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第91話 蒼銀、舞う

 黒と虹の渦に飲まれ、翔真の肉体が消失する。

 それは敵の総大将――ないし、エース級を撃破したということではあるが、まだ戦いは終わらない。よって、周囲の援護に回ろうとしたものの、深緑色の魔力弾に強襲される。


「……っ、流れ弾……」


 完全な不意打ちではあるが、この程度の魔力の塊など自らの力で吸収してしまえば、何の脅威にもならない。

 一方、セラたちが他の戦域に到達しそうな攻撃を打ち漏らしている辺り、戦況の荒々しさを物語っていた。


「魔法も使えない。剣も届かない! さあいつまで逃げ切れるのかしらね。お尻の青いお嬢ちゃん!」

「貴女こそ、それだけ撃って一発も当てられないのですか?」


 イザベラと呼ばれていた女性は相も変わらず、魔力弾で弾幕を張っている。

 両手の基部から接合された大量の砲身は、彼女自身がまともに動けなくなるほどの重装備であり、この局面においては凶悪過ぎる武装だろう。

 しかもセラは魔眼の様に魔法と別口の力を持っていない。故に戦闘力の減衰は俺たち以上であり、見るからに苦戦を極めているが――戦闘中の彼女と視線が交錯する。


「逃げる……そうですね、時間を稼いでも元の状態に戻る保証もないですし、そろそろ止めましょうか」

「一体何……ハァ!?」


 “援護は要らない”――セラはそんな感情を爆発させんばかりの勢いで戦場を疾駆した。


 実質、近距離一本と無尽蔵の弾幕。

 互いの相性は最悪であり、この状況であれば自殺行為に等しい行為。


「まあいいわ、蜂の巣にして上げるッ! “エピテル・バスター”!!」


 そんなセラを見て、イザベラはここぞとばかりに砲身を全面開放(フルオープン)

 光る残滓(ざんし)と共に魔力弾をばら撒く。

 全方位への範囲攻撃とあって回避は不可能。


 だが、セラは魔法として外部放出するのではなく、聖剣に魔力を凝縮させて盾とすると、そのまま一点突破。

 さっき翔真を斬り裂いた時の焼き直しの如く、イザベラの下へと到達すると、流れるような動作で片方の主砲を基部ごと叩き斬った。


「ごきげんよう。そして、さようなら」

「ざっけんじゃないわよ! このアバズレがァ!! ほぐっ!?」


 更に返しの一閃でもう片側の砲身も斬り裂き、聖剣はそのまま鞘へ――。

 直後、驚愕しているイザベラの頬を左手で殴り飛ばした。


「ここまで距離を詰めてしまえば、その重装備は無用の長物。逃げ場はありませんね」

「お、っ!? おおっ、ぐぅ!? ごげっ!? ふごっ!?」


 拳で顎をかち上げ、膝を腹に叩き込む。

 そこから始まったのは、電光石火の連撃。

 イザベラは(およ)そ、女性が出してはいけない声を上げながら面白いように打撃を浴びていく。

 自分の身すら守れていないのだから、残った砲身の操作など不可能。先ほどとは打って変わって、近接格闘戦はセラの独壇場だった。


「どういう策を使ったのか知りませんが、こちらの魔法を封じたのはミスでしたね。流石に素手の喧嘩(ステゴロ)でフル装備の相手に手加減はできませんから!」


 更にセラはアイアンクローでイザベラを持ち上げると、さっきまで自分がいた方向へ目掛け、その巨体を放り投げる。

 今の一撃、強引に投げ飛ばされたイザベラの両手に既に重装備はない。残る条件の差は魔法の有無のみ。


「ぐぎっ!? この、ウシチチおん、なァ……ッ!?」

「そんな大振り……」


 これだけ打たれてもセラに向かっていく気概は褒めたものだが、あの特異な武装無しでは、遠距離(ロングレンジ)主体であろうイザベラがセラに勝てるわけもない。

 拳を手刀で受け流され、再び腹部に膝を叩き込まれて体をくの字に折り曲げてしまう。血走った瞳で首を振るも、既にセラの姿はなく――。


「あら、貴方は少しお腹のお肉が余っていますよ。それに全体的にだらしないですし……」

「は……ァっ!?」

「ね!」


 セラはイザベラの腹部に手を回す形で背後から組み付き、腕を固定(ロック)

 すると、そのまま弧を描くような軌道でイザベラの身体を持ち上げながら、背後の大地へと叩きつける。


「ほ、ぎゅぅっ!? が、かはっ……!?」

「あら、まだ終わりじゃありませんよ?」

「ひっ!? ご、ひゅ、っ!?」


 イザベラは成すすべなく後頭部から地面に突っ込んだ為、悲鳴も上げられずに悶絶。だがセラは容赦なく、もう一回転。全く同じ動作、軌道でイザベラを地面に叩きつけた。


「ごっ、ひっ……あ、ああ、あ、っ……」


 そんな荒々しい連撃を受けたイザベラは、頭と背中を砕けた地面に付けた体勢で空に向かってでんぐり返しの途中というか、大股開き。あられもない姿を晒しながら痙攣している。


 (ちな)みにセラも両足をしっかりと開いて投げ終わったままの体勢である為、スカートがめくれ上がって、紫レースの下着が丸見えになっていた。

 だが、(よこしま)な感情など湧き上がるわけもない。

 何故なら――。


「まだ意識があるとは……流石にしぶとい……というか、こちらの魔力強化の効果は予想以上に落ちているようですね」

「はひっ、は、はぐ、っ……」

「ですので、もう一回……頑張りましょうか?」

「ひぃ、ぅ、っ!?」


 それは地獄への誘い。


 セラはそのままの体勢で反動をつけると、もう一回転。イザベラの身体を持ち上げ、またも弧を描くように綺麗な軌道で背後に叩きつけた。

 今回はしっかりと反動をつけた上、叩きつける寸前に手を放して投げた――というか、勢いを殺さなかった分、威力が増していたんだろう。イザベラが叩き落された地面は砕け散っている。


「……ゥ、ッ!?」

「あら、人に尻が青いだのと説教をして下さった割に、ご自身は随分と……」


 声にならない悲鳴を背に、セラは既に体を起こしていた。

 彼女の視線の先にあるのは、先ほどまでと同様に空へ向かって大股開きをしているイザベラの姿。


 ただ彼女の瞳はグルンと裏返っており、口元からはだらしなく舌が垂れているばかりか白い泡まで吹いている。それも剥き出しになった白い下着は色が変――いや、何も言うまい。

 とにかく、これで決着。


 そしてもう一人の王が戦う戦場では、これまでベールに包まれていた魔眼の力が猛威を振るっていた。

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