103.セレクション
「レスリング部のセレクション受かったわ!」
「セレクション?」
肌寒くなり始めた季節、阿我妻家でちょっと早い晩飯を食べていると。
真清は聞きなれない言葉を口にした。
セレクション? 多分スポーツ推薦に関わる話でめでたい事なんだろうけど。
不勉強で分からない。
これ下手に答えたら地雷踏んだりしないよね?
「おめでとう、でいいんだよね?」
「あー説明してなかったか。スポーツ推薦の試験みたいなものだな」
「おめでとうでいいね! 真清頑張ったな」
「えへへ」
少女の面影を色濃く残す、照れた真清の笑顔。
この少年の様な趣も次第に失われていくのかと思ったら少し寂しくなった。
「おー真清、セレクション受かったのか!! おめでとう!!」
横から急に現れた真雪さんは大声でお祝いの言葉を真清に言った。
そういや少年の面影を色濃く残す。この人がいたな……
真清もこの人みたいに中身おっさんの、
ボーイッシュタイプのポ〇モンに進化するのだろうか?
「うん、ありがとう……」
真清はちょっとしおらしくして、真雪ママに返事をした。
「後は本試験だけど、まあ色々助けがあるそうだから問題ないだろ。
あたしの遺伝子を引き継いだ娘だからな」
「まあ、ね。
あのさ、弦司と話があるからちょっとどっか行ってくれない?」
「ふーん……邪魔者は退散するわ」
そう言って真雪さんは俺に向けて親指を立ててサムズアップした。
なに? なんの意味が?
「あのさーあたしなりに頑張ったんだよ」
「うん」
「と言う訳でナデナデを所望する!」
「うっ!?」
同じ受験生と言う立場で一歩先行く、
真清の頭をナデナデするなんて資格が俺にあるのか?
「お、俺にその資格があるのか?」
真清はいつの間にか床に正座で座って待機していた。
「早く!!」
真清の気迫に押されて、俺はゆっくりと手を伸ばして頭に触れた。
これはテストだ。
俺の今までの受験勉強の成果をナデナデを通して推し量ろうとしている。
「フッ弦司、あたしの意図に気付いたよーだな。
全力で掛かってこい!」
「ウォオオオオオッ!!」
ナデナデナデナデナデ!!
「いや、ちょっと撫で過ぎ、もっと優しく。禿げるだろ」
「あ、スイマセン」
ナデナデ。
「うーん、まだまだだな。自信が足りてないな。もう一歩だな」
「そうなの?」
「一月のセンター試験に向けて頑張れよ」
「ハイ……」
ナデナデで分かるもんなの?
真雪さんの読心術の例もあるからな。
嘘とも、間違っているとも言い難い。
……阿我妻家の人は付き合い辛いなぁ。
「ん? なんか言った?」
「いえ、特に何も……」
「まあとにかく頑張れ!!」
そう言うと真清は満面の笑顔で親指を立ててサムズアップした。




