〇郎『僕をお嫁さんにして下さい』
こんな感じか? 最悪だ……
まあでも――これから二次性徴を迎えるのは結構不安だよな。
その不安な気持ちを一人で抱えたくないと言うのも分かるよ。
うーん、そうだなー。
まあマッチョは無いな、本当申し訳ないけど可愛いは正義だろ。マッチョは無い。
自然に任せるのが良いような気もするけど。
「ロ……」
「ロ?」
「ど、どんな真風くんでも可愛いと、お、思うよ……」
「――弦司……逃げましたね? これから二次性徴を迎えるに当たって、
僕がどれだけ不安な毎日を過ごしているか分かりますか?」
真風くん眼が怖い……眼力が凄すぎる……
死ぬ! 自身の未来を知った弦司の外見は百年経たかのように変わり果てた。 生きたい。
「コ〇ギ……?」
「――何ですかソレ? あんまりふざけていると犯しますよ?」
どっちで?
――ガチで余裕が無いな真風くん。
しょうがない……真面目に答えるか……
軽く咳払いをして場を整える。
ンン、オホン。
真風くんの顔を正面から見据える。
本当顔がいい、真風くんはなんでこんなに俺が好きなんだろうか?
そんな今と関係無い事を考えていた。
「方針は『誰と一緒に生きるか』によると思う。真風は将来誰の隣に居たい?」
「――そんなの決まって弦司の隣に一生……あっ!? そうか……」
「俺の隣にいる理想の自分に寄せたら?」
「――弦司が理想です……僕は弦司になりたかった……」
嬉しそうな、悲しそうなそんな表情を浮かべる真風くん。
その感情は方針が決まった安堵なのか、理想を実現できるか分からない不安なのか。
「――弦司……ごめんなさい」
落ち込んで申し訳なさそうな顔をする真風くん。
思春期真っ盛りなら普通だろう、ましてや真風くんは結構面倒臭い子なのだ。
面倒臭さ込で俺は真風くんの事が好きなのだ。
反省しているようだし真風くんを慰めてやるか……
「チッうるせーな……甘えさせてやるから、飛び込んで――来いよ?(イケボ)」
「――――!?」
顔を真っ赤にして恥ずかしがって急にモジモジし出す真風くん。
上目遣いで『いいの?』と言いたげな視線を送って来る。
いつもの押しの強さはどうしたのだろうか?
「早くしろよ。俺の愛が――要らないのか? (イケボ)」
猫のような俊敏さを持って俺の胸に飛び込んでくる真風くん。
胸のあたりに鈍い衝撃が走った。ぐはッ!? マジいてぇ!
「弦司! 好きです! お嫁さんにしてください!!」
真風くんは両腕に力をいっぱいに込め、強く抱きしめて来る。
愛情を確かめる猫の様に何度も顔を擦りつけて来た。
この後滅茶苦茶ハグした。




